日々の記録

アニメと読書の感想をメインにしたブログです。 ☆ゆるゆるっと更新中です☆


キマイラ12 曼陀羅変 (朝日ノベルズ)夢枕獏さんのキマイラ・シリーズ第12巻、「キマイラ 12 曼陀羅変」を読み終えました。

パワーダウンが著しいキマイラ・シリーズですが、やはり新作が出ると気になるので読んでしまいます。(^^;

物語は、九十九三蔵と久鬼麗一が西城学園に入学したばかりの頃のお話です。この頃、既に久鬼麗一は自分の本当の父が玄造ではないこと、自分の母が心を病んで鎌倉で療養生活をしていること、後の大鳳吼となる弟がいることなどを知っていました。凄まじい美貌の持ち主でクールだけれど、唯一心を開いてみせるのは九十九三蔵だけ。でも、大鳳と初めて出会った時のような凄みはまだ感じられません。

この巻で2人以外にスポットが当たったのが、やがて空手部の主将になる阿久津でした。後の阿久津は、腹の据わった人物という印象ですが、この時は体は大きいけれど気の弱い少年で、中学時代には同級生から嫌がらせを受けたりもしていました。そんな阿久津が、西城学園に入学して空手部に入部したことで変わっていきます。

そんな中、西城学園には「もののかい」と呼ばれる謎の組織があるらしいことがわかってきます。その組織の思惑によって、柔道部や剣道部、相撲部は廃部となり、残ったのは空手部だけです。そんな空手部を支配するのが、3年で主将の黒堂、青柴とマネージャー的な役割の赤城と黄奈志、やがて阿久津が慕うようになる2年の白井と、五行思想を思わせるような登場人物たち。

久鬼麗一と九十九三蔵は、そんな空手部とは無関係の存在でした。ところが、夏休みに2人が箱根にある久鬼の別荘を訪れたことが原因で、同じく箱根で合宿を行っていた空手部の問題に関わることになってしまいました。

空手部の合宿は、普通では考えられない異常なものでした。単に練習が厳しいのではなく、わざとメンバーの中から脱落者を出して、"狩り"と称してそのメンバーを他の者が捕まえるのです。捕まった者がその後どうなったのか、阿久津たちには知らされません。そして、毎日この狩りが繰り返されるのです。

中学時代に阿久津をいじめていた竹村という少年は、粗暴な性格から最初は狩りを楽しむ側にまわります。しかし、状況のあまりの異常さに、阿久津を仲間に引き込んで、黒堂たちから空手部の支配権を奪い取ろうと目論みます。

しかし黒堂は、そんな竹村の目論見を遙かに超えた恐るべき存在でした。逃げ出した竹村は、久鬼の別荘の存在を知ってやって来ます。また、空手部の異常な状況を知った九十九は独自に合宿先を調べようとします。

そして自分の強さに自信を持ち始めた阿久津は、真相を知るために行動を開始しました。しかし、事態は阿久津の想像を超えたものでした。事件の背後にいるのは、どうやら吸血鬼の一団のようです。真相に触れた阿久津は、彼らの仲間に加えられそうになりますが、駆けつけた白井に救われました。

しかし、逃げようとする彼ら2人の前には、黒堂が立ちふさがります。白井が黒堂に痛めつけられる中、黄奈志に招かれた久鬼と竹村、安室由魅が合宿所に到着します。そして九十九もまた、そこに姿を現しました。九十九は黒堂と戦う気満々ですが、なんとその激闘は12巻では描かれませんでした。(;_;)

というわけで、今回はどこまで物語が進むのかと思いきや、いきなり時間をさかのぼって、久鬼麗一と九十九三蔵の過去が描かれました。2人の過去はそれなりに興味はありますが、外伝的な内容だったことにがっかりしました。
現在も継続的に作品は書き続けられているようですが、シリーズの迷走ぶりに悲しくなりました。
キマイラ11 明王変 (朝日ノベルズ)夢枕獏さんのキマイラ・シリーズ第11巻、「キマイラ 11 明王変」を読み終えました。

織部深雪を助けようとした菊池は、ボックとの戦いに敗れて、彼もまた謎の組織に囚われの身となりました。今回の事件の背後には、雪蓮族の遺跡から発見された人が人ならざる者に変わる秘密の一端を知った中国、そしてそれを軍事利用しようと目論むアメリカも動いていたのでした。

そんな事情はもちろん知らない菊池の前に、謎の青年が現れました。彼も大鳳と同じくキマイラ化する力を持っているようです。そんな相手に菊池がどう対抗するのか、そして深雪はどうなるのか。それが気になっていたのに、物語は唐突に周の時代の中国へと飛びました。

そこに赤須子と呼ばれる不思議な男がいました。彼は酒楼で昼間から酒ばかり飲んでいるような人間ですが、人のなくした物を見つけるアドバイスをしたり、病気を治したり、災いを予知する力を持っていたのでした。しかし、赤須子の目の前で貧しさのあまり食べ物を盗んだ親娘が痛めつけられた時、赤須子は豹変しました。なんと赤須子もまた、キマイラ化する人間だったのでした。

そんな赤須子と、唯一親しく話をしていたのは、李耳という官吏でした。この李耳こそが、古代中国の哲学者・老子だったのでした。李耳は、赤須子のことを以前から知っていました。そして、赤須子の家族に起きた悲劇を知っていたのでした。そして李耳と赤須子は対決することになりますが、なんと李耳は自分の意志で背中に翼をはやすことができる超人でした。

さらに物語は、古代のインドへと飛びます。そこでは、仏陀になる以前のシッダールタが苦行の日々を送っていました。そんなある日シッダールタは、友人のセキから不思議な修行者の話を聞きました。その男は、修行を通じて自らの意思でキマイラ化する力を得ると共に、それを制御するソーマのチャクラを覚醒させる方法にもたどり着いていたのでした。

ここまでの話は、雲斎が亜室健之から聞いた話でした。今回はここまでの展開でしたが、いよいよキマイラの核心に迫ってきた感じです。とはいえ、ようやく西域での話が終わり、現代の物語が動き始めたところだったので、また昔話が始まるのかと多少うんざりしました。存在や真理についての哲学的なやりとりは面白かったですけど。

そして何より納得できなかったのは、雲斎が九十九に今回の件からは手を引けと話したことです。雲斎の優しさから出た言葉だとはわかりますが、ここまで事件に深入りしておいて、そんなことできるはずがないだろうと思いました。

やはりこの物語は、30年以上にもわたって書き続けられるのではなく、一気に書き上げるべき作品だったと思います。著者が他の作品に浮気している間に、せっかくの物語が腐ってしまったような気がします。それが本当に残念です。
秘伝「書く」技術 (知のトレッキング叢書)夢枕獏さんの『秘伝「書く」技術』を読み終えました。

この本は、作家の夢枕獏さんが自らの創作方法について語ったものです。元々はカルチャーセンターの創作講座で語られたものを、本として再構成したもののようです。

今はなき朝日ソノラマ文庫でキマイラ・シリーズを読んで以来、獏さんの小説のファンなので、どんな風に獏さんが物語を作り出しているのか興味深く読みました。一時期はものすごい量の作品を短期間に発表されていましたし、勢いにまかせて執筆されているのかと思ったら^^;、歴史ものでは主人公の年表や日表を作成されたり、作品の中でどこからを嘘にするかをしっかり決めていたり、プロの作家さんとはこういうものなんだな〜と感心しました。

本の中では、獏さんの過去も少し語られていましたが、この人は生まれながらに作家になるべく運命づけられていたんだなあと思いました。本が売れてベストセラー作家になられましたが、もし本が売れてなかったとしてもアルバイトをしながら作品を書き続けていたと語られている箇所には、利害を超えて書かずにはいられない作家の本質と覚悟を見た気がしました。

また、作品のあとがきなどでも時折書かれていますが、自分が死ぬまでにどれだけの作品を生み出すことができるかを見据えながら創作を続けているのも凄いと思いました。

それから、最近の作品に以前のような勢いがなくなったことも、獏さん本人が自覚されていました。その上で、若い頃には持っていなかった技で新たな作品を生み出されているようですが、昔からのファンとしてはやはり若い頃のような無鉄砲さが感じられる作品がまた読んでみたいです。
崑崙(くろん)の王〈下〉龍の咆哮 (徳間文庫)夢枕獏さんの「崑崙の王(下) 龍の咆哮」を読み終えました。

久我沼の家の仕事をクビになった乱蔵は、その帰り道に1人の女性と出会いました。その女子大生・露木圭子は、大学の卒論のために安土城について調べていました。そして彼女は、昔イエズス会の人間が織田信長へ黒人を献上したという話を知りました。そのテーマに取り憑かれた圭子は、その謎を解明するために黒伏を調査しようとしていたのでした。

圭子と出会ったことで、乱蔵は寒月翁の家系について知りました。そして、かって久我沼が黒伏ダムを建設するために、その地に住んでいた黒伏の人間を人柱にしたことを知ったのでした。その時から、寒月翁は久我沼と紅丸に復讐する機会をうかがっていたのでした。そして同じく、寒月翁と行動を共にすることになった龍王院弘も、黒伏の秘密を知ったのでした。

そんな中、黒伏ダムによってできた湖を調査していた圭子が、それを久我沼の関係者に知られて拉致されてしまいました。事前に圭子から連絡を受けていた乱蔵は、圭子の身に何かが起きたことを知ったのでした。そして乱蔵は、圭子の救出へと向かいます。

一方、紅丸に捕らわれた多代は、紅丸の手によって獣へと変貌させられていました。その力を使って、紅丸は多代に寒月翁たちを始末させようとしたのでした。こうして紅丸に率いられた男たちと、寒月翁との戦いが始まりました。そんな中、孫の茂を寒月翁から託された龍王院弘は、いつもの彼らしくないことに、茂を守るために戦うことになったのでした。

物語のクライマックスは、茂を人質にして逃げた紅丸と、乱蔵に龍王院弘、そして瀕死の寒月翁との戦いになりました。中でも一番気になるのは、龍王院弘と紅丸との戦いです。紅丸は以前に龍王院弘が敗れたボックと同じ、鬼勁という技を使うことができます。普通の発勁は相手に触れなければ発動しませんが、この鬼勁は相手に触れずに、しかもあらゆる方向から気を相手にぶつけてダメージを与えることができるのです。一度は敗れた技に、どう龍王院弘が立ち向かうのかが見所でした。

下巻では、露木圭子という人物が加わったことで、これまでの謎が一気に明かされました。ただ残念だったのは、黒伏を巡る謎が物語の中心となってしまい、龍王院弘と紅丸の戦いが意外とあっさり終わってしまったことです。数々の敗北を重ねて、かって持っていた誇りを失ってしまった龍王院弘が、どう立ち直るかを楽しみにしていたので、もう少し彼の活躍が見たかったです。
崑崙の王〈上〉龍の紋章 (徳間文庫)夢枕獏さんの闇狩り師シリーズ「崑崙の王(上) 龍の紋章」を読み終えました。久しぶりの闇狩り師シリーズですが、最近読んだ「キマイラ10 鬼骨変」に龍王院弘と九十九乱蔵との出会いに言及している箇所があったので、気になって読み返してみることにしました。

久我沼の家は、何者かに脅かされていました。その者の呪術の影響で、当主である久我沼羊太郎が犬のようになってしまったのです。それを払うために、何人かの拝み師が屋敷に招かれましたが、犬憑きを完全に払うことはできませんでした。そこで乱蔵が屋敷に呼ばれたのでした。

その途中で、乱蔵は龍王院弘と出会いました。その時点では、龍王院は乱蔵が九十九三蔵の兄であることに気づきませんでした。しかし、不思議な運命の巡り合わせで、龍王院もまた事件と関わることになったのでした。龍王院は久我沼家に呪詛を仕掛けている寒月翁と呼ばれる老人と出会ったのです。そこで龍王院は、犬のような様子の少年と出会ったのでした。

そして乱蔵が到着した時、屋敷で異変が起きました。羊太郎が暴れだし、孫を殺したばかりか、息子の嫁と交わりました。乱蔵のおかげで、その騒動はおさまりましたが、事件はまだ何も解決していません。乱蔵は息子の佐一郎から詳しい事情を聞き出そうとします。しかし、その前に贄師の紅丸が到着しました。すると佐一郎は、それまでと態度を変えるのでした。

この巻では、とりあえず主要な登場人物が顔をそろえただけでした。小さな戦いがありましたが、本格的な戦いはまだ始まっていません。事件の背後には、かなり陰惨な事情があるようです。下巻では、どう物語が動くのかが楽しみです。

先日読んだキマイラでは、著者のパワーダウンを感じましたが、こうして昔の作品を読んでみると、よりそれを感じます。昔の作品の方が、荒々しさと美しさが絶妙なバランスで共存していると思いました。
キマイラ10 鬼骨変 (朝日ノベルズ)夢枕獏さんのキマイラ・シリーズ、「キマイラ10 鬼骨変」を読み終えました。

長い過去話が終わり、この巻からまた現代の物語が動き始めました。とはいえ、作品の印象がそれまでとは違っていました。基本的にこの作品は、昭和の時代が舞台の物語だと思っていました。なので唐突に登場した携帯電話に、とても違和感がありました。同じことが「ガラスの仮面」でもありましたが、いくら連載が長期化したとはいえ、作品内の時間経過があるわけですから、それを無視した物語構成はやめて欲しいです。

いきなり文句から入ってしまいましたが、物語本編はそれなりに面白かったです。キマイラ化してしまった麗一を捕獲するために、玄造や九十九たちは山の中へとやって来ました。そこで九十九は、変わり果てた姿の麗一と再会することになるのでした。結局、麗一は玄造に捕まることなく、彼の実の父である巫炎と共にどこかに姿を消したのでした。

それから数ヶ月が経過しました。九十九は悩みの中にいました。そんな彼の前に、完全に復活した龍王院弘が現れました。九十九の前に現れた龍王院は、以前よりもすごみを増していました。以前、龍王院は鬼勁を使う謎の外国人ボックに敗れましたが、その技の秘密にたどり着いていました。普通、発勁は直線的なものらしいのですが、ボックはそれを曲げて使うことができるのでした。そして技の秘密を知った龍王院もまた、その技を会得していたのでした。

そして、今回は珍しく気持ち悪さではこの作品でナンバーワンかもしれない菊池の過去が語られました。ちびで容姿にも恵まれず、頭もよくなかった彼は、幼い頃から周囲から浮いた存在でした。これまでずっと、菊池は麗一に嫉妬してきましたが、キマイラ化した麗一を見てその考えは間違っていたのではないかと思い始めていました。

そんな菊池の回想が終わったとたんに、彼は事件に巻き込まれました。ボックの一味が、大鳳の彼女である織部深雪を誘拐しようとしているところに遭遇してしまったのです。深雪に対して何の関係もない菊池でしたが、女を守るために戦うという滅多にないチャンスを与えられて、ボックと再び戦うことにしたのでした。典善に鍛えられて、えげつない戦い方を仕込まれ、さらに憎悪を利用してチャクラを回すことまでできるようになった菊池でしたが、やはりボックにはかないませんでした。ボックの一味は、深雪を使って何を企んでいるのでしょうか!?

そして、龍王院弘もまたボックが動いていることを偶然知ることになりました。ボックに一度は敗れている龍王院は、再びボックと対決することになるのでしょうか。そして、最後の最後で円空山に真壁雲斎が帰ってきました。雲斎の姿を目にして、九十九は思わず泣き出してしまうのでした。

ということで、本当に久しぶりに雲斎が登場しました。こうなると、そろそろ大鳳の顔も見たいですね。
全体を読み終えた感想は、やっぱり昔と比べるとパワーダウンしているなあと思いました。それでも、下手な小説よりは十分面白いのですが、全盛期のキマイラのパワーを考えると、やっぱり物足りないものを感じてしまいます。
そして、前巻のあとがきを読んだ時にも気になったのですが、昔のあとがきには作者自身がこの物語は面白いと断言していました。また、そう作者自身が書けるほど面白いものを書いて欲しいと思いました。
キマイラ9 玄象変 (ソノラマノベルス)4年前に買ったまま積読状態だった^^;、「キマイラ9 玄象変」をようやく読み終えました。先日、この続きの「鬼骨変」が発売されたことを知ったのですが、そのおかげで「玄象変」を読んでないことを思い出しました。

このお話の前の物語は、ハードカバー版として発売された「キマイラ」シリーズで読み直して以来です。その時には、これからはキマイラ・シリーズはハードカバーが先行して発売されると言っていたのに、実際には出版先も変わり、ソフトカバーでの刊行となりました。

そして個人的に一番がっかりしたのが、それまでイラストを描かれていた天野喜孝さんから、寺田克也さんにイラストが変わっていたことです。この作品の魅力の1つは、恐ろしさの中にある美しさを描き出した天野さんのイラストにあると思っていましたので、この変更は本当に悔しいです。

そんなこともあって、あまり乗り気がせず読み始めることができませんでした。この巻では、それまで続いてきた西域での物語がようやく一区切りがつきました。そして、なぜ久鬼玄造がキマイラに執着するのかも明らかになりました。それから、今まで謎の存在だった狂仏の秘密も少し明らかになりました。彼らはキマイラ化した者と、特殊な高音域を使って話をすることができるのでした。

今回のメインは、馬垣勘九郎を殺した金髪の男と、馬垣勘九郎の息子である勘十郎との戦いでした。勘九郎と勘十郎の親子関係も、かなり壮絶なものでした。幼い頃から勘十郎は、勘九郎から人殺しの技を教えられて育ちました。しかし、勘十郎が強くなるにつれ、父である勘九郎に殺されるという思いが強くなりました。そこで勘十郎は、勘九郎の前から消えて密かに修行を積んでいたのでした。

そして勘九郎を倒す自信をつけた勘十郎は、既に勘九郎が殺されたことを知るのでした。その相手と、勘十郎は戦うことになります。しかし、それは敵討ちなどではなく、純粋に勘十郎自身が強い者と戦いたいという気持ちを抑えきれなくなったからでした。そして勘十郎と、その場にいた玄造は、人が人でないものに変貌するキマイラを目撃することになったのでした。

こうして西域の話は終わり、物語は再び現代に戻りました。玄造の元に、南アルプスで牛を襲っているのが麗一らしいという情報が入りました。麗一を捕獲するために、玄造たちは南アルプスへと向かいました。しかし、そこにはボックや三蔵に敗れた龍王院弘の姿がありました。龍王院は、そこで狂仏と出会いました。そんな2人の前に、キマイラ化した麗一が現れたのです。龍王院は麗一に喰らわれそうになりましたが、ギリギリのところで、これまでに習い覚えた技が彼を救いました。そして狂仏がいることを知った麗一は、その場から立ち去ったのでした。

本当に久々のキマイラでしたが、以前と比べるとちょっとパワーが落ちたかなと感じました。また、時折登場人物の名前が間違っているのも気になりました。(例:P.138 「わたしは、勘十郎さんと会って話をした・・・」は、勘十郎は殺された父親のことを語っていますので、会ったのは勘十郎ではなく勘九郎ですね)
登場人物が多いので、校正する人も混乱しているのかもしれませんが、もう少ししっかりチェックして欲しいと思いました。
獅子の門 鬼神編 (カッパ・ノベルス)夢枕獏さんの「獅子の門・鬼神編」を読み終えました。

以前に読んだのがはるか前なので、これまでの話をあまり覚えていませんでしたが、この巻でようやくシリーズが完結しました。キマイラとか飢狼伝とか、夢枕さんは宙ぶらりんになっている作品も多いので、この作品もそうなるのかと思ったら、意外にも完結してしまいました。

お話としては、前半はそれまで続いていた総合格闘技のトーナメントの様子が描かれました。投げることを極めた柔道王・岩神京太が魅力的でしたが、けっこうグロいシーンもあって今ひとつな感じでした。
後半では、ついに羽柴彦六と久我重明が対決することになりました。そして、そんな2人の戦いを物語の前半を支えた若手キャラたちが見守ります。戦いの結末は、意外とあっけない感じでした。もう少し2人の対決を読んでいたかった気がします。

というわけで、久しぶりの夢枕作品でした。一気に読まされましたが、長年続けてきたシリーズの結末としては、少し物足りない感じでした。
獅子の門 人狼編 (カッパ・ノベルス)夢枕獏さんの「獅子の門 人狼編」を読み終えました。

シリーズ7作目となる今回ですが、前巻の刊行から時間がたっていたので、物語の展開や登場人物をすっかり忘れていました。(^^;
それでも、この名前は見覚えがあるなあくらいで読み進んでいったら、だいぶ登場人物を思い出すことができました。

今回、物語を動かしてゆくのは鹿久間源でした。彼はトーナメントの出場選手がケガをして出場できなくなった時、その代わりに出場する選手として登録されています。しかし、彼はその状況に満足していませんでした。そして、最初から本戦に出場するために、なんと本戦出場選手の元を訪れて、その1人をつぶしてしまおうとしていたのでした。

途中で投げ出すことなく、最後まで読み終えたのでつまらないことはないと思います。ただ、これまでの獅子の門、これまでの夢枕獏さんの格闘小説と比べると、何となく物足りないものを感じた作品でもありました。一応予定では次巻で完結の予定らしいですが、次はいよいよ羽柴彦六と久我重明の戦いを見ることができるのでしょうか!?
東天の獅子 第4巻 天の巻・嘉納流柔術 (4)「東天の獅子 天の巻・嘉納流柔術」第4巻を読み終えました。天の巻は、この第4巻で一応の完結となりました。

この巻では、沖縄に渡った武田惣角の過去からお話が始まりました。金城朝典と出会って、"手"を知った惣角は、その奥義を求めて沖縄へと渡りました。そこで新垣世璋から那覇手を学んでいた惣角は、手の達人、松村宗棍と出会いました。そこで宗棍に負けたと知った惣角は、それをきっかけにこれまで以上の武術の境地に到達したのでした。

しかし、沖縄を出る前に松村宗棍に御式内を見せたことがきっかけで、島袋安徳の恨みを買ってしまいました。先日の警視庁武術試合で、保科四郎が御式内を使ったことから、安徳は梟となって講道館の門弟を襲っていたのでした。

そして、惣角を追ってやって来た安徳と四郎が対決することになりました。四郎はその戦いに勝利するものの、それはさらに新たな挑戦者を呼び寄せることになりました。警視庁武術試合に、東恩納寛量が出場することになったのです。そして四郎は、武術試合において寛量と激闘を演じることになるのでした。

四郎以外では、良移心頭流の中村半助と竹内三統流の佐村正明の戦いにも、ついに決着がつきました。以前の戦いでは、半助が佐村に諭されてギブアップして戦いを収めましたが、本当の決着はまだついていません。そんな2人が、ついに本気で激突する時がやって来たのです。
その描写は、なんだか柔道の試合というよりは、プロレスの試合のようでもありましたが、その戦いでようやく半助は長年の思いを遂げて、ついに佐村に勝利したのでした。

惣角と会った後、四郎はなぜ戦うのかについに思い悩むようになりました。それがやがては、四郎を講道館からの出奔という行動へと駆り立てるのでした。
そして講道館から始まった物語は、後に現れる前田光世へと引き継がれてゆきます。その物語は、地の巻として発表されることになりそうですが、いつそれを読むことができるのか楽しみです。
東天の獅子〈第3巻〉天の巻・嘉納流柔術第3巻では、いよいよ警視庁武術試合が開催されました。

講道館からは、山下義韶、宗像逸郎、横山作次郎、保科四郎が代表に選ばれて、それぞれに激しい戦いを繰り広げてくれました。「餓狼伝」などの格闘小説で定評があるだけに、4人の戦いの場面には迫力がありました。柔術の試合というよりは、ちょっとプロレスが入っているような気がしなくもありませんが^^;、読み応えがありました。

そして後半では、講道館の者たちが謎の男に狙われることになります。その男は、自らを梟と名乗りました。どうやら沖縄からやって来た唐手の使い手のようです。梟は講道館に恨みがあるというよりは、保科四郎が武術試合の中で使った御式内を憎んでいるようです。

なぜ御式内が恨まれることになったのか、その答えを求めて保科四郎は西郷頼母、そして武田惣角の元へと訪れます。そして惣角が沖縄へと渡り唐手を学んだ時に、何かあったらしいことを知るのでした。
沖縄でいったい何があったのか!?、それが第4巻で解き明かされるのが楽しみです。
東天の獅子〈第2巻〉天の巻・嘉納流柔術第2巻では、講道館が警視総監だった三島通康の目にとまり、警視庁の武術試合に出場することになりました。

この巻では、その試合で講道館の対戦相手になる久留米の良移心頭流の中村半助、関口新々流の仲段蔵、熊本の竹内三統流の佐村正明などの九州勢。
そして揚心流戸塚派の大竹森吉、照島太郎、好地円太郎などの千葉勢の様子が描かれました。

次々に出てくる相手が、化け物じみた強さを持った人間凶器のような相手ばかりなのですが、そんな猛者を相手に、講道館がどんな"柔道"を見せてくれるのかが楽しみです。

さらに講道館の柔道と古流柔術との対戦が刻々と迫る中、物語の背後で動き回っている武田惣角の動きも気になります。こちらは何か特定の流派に属するわけではなく、全国を歩き回って武者修行をしているようですが、ルールのない素手での殺し合いになったら惣角が最強なのではないかと思わせる無気味さがあります。

武術試合を前に、保科四郎は自分の武術の最初の師匠である西郷頼母の元を訪れます。会津に伝わる御留流である御式内を試合で使うことの許可を求めたのです。この御式内は、大東流柔術や合気道といった形で現在に伝わっているようですが、四郎はそれを講道館の柔道にも取り入れようとしたのでしょうか。

ともあれ、この巻で試合に向けての下地作りは完了しました。それぞれの武術に賭ける思い、そして対戦相手に対する遺恨が、試合の中でどんな形で発揮されるのか続きが楽しみです。
東天の獅子〈第1巻〉天の巻・嘉納流柔術以前から著者の本のあとがきやエッセイなどで時折題名を見かけた「東天の獅子」が、とうとう単行本になって刊行されました。

今回刊行されたのは、前田光世を主人公とした物語ではなく、前田光世が登場する前の時代、嘉納治五郎が講道館を興した時代の物語です。この時代の格闘家を取り上げた物語としては、今野敏さんの「義珍の拳」や「山嵐」、「惣角流浪」などを今までに読んできましたが、そこで見かけた名前が次々と作品の中に登場してきてうれしくなってしまいました。

物語は、鬼の木村と呼ばれた木村政彦が、プロレスの興業でブラジルを訪れたところから始まります。そこで木村は、前田光世から柔術を習ったという男から対戦を申し込まれるのでした。
そして、一気に時代を遡り、その前田光世が教えを受けた講道館の始祖である嘉納治五郎の物語が始まります。そして嘉納の生い立ち、そして講道館四天王と呼ばれた4人の生い立ちが語られて行くことになります。

この1巻では、創生期の講道館が描かれているのですが、文武に秀でた天才・嘉納治五郎、姿三四郎のモデルと言われる西郷四郎、四天王の一人・横山作次郎などなど、次々に魅力的な登場人物が現れて飽きさせません。
もちろん、他の著者の格闘小説に見られるような、肉と肉が軋み合い、戦う者同士の息づかいさえ感じられるような濃厚な描写も健在です。ハードカバーで400ページを越える本なのですが、あっという間に読み終えてしまいました。

「餓狼伝」や「キマイラ」の続きがなかなか刊行されなくてヤキモキしていましたが、この本が発売されたことで久々に夢枕節の面白さを味わうことができました。全4巻のうち、まだ3巻までしか発売されていないようですが、続きを読むのが楽しみになりました。
キマイラ青龍変買っただけで積読してあったキマイラの最新刊をようやく読み終えました。

このお話は、宇名月典善と龍王院弘の出会いから始まる番外編でした。そして、典善の宿命のライバルともいうべき、馬垣勘十郎との激闘が描かれていました。内容的には、キマイラというより、同じ獏さんの「飢狼伝」や「獅子の門」といった格闘小説のノリでした。

宇名月典善と馬垣勘十郎が、拳銃の弾をはじき返すことができるという設定が面白かったです。銃口の角度からどこに弾が来るかを予測して、そこに弾を貫通しないものを置けば当たらないという理屈はわかりますが、ここまでやるとちょっとやりすぎな気もしました。(^^;

それなりに楽しくて一気に読み終えましたが、番外編もいいけれど本編の続きが読みたいなあという気持ちが残りました。書き続けられてはいるようなので、単行本として発売される日が楽しみです。(^^)
風果つる街前から読みたかった作品でしたが、偶然に図書館で発見してようやく読むことが出来ました。

この作品の主人公は、真剣師と呼ばれる賭け将棋で生きているおじいさんです。他の獏さんの作品のように、超人的な能力や体力に恵まれているわけではなく、それしか生きてゆく道がなかったから真剣師になってしまったというおじいさんです。

ちょっと暗めなお話ではあるのですが、物語の底にある哀しさがとても味わいのある作品だと思いました。
特にどこかで野垂れ死んでもいいという覚悟を主人公の加倉文吉がしているのが、壮絶な生き方をしているなあと思いました。その覚悟が、とても潔いというか格好いいと思いました。

少し前に、プロ編入試験を経てプロ棋士となられた瀬川晶司さんが、ニュースで大きく取り上げられていましたが、もしも文吉やこの小説の中に登場する様々な事情でプロになれなかった棋士たちがこのニュースを知ったら、どんな反応をするのかなあと気になりました。

将棋の世界も年齢制限とか、いろいろな伝統という名の縛りがあるみたいですが、伝統にとらわれすぎずに、真に強い者が名人になれるというシンプルで説得力のある戦いで勝者を決めたらいいのになあと思います。
キマイラ〈1〉幻獣少年・朧変先日シナンを読んだのがきっかけになって、夢枕獏さんの小説が読みたいスイッチが入ってしまったようです。(^^;
これまで買い置きしてあって手をつけなかった愛蔵版「キマイラ」に、とうとう手を出してしまいました。

文庫版は残念ながら手元にないので、愛蔵版でどこが修正されているのかわからないのですが、はるか昔にこの作品を読んだときの驚きと衝撃は少しも薄れることがありませんでした。

大鳳、九十九、深雪、雲斎、久鬼、由魅、菊池。その他にもいろいろな登場人物が出てきますが、簡潔な文章なのにこれだけ各キャラが立っている小説というのも他にないと思います。昔読んだ時に自分の中にできあがった各キャラのイメージが、今回愛蔵版を読んで見事によみがえってきました。

キマイラと呼ばれる幻獣を己の体の中に潜ませた2人の少年、大鳳吼と久鬼麗一を軸に物語が動き始めます。物語は時にきれいに、時にグロテスクに、時に美しく読んでいる読者を別の世界へと引きずり込んでくれます。このような物語を書き上げる作者の情熱と体力は凄いです。
久しぶりのキマイラは、そういった物語を読むには、読み手にも体力と覚悟がいることを思い出させてくれました。一気読みして体はへろへろなのですが、精神的にはとっても満足。

このキマイラシリーズで気に入っているのが、あとがきです。獏さんの他の作品のあとがきもおもしろいのですが、このシリーズのあとがきにずっと書き続けられている「この本は絶対におもしろい」が大好きです。
書いた本人がこういうことを書けるのも凄いですが、本当におもしろいのがもっと凄いです。いつこの期待を裏切られるかと思い続けながら、シリーズを読み続けてきたのですが、いまだに読み続けているってことは裏切られてないってことですね。
どうか最後まで裏切られませんように。そして、この物語を最後まで読み終えられますように。(^^)
シナン (上)好きな作家はその時々によって変わってゆくものですが、学生時代から少し疎遠になることはあっても必ずまた読むようになる作家が夢枕獏さんです。

思い起こせばキマイラの1巻を読んだことがきっかけでした。文章は素朴でマンガみたいに擬音が使われている不思議な小説でした。決してきらびやかな文章ではありませんが、簡潔で力強さにあふれていました。
「上弦の月を喰べる獅子」も凄かったですが、「神々の山嶺」はさらに凄かったです。そして今回の「シナン」も、さらにそれを上回るおもしろさでした。

「シナン」は、オスマントルコ時代の建築家シナンが、巨大なモスクを作り上げるまでを描いたお話です。シナンを軸にして、スレイマン大帝時代のイスラム教圏対キリスト教圏の戦い、宮廷の陰謀、様々な舞台。
ハードカバー上下2巻という大作でしたが、あまりにおもしろくて一気に読み終えてしまいました。

宮廷建築家となってからのシナンの猛烈な働きぶりには、何年も時間をかけながら次々と作品を書き上げる獏さん自身の姿が重なりました。人の心に残る優れた作品を生み出す人というのは、こういう人達なんだなあと思いました。
そして、この作品を読んだことで、明日もがんばろうという元気をもらった気分です。