日々の記録

アニメと読書の感想をメインにしたブログです。 ☆ゆるゆるっと更新中です☆


聖域の雀―修道士カドフェルシリーズ〈7〉 (光文社文庫)修道士カドフェル・シリーズ第7作、「聖域の雀」を読み終えました。

夜半の祈りの途中、とある若者が町の人々に追われて、教会へと逃げ込んできました。そのリリウィンという若者は、町から町へと渡り歩いている芸人でした。この町でウォルター・オーリファーバーの息子ダニエルの結婚式が行われることを知ったリリウィンは、そこで余興を披露するために結婚披露宴へと呼ばれたのです。

ところが、ウォルターが嫁の持参した貴重品を金箱に納めていた時、何者かがウォルターを襲って貴重品を奪い取ったのです。その犯人として疑われたのが、芸人のリリウィンだったのでした。披露宴でリリウィンはさまざまな芸を披露しました。しかしケチで有名なオーリファーバー家は、リリウィンに約束しただけの金を支払わなかったばかりか、ウォルターの母のジュリアナは、披露宴の途中で水差しが割れたことをリリウィンのせいだと決めつけて、彼を杖で打ちのめしたのです。

そしてリリウィンがオーリファーバー家から去った後、事件は起きました。ウォルターが何者かに襲われたのです。誰かが犯人は、先ほど追い出した芸人に違いないと言い出して、酔った客たちが町中を探してリリウィンを見つけ出しました。何も知らずに襲われたリリウィンは、自分の身を守るために教会へと逃げ込んだのでした。

ウォルターの息子・ダニエルを中心に、町の人々は今にもリリウィンを虐殺しかねない勢いでした。しかしこの時代、罪を犯した者でも、教会に逃げ込めば40日の間は保護を約束されていました。修道院長のラドルファスは、リリウィンが既に教会の保護下にあることを人々に告げました。そして罪を裁くなら、正規の手続き通り、州の執行官に任せるべきだと人々を叱ったのでした。

こうして人々は、不承不承ながら町へと引き上げていったのでした。リリウィンの世話を任せられたカドフェルは、彼にその夜の出来事を尋ねました。そして彼が罪を犯していないと信じたカドフェルは、いつものように事件の真相を知るために動き出すのでした。

前作の「氷のなかの処女」とは異なり、今回の舞台はシュルーズベリ、それも教会とオーリファーバー家をメインに展開しました。カドフェルの調査が進むにつれて、オーリファーバー家が抱えるドロドロの人間関係が明らかになっていきます。
昔も今も、家族や親族にまつわるドロドロは同じなんだなあと思いつつ、読んでいてあまり気分がいいものではありませんでした。

そんな中で、唯一の救いはリリウィンとオーリファーバー家の召使いラニルトの恋物語でしたが、2人の関係の進展が性急すぎたこともあって、こちらもこれまでのシリーズと比べると物足りない感じがしました。
氷のなかの処女―修道士カドフェルシリーズ〈6〉 (光文社文庫)修道士カドフェル・シリーズ第6作、「氷のなかの処女」を読み終えました。

以前からたびたび物語の中で語られてきた、スティーブン王と女帝モードの争い。その争いで、ウスターが攻撃されたことが、今回の物語の始まりとなりました。逃げ惑う人々は、カドフェルのいるシュルーズベリにも逃れてきていました。
そんな中、ウスターの貴族の姉弟が失踪してしまったという情報が伝わってきました。姉弟の保護者である叔父は、2人の行方を捜しています。しかし、彼はスティーブン王ではなく女帝モードを支持していたため、シュルーズベリに入ることは許されませんでした。その代わりに、州長官は2人の捜索の準備を進めていました。

そんな時、ブロムフィールドの修道院からカドフェルに助力の依頼が舞い込みました。何者かに襲われて行き倒れていた修道士を救うために、カドフェルの知識が必要とされたのです。その求めに応じて、カドフェルはブロムフィールドへと赴くことになりました。その途中で、カドフェルは行方不明になっていた姉弟の弟の方、イーヴと出会うことになるのでした。それだけでなく、カドフェルは凍り付いた小川の中に若い女性の死体を発見します。

さらにブロムフィールドのあるラドロー周辺では、近隣の農園を襲撃する無法者たちが現れていました。カドフェルは傷ついたエルヤス修道士にできる限りの治療を施すと、州執行副長官である友人ヒュー・ベリンガーと共に、行方不明の姉の探索、無法者たちの探索、そして氷の中の女性を殺した犯人を捜すことになるのでした。

今回は、カドフェル・シリーズとしては珍しく、推理よりもアクションに重点が置かれた内容でした。でも、勝ち気な貴族の娘アーミーナ、何か大きな悩みを抱えているらしいエルヤス修道士、オリーブ色の肌をした謎の若者など、魅力的な登場人物がいっぱいで、物語としてとても面白かったです。

そしてカドフェルは、今回の出来事と関わったことで、彼自身にまつわるある出会いを経験することになりました。神様と著者の、粋な計らいがたまりません。(^^)
幼き子らよ、我がもとへ〈下〉 (創元推理文庫)今年最初に読み終えたのは、修道女フィデルマ・シリーズ第3作「幼き子らよ、我がもとへ(下)」でした。本当は昨年中に読破したかったのですが、読んでいる途中で年を越してしまいました。(^^;

尊者ダカーン殺害の真相を調査するフィデルマ。しかし、事件は単純な殺人事件ではなく、その背後には政治的な思惑が複雑に絡み合っていました。下巻で驚いたのは、これまでのフィデルマ・シリーズと比べて圧倒的に多数の死者が出ることでした。その中には、まだ幼い子供たちの姿もありました。(;_;)

この巻の最大の見せ場は、ダカーンの死の真相とその背後の関係を大王が招集した法廷で暴いていく場面でした。
これまでの作品でのフィデルマは、弁護士の資格を持ちながらも、探偵的な活躍をしていました。しかし、今回の法廷シーンでは、フィデルマの弁護士としての実力が示されることになりました。

多くの死者が出たり、政治的な駆け引き、王位継承者をめぐる謎など、いろいろと盛りだくさんで、これまでのフィデルマ・シリーズでは、一番読み応えがありました。そして、これまで完璧超人として描かれていたフィデルマが、感情をあらわにして涙を流す場面があったのも印象的でした。この場面のおかげで、今まで近寄りがたい雰囲気だったフィデルマが、ようやく身近に感じられました。
幼き子らよ、我がもとへ〈上〉 (創元推理文庫)ピーター・トレメインの修道女フィデルマ・シリーズ第3作、「幼き子らよ、我がもとへ(上)」を読み終えました。

第1作、第2作では、物語の舞台はアイルランドの外でした。第3作となる本作で、フィデルマは故国であるモラン王国へと帰ってきました。そんなフィデルマは、兄であり王国の次期後継予定者であるコルグーに呼ばれ、キャシェル城へ訪れました。そこでフィデルマは、モラン王国が今大きな問題を抱えていることを知ったのでした。

その発端となったのは、モラン王国の隣国ラーハン王国でした。かってモランは、ラーハンからオスリガ小王国を得ました。しかし、その後もラーハンはオスリガに執着して、オスリガを取り返そうと画策しています。そんな中、ラーハンの偉大な尊者ダカーンが、研究のためモランの修道院を訪れました。ところが、ダカーンは修道院で何者かに殺害されてしまったのです。その死の代償として、ラーハンはオスリガの返還を要求していたのでした。

事情を知ったフィデルマは、コルグーから依頼されて事件が起きた修道院へと向かいます。しかし、その途中でフィデルマは、修道院の近隣の小村で虐殺と破壊が行われていることを知ったのでした。その村から、強い感染力を持った黄色疫病の死者が出たことで、住民は殺されて家々は焼き払われたのでした。フィデルマは、その生き残りである修道女と子供たちを保護したのでした。

修道院に到着したフィデルマは、早速事件の調査に取りかかります。しかし、事件発生から日が経っていることもあり、調査は難しいものとなりました。さらに事件の背後には、モランとラーハン、オスリガを巡る確執も絡んでいるようです。フィデルマはこのもつれた糸をほどき、真実を知ることができるのでしょうか!?

今回の事件では、これまでの事件でよきパートナーを務めたエイダルフの姿がありません。代わりにコルグーが用意した戦士がフィデルマの相棒となりましたが、彼ではエイダルフの代わりにはなれないのでした。普段は完璧超人のようなフィデルマが、そんなエイダルフのことをたびたび思い出すのが微笑ましかったです。
死の蔵書 (ハヤカワ・ミステリ文庫)ジョン・ダニングの「死の蔵書」を読み終えました。この本は、昔読んだことがあったのですが、古本屋で見つけて懐かしくなって思わず購入してしまいました。

この本の舞台となるのは、デンヴァーの古書業界です。そこで警官をしているジェーンウェイは、個人的にも古書を収集している古書マニアです。あまり警官らしくない趣味を持つジェーンウェイは、ある古書の掘り出し屋と呼ばれる男が殺された事件を調査することになりました。ボビーと呼ばれるその掘り出し屋のことは、ジェーンウェイも以前から知っていました。ジェーンウェイは、その死の背後には貴重な古書がからんでいると見ていたのでした。

この事件と平行して、ジェーンウェイには以前から敵がいました。それは天才的な実業家のジャッキー・ニュートンと呼ばれる男でした。彼はその残虐な性格で、多くの人間を傷つけていました。しかし、財力もあるジャッキーは、被害者を脅して黙らせていたため、警察は彼に手を出せずにいたのでした。

ボビーの事件を調査していたジェーンウェイは、偶然ジャッキーに痛めつけられていたバーバラという女性を知りました。彼はバーバラを救おうとしますが、ジャッキーを恐れるバーバラは勇気を出すことができません。そんなバーバラを再びジャッキーが傷つけたことを知った時、ジェーンウェイの警察官としてのたがが外れました。ジャッキーに1対1の対決を挑んだジェーンウェイは、ジャッキーを叩きのめしたのでした。

現職の警官が、たとえ犯罪者とはいえ、個人的に制裁したことは許されることではありません。ジェーンウェイは、自ら警官を辞めました。そして彼が次に選んだ道は、かねてから憧れていた古書の小売店を始めることでした。古書仲間の協力もあって、ジェーンウェイは新たな生活を始めました。しかし、そこにまたボビーとジャッキーの事件が彼にふりかかってきます。

この他にも物語には、謎の古書業者リタ・マッキンリーという女性の存在や、ボビーが手に入れた掘り出し物は何だったのかという謎など、複数の事件が同時進行します。その上、貴重な古書についての蘊蓄もあちこちにちりばめられていて、本好きにはたまらない内容になっています。

基本的な雰囲気は、ハードボイルドな感じなのですが、謎解きの部分も最後まで真相がわからなかったりして、ミステリーとしても面白い作品だと思います。(^^)
サクソンの司教冠 (創元推理文庫)修道女フィデルマ・シリーズ第2作、「サクソンの司教冠」を読み終えました。

第1作の終わりで、エイダルフと共にローマを訪れる任務を与えられたフィデルマは、ローマへとやって来ていました。そこでまたしても、フィデルマたちは殺人事件に巻き込まれるのでした。今回殺害されたのは、カンタベリー大司教に任命されるはずだったウィガード司教です。彼はローマが用意した来賓用の部屋で、何者かに首を絞められて殺害されていたのです。それだけでなく、司教の部屋に置かれていたローマ教皇への貴重な貢ぎ物の一部も消えていました。

そして、犯人らしき修道士も逮捕されていました。その修道士がアイルランド人であったことから、まかり間違えばサクソンとアイルランドの政治問題にも発展しかねません。そこでフィデルマとエイダルフが、ローマのゲラシウス司教から事件の真相を調査するよう依頼されました。こうしてフィデルマとエイダルフは、ウィトビアに続いてローマでも共同で捜査を始めるのでした。

前作と同様、歴史小説的な面白さがありましたが、前作よりは推理色が強まった気がしました。フィデルマは相変わらずプライドの高さが鼻につくところがありますが、エイダルフと一緒だとちょっと柔らかい感じになりますね。あんまりデレはないですが、これもある意味ツンデレなのかも。(^^;

今回は、ローマが舞台ということで、塩野七生さんの「ローマ人の物語」を先に読んでいてよかったなあと思いました。
もっとも、「ローマ人の物語」はなかなか読み進められないので、フィデルマたちの時代までたどり着いていないんですけど。(^^;

捜査の過程で、事件は二転三転しますが、最後に全てのパーツが収まるべきところに収まったのは気持ちよかったです。
そしてラストでのエイダルフとフィデルマの別れの場面は、ちょっといい雰囲気でしたね。この先もシリーズは続いているので、フィデルマとエイダルフはまた顔を合わせることになるのでしょうが、それがいつどんな形で訪れるのかが楽しみです。
死をもちて赦されん (創元推理文庫)ピーター・トレメインの修道女フィデルマ・シリーズ第1作、「死をもちて赦されん」を読み終えました。

この修道女フィデルマ・シリーズ、以前から気になっていたシリーズでしたが、翻訳の刊行が第1作からではなく、第5作からだったので、ちょっと読むのをためらっていました。その後しばらくフィデルマのことは忘れていたのですが、先日本屋に立ち寄った時に、第1作が刊行されていることを知りました。そのおかげで、ようやく読み始めることができました。

物語の舞台となっているのは、7世紀です。主人公の修道女フィデルマは、アイルランドの修道女であると共に、法律にも詳しく、現代の弁護士のような役割を担っています。この第1作では、フィデルマがブリテン島のノーサンブリア王国に赴いて、そのウィトビアという街で開催される教会会議に出席するところから物語が始まります。

この時代、フィデルマたちの世界にはキリスト教が広まっていました。しかし、同じカトリック系でもローマ派の定めた宗規とケルト(アイルランド)派の定めた宗規では様々な部分で違いがありました。そこでノーサンブリア王国で、宗規を統一するための討論会が行われることになりました。この会議に、法律に詳しいフィデルマは同行することになったのでした。

そして、いよいよ会議が始まろうとした時、フィデルマの友人でもあり、ケルト派の有能な弁論者としても知られるエイターン修道院長が殺害される事件が起きました。それは単なる殺人事件では終わらず、ローマ派とケルト派それぞれに対立する派閥の陰謀ではないかという疑念を呼び起こしました。さらに、ノーサンブリア王国の国王オズウィーの王位を巡る争い、そしてブリテン島の政治問題にすら発展しかねない危険をはらんでいました。

そこで有能な弁護士であるフィデルマに、事件の調査が依頼されました。しかし、フィデルマはアイルランド派の人間です。そこでローマ派からも修道士のエイダルフが選ばれて、フィデルマと共に真相を究明することになるのでした。
今回フィデルマとエイダルフの初顔合わせでしたが、この後も2人は一緒にさまざまな事件を解決していくようです。

読み始める前は、もう少し推理寄りの作品なのかと思っていましたが、それよりは歴史小説的な色合いが強い作品でした。同じように修道士が登場するカドフェル・シリーズのような作品かと思っていたので、最初はちょっと戸惑いました。
日本人には馴染みのないカトリックの教義を巡る対立にも少し戸惑いましたが、読み進むうちに気にならなくなりました。

それから、この時代の修道院には、男女別々のものだけではなく、結婚した修道士と修道女が一緒に暮らすことのできる修道院も存在したことには驚きました。
というわけで、推理小説としては、少し物足りない感じがしましたが、歴史小説としてみたらけっこう面白かったです。
シャーロック・ホームズの冒険―新訳シャーロック・ホームズ全集 (光文社文庫)2冊目の長編「四つの署名」を読んでからだいぶ時間が過ぎましたが、ようやく光文社文庫版の新訳「シャーロック・ホームズの冒険」を読み終えました。

「ボヘミアの醜聞」から始まり、「赤毛組合」「唇のねじれた男」「青いガーネット」「まだらの紐」などの短編12作が収録されています。他の翻訳で何度も読み返した内容なので、事件の謎は全てわかっているのですが、それでも何度読み返しても面白い作品ですね。ホームズとワトソンのやりとり、作品を通じて描かれるヴィクトリア朝時代末期の英国の雰囲気がたまりません。

ジェレミー・ブレッドさん主演のテレビドラマにも楽しませてもらいましたが、やはりホームズ作品は活字で読むと想像力を刺激されて楽しいですね。そして新訳ということもあって、やはり翻訳が現代的で読みやすかったです。

この本を読んでいる間に、河出文庫からもホームズ全集が発売されました。こちらは詳細な注釈ときれいな挿絵が魅力的でしたが、注釈が以前ハードカバーで発売されたものより大幅に削除されていることを知って、買うのをやめてしまいました。(^^;
死を呼ぶ婚礼―修道士カドフェルシリーズ〈5〉 (光文社文庫)エリス・ピーターズの修道士カドフェル・シリーズ第5作、「死を呼ぶ婚礼」を読み終えました。

シュルーズベリの教会では、盛大な結婚式が行われようとしていました。ドンヴィルという貴族が、花嫁をめとることになったのです。しかし、その花嫁はドンヴィルとは40歳以上も年の差がある若い娘でした。しかし、その娘・イヴェッタは、伯父夫妻が自分たちの利益のためだけに決めたその婚礼を受け入れようとしていたのでした。

しかし、そんなイヴェッタを慕う若者ジョスリンがいました。ジョスリンのことを、イヴェッタも気に入っていましたが、今のジョスリンはドンヴィルの従者という身分で、なかなかイヴェッタに会うこともできません。
そんな中、ジョスリンはドンヴィルの不興を買って、従者の仕事から追われてしまいました。その上、主人の金や宝石を盗んだ疑いで逮捕されそうになったのです。

なんとか追跡の手をまいたジョスリンでしたが、このままではイヴェッタを不本意な結婚から救うことどころか、自分の命さえ危うい状況です。そんなジョスリンに力を貸してくれたのは、街の外れに作られたハンセン病の患者のための施療院の人々でした。この時代、ハンセン病の患者は治療方法もなく、人々の間で忌み嫌われていました。しかし、その人たちの中でジョスリンは、真の苦しみを知るものの持つ優しさや温かさを知ったのでした。

そして、事件は起きました。なんとイヴェッタの花婿であるドンヴィルが、何者かの手で殺されたのです。結婚式の前夜、ドンヴィルはどこに行ったのか。それを知るために、カドフェルは独自の調査を始めたのでした。
そしてカドフェルは、ドンヴィルには愛人がいたこと。殺害される前夜、彼はその愛人のもとを訪れていたことを知りました。詳しい状況を知るであろう愛人を、カドフェルは探し始めるのでした。そして、ついにカドフェルは、真相への手がかりをつかむのでした。

久しぶりのカドフェル・シリーズでしたが、苦境に陥った善男善女をカドフェルが救うというお約束の展開が心地いいです。誰がドンヴィルを殺したのかという謎解きよりも、今回はジョスリンとイヴェッタの恋の行方にハラハラさせられました。
アクロイド殺し (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)アガサ・クリスティの「アクロイド殺し」を読み終えました。この作品は、その内容がフェアかアンフェアかという論争を引き起こしたことで有名なクリスティの代表作です。

ポワロ作品としては3作目となる作品ですが、実際には後から出版された「ビッグ4」の方が先に執筆されていたらしいです。そのため「ビッグ4」でポワロが引退してカボチャ栽培でもするといっていたことと、内容的につながっています。さらに名前だけ登場するヘイスティングズは、アルゼンチンにいると書かれています。

物語の舞台となったのは、イギリスの片田舎キングズ・アボット村です。そこで村の名士であるロジャー・アクロイドが殺害される事件が発生しました。物語の語り手でもある医師のシェパードは、隣の家に引っ越してきた風変わりな人物が引退した探偵ポワロであると知りました。そしてポワロは、事件の調査に乗り出すのでした。

調査の過程で、アクロイドに関係したあらゆる人が疑わしく思えてきます。みんなそれぞれ、他人には秘密にしていることがあったのです。しかし、ポワロはちょっとした手がかりから、それらの秘密を暴いていきます。そして最終的にアクロイドを殺害した犯人を突き止めるのでした。

他のクリスティの作品では、以前に読んだことがある作品でも、しばらくすればいい感じに犯人やトリックのことを忘れているのですが^^;、この作品はあまりに有名なために何年経ってもトリックや犯人が忘れられず、最初に読んだ時の驚きが感じられないのが残念です。
ビッグ4 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)アガサ・クリスティの「ビッグ4」を読み終えました。この作品は、クリスティの作品の中でも特に評価が低いことで有名です。(^^;

この作品はもともとは短編として発表された作品を、つなぎ合わせて1つの作品にしたものらしいです。そして内容もいつものポワロが登場する推理小説ではなく、なんとポワロとヘイスティングズが活躍するスリラー小説になっていました。

2作目となる「ゴルフ場殺人事件」で結婚したヘイスティングズは、久しぶりにポワロの元を訪れました。そこから2人は、ビッグ4という謎の犯罪組織と対決することになるのでした。ビッグ4の首領は中国人の男です。ナンバー2はアメリカ人の符合で、ナンバー3はフランス人女、ナンバー4は殺し屋です。

いつものゆったりとしたクリスティの作風に慣れていると驚くくらい、この作品はとにかく場面転換が早くてスピーディーです。肝心のビッグ4とポワロの対決は、今となってはコメディのように見えます。ところどころに謎解きらしきものはありますが、それもあっという間に解決してしまいます。

というわけで、せっかく読んだ作品でしたが、世間の評価通りの駄作だと思いました。でも、クリスティファンとしては、こんな作品もクリスティは書いていたのだと知るために読んでみる価値はあるかもしれません。(^^;
ゴルフ場殺人事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)アガサ・クリスティの「ゴルフ場殺人事件」を読み終えました。

南米で財をなして、フランスの別荘に滞在するルノー氏からポワロは手紙を受け取りました。そこには、自分は何者かに狙われているから助けて欲しいと書かれていました。ヘイスティングズと共にポワロがルノーの元を訪れると、ルノー氏は既に何者かに殺害されていたのでした。

そのルノー氏が殺されていた場所がゴルフ場の造成地だったこと以外には、タイトルにもなっているゴルフ場には意味がありません。(^^;
ポワロは早速事件の捜査に乗り出しますが、今回はフランスの刑事ジローがポワロのライバルとなります。ジローもかなりのやり手の刑事なのですが、捜査方法はポワロとは違い、まるでホームズのようにごくささいな証拠品を猟犬のように丹念に集めます。それに対して、あくまでポワロは人間の心理面を重視して捜査を進めるのでした。

事件の犯人と思われる人間が二転三転する上に、例によってヘイスティングズがほれっぽいところを発揮したりと、事件本編以外にもいろいろと読みどころがあって楽しい作品でした。
ゼロ時間へ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)アガサ・クリスティの「ゼロ時間へ」を読み終えました。

ある海辺の館で老婦人が殺害される事件が起きます。しかし、物語のメインはこの殺人事件ではありません。事件が起きるずっと前から、全ては事件に向かって進んでいるのです。そのため、物語のスタートする時間も、事件発生のかなり前からになります。クリスティの巧みな語り口で、さまざまな登場人物の視点から物語が語られていきます。いっけん無関係かと思われるエピソードもあるのですが、それが最後の最後で見事に組み合わさるのが爽快でした!

このお話で探偵役を務めるのは、バトル警視です。バトルはかってはポワロと一緒に捜査を行ったこともあり、捜査の途中で彼がポワロのことを思い出すのが微笑ましかったです。(そして、その出来事もきちんと意味があります)

物語の結末となるロマンスは、ちょっと安っぽいような気もしましたが、それはこの作品の面白さを損なうほどではありません。クリスティの作品といえば、ポワロやマープルのものが有名ですが、それ以外にもこのような優れた作品を書いているとは本当に驚きです。
スタイルズ荘の怪事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)アガサ・クリスティの「スタイルズ荘の怪事件」を読み終えました。この作品は、クリスティーのデビュー作でもあり、ポワロが初登場する記念すべき作品でもあります。

傷痍軍人のヘイスティングズは、友人に招かれてスタイルズ荘という屋敷を訪れることになりました。ところが、彼が到着したとたんに、屋敷の女主人であるエミリー・イングルソープが何者かに毒殺されてしまったのです。そんな時ヘイスティングズは、かっての友人でベルギーから亡命してきたポワロと出会いました。ポワロが警察時代に優れた捜査能力を発揮したことを知っていたヘイスティングズは、ポワロと共に事件の調査に乗り出すのでした。

真っ先に疑われたのは、夫人の夫であるアルフレッド・イングルソープでした。しかし調査を続けるうちに、ポワロは彼のアリバイを知ることとなったのでした。そして別の人物が容疑者であるという証拠が次々と見つかります。夫人を殺害したのは誰なのか、ポワロは調査を続けますが、あと1つ重要な手がかりが見つかりません。果たしてポワロは、真犯人を見つけ出すことができるのでしょうか!?

デビュー第1作ということもあり、ヘイスティングズの背後にワトソン博士の面影がちらちらするような気がしました。でも、会話を中心に登場人物の個性を描きあげていく、クリスティーの小説の面白さはこの作品から既に存在しています。途中、警察が容疑者を逮捕する場面が唐突に思えましたが、その他は違和感なく楽しむことができました。
ホロー荘の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)アガサ・クリスティの「ホロー荘の殺人」を読み終えました。この作品は前にも読んだことがあり、感想もブログに書きました。その時には面白さがわからなかったのですが、今回は読んでいて引き込まれるものがありました。

物語の主要な舞台となるのは、アンカテル夫妻の住んでいるホロー荘です。そこにアンカテル夫人に招かれて、親族が集まってきます。この描写がけっこう長くて、以前に読んだ時はここが退屈だと思ったのですが、今回はそれがそれぞれに事情を抱えた人が描かれていて興味深いと思えました。

そしてホロー荘の側に住むポワロは、昼食に招待されました。ところが、ポワロがホロー荘にやって来ると、プールの側に倒れている人物がいました。ポワロという警察関係者を招いたことで、誰かがたちの悪い冗談を演じているのかと思ったら、それはなんと本当の殺人事件だったのでした。

事件の犯人は、誰が見ても一目瞭然だったはずなのですが、新たな事実が発覚して予想外に複雑な事件だと言うことがわかってきます。とはいえ、ポワロは積極的に事件解決に動き出そうとはせず、物語のメインとなるのはホロー荘の住人たちです。そして、最後でようやく事件の全体像が見えてきます。その背後には、複雑な恋愛感情があったのでした。

この作品は、謎解きをメインに考えると肩すかしを食らうことになると思います。でも、事件の背後にある関係者の複雑な心理に着目すると、とても楽しめる作品だと思いました。
バートラム・ホテルにて (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)アガサ・クリスティのミス・マープル・シリーズの「バートラム・ホテルにて」を読み終えました。

英国の古き良き伝統を継承しているバートラム・ホテルに、マープルの姿がありました。彼女の甥がこのホテルに宿泊する手はずを整えてくれたのです。そこである牧師の失踪事件が起きました。どうやら牧師は、何かの事件に巻き込まれたようです。さらに、それと平行するかのように、大規模な犯罪組織による強奪事件も頻発していたのでした。その事件にマープルは、警察の捜査協力という形で関わることになります。

そうこうする間に、ホテルのドアマンが射殺される事件が起きてしまいました。犯人は巨額の遺産を相続することになっている少女を狙ったらしいのですが、彼女を庇ったドアマンが殺されてしまったのです。

推理小説としては、今ひとつな作品でしたが、小説としては面白かったです。バートラム・ホテルの雰囲気の描写もいいですし、そこで働く人たちやお客たちの様子も興味深かったです。謎解きを楽しむのではなく、あくまで物語として楽しいというのがクリスティらしいと思いました。
スリーピング・ドールジェフリー・ディーヴァーの「スリーピング・ドール」を読み終えました。この作品は、以前に読んだリンカーン・ライムを主人公とした作品にも登場したキャサリン・ダンスという尋問のプロを主人公にした作品です。

キャサリン・ダンスは、カリフォルニア州捜査局の捜査官です。ダンスは、とあるカルト集団のリーダーだった男、ダニエル・ペルを尋問していました。そんなペルが、外部の協力者の力を借りて脱獄したのです。すぐに周囲には、多数の警官が配置されましたが、ペルの行方はなかなか突き止められません。こうしてダンスとペルの対決が始まったのでした。

ストーリーは二転三転して面白かったです。ダンスのキャラも、「ボーンコレクター」のリンカーン・ライムと違って好感を持ちました。物語もダンスとペルの知恵比べが面白かったです。特にダンスが使うキネシクスという分析技術は興味深かったです。尋問相手のちょっとした言葉遣いや動き、表情などから、本人が語っている以上の情報を得ることができます。まさに人間嘘発見器ですね!

というわけで、面白い作品ではあったのですが、結末にちょっとした謎が残ってしまったのが残念でした。キャサリン・ダンスを主人公とする続編も出ているようなので、その謎は次回作で明かされるのでしょうか!?
四つの署名 新訳シャーロック・ホームズ全集 (光文社文庫)コナン・ドイルの「四つの署名」を読み終えました。前回に続いて、今回も光文社文庫版です。

ホームズ・シリーズの第2作であるこの作品では、いきなりホームズの退廃的な面が描かれます。前作では優等生的に見えたホームズですが、今回は事件がなくて暇をもてあますと、コカインを注射して気を紛らわしています。しかし、いざ事件となると、それまでが嘘のように活動的になるのでした。

今回、依頼に訪れたのはメアリ・モースタン嬢です。彼女は数年前に父を亡くしたのですが、それから数年して彼女の元には毎年、大粒の真珠が届けられるようになりました。誰が何のためにこんなことをしてくれるのか、彼女には全くわからないのです。その相手から手紙が来て、彼女に正体を明かしてもいいと言ってきたのです。しかし、正体のわからない相手と会うことを恐れたモースタン嬢は、ホームズのところに相談にやって来たのでした。

彼女に同行して謎を追うことにしたホームズとワトソンは、そこでメアリの父・モースタン大尉の上司だったショルトー少佐の息子と会いました。毎年メアリに贈り物をしていたのは、彼だったのです。彼は自分の双子の兄にメアリたちを会わせようとノーウッドへと向かいました。ところが、そこで兄は何者かの手によって殺されていたのでした。しかし、部屋はちょっとした密室になっていて、兄が誰に殺されたのかわかりません。事件の謎を解明するために、ホームズとワトソンは手がかりを追うのでした。

お話の後半で、探し求めて犯人がつかまります。「緋色の研究」の時と同じように、犯人はなぜこういった事件を起こしたのかという理由を語り始めたのでした。それはちょっと不思議な冒険小説のような物語でした。

前作ではあっという間に犯人を逮捕してしまったホームズですが、今回は犯人の追跡に手間取りました。その分、いろいろと動きがあったり、犯人との知恵比べがあったりして楽しかったです。
緋色の研究 新訳シャーロック・ホームズ全集 (光文社文庫)コナン・ドイルのシャーロック・ホームズ・シリーズ「緋色の研究」を読み終えました。学生時代から合わせると、何度読み返したかわからない作品ですが、何度読んでも面白い作品ですね。

今回手に取ったは光文社文庫版でした。手軽に読める文庫版では、新潮文庫、創元推理文庫、そして光文社文庫があります。(ちくま文庫の全集もありますが、これはマニア向きですね^^;持ってますけど(笑))
新潮文庫版は昔読んだことがあったので、別の人の翻訳でということで光文社文庫を選びました。創元推理文庫も、新しい訳が深町真理子さんの翻訳で出ていて、そちらにしようか迷ったのですが、こちらはまだ全ての作品が新訳になっていなかったので、今回は光文社文庫版を読むことにしました。

この作品は、ドイルのホームズもの第1作です。そしてホームズとワトソンとの出会いが描かれた、記念すべき作品です。第1作ということもあり、ホームズの性格がその後とは微妙に違ったりするあたりも楽しいです。

軍医をしていたワトソンは、負傷してロンドンへと帰ってきました。生活費を安く上げるために、一緒に部屋をシェアしてくれる人がいないかと探していたワトソンは、知人のつてでホームズと出会ったのでした。そんなホームズは、かなり変わった人物でした。ある特定の分野に異常に博識かと思えば、誰でも知っているようなことに興味がなく知らなかったりするのです。ホームズは何者なのか興味津々だったワトソンは、やがて彼が諮問探偵だと知ることになるのでした。

そしてホームズの元に、事件の依頼が来ました。グレグスン警部から手紙が来て、空き家で起きた殺人事件の捜査に協力してくれと頼まれたのです。こうしてホームズは、ワトソンと共に事件の調査に乗り出したのでした。

この作品では、事件そのものは本の半分くらいで解決します。しかし、なぜこの事件が起きたのかを説明するために、第二部としてアメリカでの出来事が物語られます。正直、物語としては第一部の方が圧倒的に面白くて、第二部は冒険小説としてはそれなりに面白いといった感じです。

今回、新訳ということで期待半分、不安半分でしたが、結果としてはとても読みやすい訳で最後まですらっと読めました。これまでに読んだ翻訳だと、訳が古めかしすぎて違和感を感じることがあったので、新訳への変更は定期的に行って欲しいなあと思いました。
陪審評決ジョン・グリシャムの「陪審評決」を読み終えました。この本は、例によって児玉清さんが面白いと書かれていたので読んでみました。文庫では2分冊で発売されているらしいですが、私が読んだのはハードカバーの方です。2段組で500ページ近い分量があったので、読み終わるまでに10日ほどかかってしまいました。(^^;

物語は、ミシシッピ州のビロクシという街で1つの裁判が始まるところからスタートします。長年たばこを吸い続けて肺がんになって死亡した男の妻が、たばこ会社を相手取って裁判を起こしたのです。これまで同種の裁判は何度も起こされていましたが、いずれもたばこ会社に責任はないという結果が出ていました。

それを裏で操ってきたのは、フィッチという男です。彼はたばこ会社から潤沢な資金を得て、裁判でたばこ会社が勝利するために、ありとあらゆる手段を使ってきたのでした。今回の裁判でも、フィッチが影から裁判の結果を操ろうとしていました。

原告側、被告側、それぞれの弁護団は裁判前から多数の人員を投入して、陪審員候補者の情報を集めています。
原告側弁護団より豊富な資金を持つフィッチもまた、あらゆる手段を使って陪審員候補の情報を集めていました。ところが、その中にただ1人、どうしても正体がつかめないニコラス・イースターという男がいました。フィッチの心配通り、この男は陪審員の1人に選ばれてしまいました。

そして裁判が始まると、フィッチの元にはマーリーと名乗る女性から電話が入りました。謎の女性マーリーは、陪審員の当事者でなければ知り得ないような情報を伝えてきたのです。彼女は裁判の勝利を金の力で買うことができるとフィッチにささやきかけます。

というわけで、裁判の開始から評決が出るまでが、事細かに描かれていきます。陪審員の待遇を巡っての反乱が起きたり、ニコラスやマーリーという謎の存在がいることで、長いけれど物語は緊張感を持って続いていきます。
今回のニコラスとマーリーの計画は、大昔から練り上げられたものでした。とはいえ、周囲の彼らに対する対応など、ここまでうまくはいかないだろうと思える部分もたくさんありました。

日本でも裁判員制度が始まっていますが、アメリカの陪審制度はやはり独特で興味深いものでした。作中で描かれたことに多少の誇張はあるでしょうが、原告・被告双方の弁護団が策を巡らす部分などは実際の裁判でも同じことが行われているんだろうなと思える説得力がありました。
ボーン・コレクター〈下〉 (文春文庫)なかなか気持ちが乗らなくて時間がかかってしまいましたが、ようやくジェフリー・ディーヴァーの「ボーン・コレクター(下)」を読み終えました。

上巻の最後で、FBIに捜査権を奪い取られてしまったライムでしたが、アメリアの機転で再び捜査を再開しました。そして、あと少しで命を落としそうになっていた被害者を救い出したのでした。しかし、これで未詳823号の犯罪が終わったわけではありません。さらなる犠牲者が犯人に捕まっていたのです。

上巻では、非人間的な部分ばかりが目についたライムですが、下巻にはいってアメリアと心を開き合ったあたりから、ようやく人間らしさを見せ始めました。そして、ようやくライムの苦しさがこちらにも伝わってきました。
しかし、次の犠牲者を救い出したものの、犯行現場が火災に巻き込まれて数多くの証拠物件が失われてしまいました。そこでライムは、より積極的な作戦に出るのでした。

中盤は少しもたついた感じでしたが、ライムの反撃が始まる終盤の展開は怒濤の展開で、次に何が起きるのか予想できなくて面白かったです。そして最終的に明らかになる意外な真実にも驚かされました。

というわけで、リンカーン・ライム・シリーズの第1作をようやく読み終えました。まだ何作もこの後シリーズは続いていますので、続きを読むのが楽しみです。
センチメンタル・シカゴ (ハヤカワ・ミステリ文庫)V.I.ウォーショースキー・シリーズの第3作「センチメンタル・シカゴ」を読み終えました。

今回はヴィクが、大嫌いなおばから頼まれた事件を引き受けることになりました。そのおばは、ヴィクの母親を侮辱していて、ヴィクは大嫌いだったのですが、母の遺言があったため仕方なく依頼を引き受けたのでした。
おばはとある修道院で会計係として働いていました。ところが、その金庫から偽造された株券が見つかったのです。事件に関わりがあるのではないかと、おばは疑われてヴィクに電話してきたのでした。

ところが、ヴィクが捜査にかかった途端に、再びおばから電話があり事件の捜査から手を引いて欲しいと言われました。おばにどこかから圧力がかかったようです。しかし、ヴィクは事件の捜査から手を引くことはありませんでした。そんな彼女の友人で、事件の捜査に協力してくれた証券ブローカーのアグネスが何者かに殺害されました。
そしてヴィク自身にも危害は及び、硫酸を浴びせかけられそうになったり、アパートに放火されたりしました。

いずれの危機もヴィクは何とか切り抜けましたが、事件の謎は深まるばかりです。それでもヴィクは、めげることなく事件に挑みました。そして、ついに驚くべき真相にたどり着いたのでした。

今回で3作目ということもあってか、今までで一番ヴィクが生き生きしているように感じられました。正体のわからない脅迫者におびえ、時にボロボロになりながらも一歩も引かないヴィクは、ハードボイルドの主人公だなあと感じました。
今回ちょっと辛かったのは、いつもヴィクのよき理解者であるロティとヴィクが険悪な仲になってしまったことです。それだけに、物語のラストでの和解にはほっとしました。
レイクサイド・ストーリー (ハヤカワ・ミステリ文庫)女探偵、V.I.ウォーショースキーが活躍するシリーズの第2作です。今回は、ヴィクが海運業界にまつわる事件に巻き込まれることになりました。

物語は、ヴィクの親戚の元ホッケー選手が死んだところから始まります。彼は有名なホッケー選手だったのですが、ケガをして引退して、穀物会社で働いていたのです。ところが、彼は埠頭から落ちて船のスクリューに巻き込まれて死んでしまいました。その事故死に疑いを持ったヴィクは、独自に調査を始めます。

ところが、調査を始めて早々に、事故死した親戚が住んでいたマンションが荒らされました。その上、そのマンションを警備していた警備員まで殺害されたのです。さらに、事件の調査に乗り出したヴィクは、何者かに車を細工されて危うく事故死するところでした。

事故で負傷したヴィクですが、気持ちは折れていません。あくまで真相を突き止めようと、再び海運会社に乗り込むのでした。そしてヴィクは、とうとう大型貨物船にまで乗り込みます。ところが、その船が閘門を通った時、何者かが仕掛けた爆薬が炸裂しました。幸い、船は沈没せずにすみましたが、閘門は大きなダメージを受けて使用不可能になってしまったのでした。どんどん大規模になる事件を追ったヴィクは、そしてついに真相にたどり着くのでした。

海運業界が舞台ということもあって、わかりにくい部分もありましたが、登場人物が個性的でなかなか楽しめる作品でした。ヴィクは前作に続いてタフぶりを発揮しますが、その一方でおしゃれや機知も忘れません。このあたりが男性が主人公のハードボイルドとはひと味違った魅力を感じさせてくれますね。
ボーン・コレクター〈上〉 (文春文庫)ジェフリー・ディーヴァーの「ボーン・コレクター(上)」を読み終えました。ジェフリー・ディーヴァーの作品は、児玉清さんがお気に入りだったということで、読んでみる気になりました。映画にもなった作品らしいですが、私は映画は見ていません。

ケネディ国際空港からタクシーに乗った男女が、何者かに連れ去られるという事件が発生しました。やがて男の方は、生き埋めにされた状態で発見されました。それが全ての始まりでした。事件の調査を依頼されたリンカーン・ライムは、昔は警察の鑑識で働いていました。しかし、捜査中の事故が元で四肢が麻痺してしまい、今ではベッドから動くことさえできません。

生き埋めにされた男の周囲から発見されたわずかな手がかり、それからライムは次の犯行の予告を読み取りました。命の危機にさらされているのは、男と一緒に掠われた女性です。女性を助け、犯人を捕まえるため、ライムはあらゆる科学分析と知恵を使って、現場に残されていた証拠に秘められた謎を解き明かそうとするのでした。

しかし、ライムたちの努力もむなしく、すんでの所で女性を助けることはできませんでした。ところが、女性が殺害されていた現場には、新たな手がかりが残されていたのでした。次の犠牲者を救うために、再びライムたちはあらゆる知恵を集めるのでした。

そのおかげで、次の犠牲者は危ないところで命を取り留めました。ところが、現場にはやはり次の犯行の示唆する証拠が残されていました。ライムたちはその謎を追おうとしますが、ここでFBIの横やりが入りました。FBIの推理では、今回の事件はニューヨークで開催されている国際会議を狙ったテロの陽動作戦だというのです。
こうして捜査の途中で、ライムは次の事件への手がかりを奪われてしまいました。果たして、犯人の狙いは本当にFBIの言うとおりテロが目的なのでしょうか!? そして、事件を奪われたライムはこれからどうするのでしょうか!?

テンポよくストーリーが進んで、読みやすい作品だと思いました。でもストーリーがサクサク進むせいか、人物の掘り下げは今ひとつな感じがしました。そして事件の証拠集めのためなら、信じられないほど冷酷になれる主人公のライムには、今ひとつ共感することができませんでした。
ディック・フランシスの「配当」を読み終えました。この本は、児玉清さんが翻訳されるのを待ちきれなくて、原書で読んだと書かれていた本です。

物語は2部構成になっています。第1部ではジョナサン、第2部ではウィリアムの視点から物語が語られます。
第1部の主人公ジョナサンは、友人からプログラムが記録されたテープを手渡されました。そのテープには、3回に1回は確実に当たるという競馬の予想プログラムが記録されていたのです。
しかし、そのテープを友人に返す前に、友人は爆死してしまいました。その直後から、ジョナサンは1人の男に付け狙われることになるのでした。自分がなぜこんな事件に巻き込まれたのか、ジョナサンは独自に調査を開始しました。

作品が書かれた時期が古いので、今となっては懐かしいカセットテープにコンピュータのプログラムが記録されているあたりに時代を感じました。第1部はそれなりに面白かったのですが、第2部は主人公のウィリアムの行動にどうしても共感できず、今ひとつ楽しむことができませんでした。
この作品以外にも、何作か競馬シリーズは読んだことがありますが、残念ながらこの作品は失敗作だと思いました。
ペリカン文書 (小学館文庫)児玉清さんが面白本として紹介していた、ジョン・グリシャムの「ペリカン文書」を読み終えました。

物語は、アメリカの最高裁判所の裁判官2人が殺されるところから始まります。最高齢の裁判官と、一番若手の裁判官2人が同じ日の夜に殺害されたのです。ロースクールに通う女子学生ダービーは、事件に興味を持って独自の調査をまとめました。その文書は、愛人である大学教授を通じて、FBIと関わりのある弁護士へと渡りました。それから間もなくして、ダービーは怪しげな男たちに命を狙われることになったのでした。悪夢のようにダービーにつきまとう暗殺者から、ダービーは逃げのびることができるのか。ドキドキしながら、最後まで読み通しました。

このところ、海外のサスペンス小説、それも大作はあまり読んできませんでした。しかし、この作品は暗殺者から逃げ回るダービーをはじめとして、真相を暴こうとする新聞記者、陰謀をもみ消そうとする大統領首席補佐官などなど、さまざまな人物が登場して飽きさせません。
そして、途中まではなぜダービーの書いた文書がペリカン文書と呼ばれるのかわかりません。それが物語の中で明らかになった時、事件の背後にいる黒幕の正体が明らかになるところもよかったです。

登場人物が多くて、多少混乱はしましたが、それでも物語がスピーディで面白かったです。読み始めたらとまらなくなる系の本ですので、これから読もうとされる方はくれぐれも時間に余裕がある時にしてくださいね。(^^;
聖ペテロ祭殺人事件―修道士カドフェルシリーズ〈4〉 (光文社文庫)修道士カドフェル・シリーズの第4作、「聖ペテロ祭殺人事件」を読み終えました。3巻を読んでから、1年以上が経過してしまいましたので、本当に久しぶりのカドフェル・シリーズでした。

シュルーズベリの街では、間もなく聖ペテロ祭が開催されようとしていました。そんな時、街の町長が修道院を訪れました。第2巻で描かれた戦いで、街は大きな痛手を受けていました。街の復興のため、その期間に修道院があげる利益の一部を寄付して欲しいと申し出てきたのです。しかし、その間の利益は全て修道院に納めるものとするという、古くからの法がありました。院長のラドルファスは、それを盾に町長たちの申し出を退けたのでした。

そして、いよいよ聖ペテロ祭が始まりました。各地からは商人がぞくぞくと街へ訪れてきます。そんな中、町長の息子フィリップは、街の若者たちを集めて商人たちの前で演説を始めました。それは傷ついた街のために、いくばくかのお金を支払って欲しいというものでした。しかし、それを聞き入れる商人はありません。
そればかりか、フィリップはその中のトマスという商人と諍いを起こしてしまいました。そして、それをきっかにフィリップの連れの若者たちが暴れ出してしまったのでした。

争いは、城から兵士が派遣されてすぐに終息しました。ところが、その晩恐ろしいことが起こりました。フィリップと争った商人トマスが、何者かに殺害されてしまったのです。フィリップは、殺害の容疑者として牢獄に入れられることになってしまいました。
今回は、その殺害の謎にカドフェルが挑みます。しかし、カドフェルたちの捜索は進まないばかりか、その一方で殺された商人の船が荒らされたり、仮店舗が襲われたりします。さらに、第2の殺人まで発生してしまいました。

今回の事件は、わずか3日間とは思えないほど密度が濃くて面白かったです。最初のうちは次々と事件が起きるばかりで謎解きは進みませんが、疑いが晴れたフィリップが釈放されてから怒濤の展開が始まります。犯人は途中で何となく想像がついてしまったのですが、それを補ってなお面白かったです。特に物語終盤の急展開には、手に汗握らされました。
ナンシーの謎の手紙 (ナンシー・ドルー・ミステリ8) (創元推理文庫)久しぶりに刊行された、ナンシー・ドルー・シリーズの「ナンシーの謎の手紙」を読み終えました。

ナンシーは、凍えそうになっている郵便配達夫に自宅でお茶をふるまいました。ところが、その間に配達中の手紙が盗まれてしまったのです。盗まれた手紙の行方を追って、ナンシーは動き始めました。すると、盗まれた手紙の中には、ナンシーと同姓同名のナンシー・スミス・ドルーという女性への手紙が含まれていることがわかりました。イギリスから送られてきたその手紙には、彼女が莫大な遺産を相続することになったことを知らせるものでした。
盗まれた手紙の行方と共に、謎の女性ナンシー・スミス・ドルーを探して、少女探偵ナンシーが大活躍するのでした。

今回は謎解きよりもアクションに重点が置かれていました。盗まれた手紙と謎の女性を求めて、ナンシーは親友たちと共にあちこち駆け回ります。その活躍がとてもテンポよく描かれていました。
本格的な謎解きに驚かされるのもいいですが、このナンシー・ドルーの物語のように、気軽に手にとってワクワクしながら読める作品は貴重ですね。ぜひ、これからもシリーズを続けて欲しいと思ったら、なんとこの巻で第1期が完結してしまいました。(;_;)

子供も安心して読める、このような作品は貴重だと思いますので、ぜひ第2期の刊行を実現して欲しいです!
サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)サラ・パレッキーのV.I.ウォーショースキー・シリーズ第1作、「サマータイム・ブルース」を読み終えました。

名探偵コナンの灰原哀の名前の元ともなっている、女探偵・V.I.ウォーショースキーが活躍するアクション推理作品です。以前にも一度読んだことがあったのですが、今回久しぶりに読み返しました。

シカゴで探偵事務所を構えるヴィクは、有力銀行の役員から息子のガールフレンドを探して欲しいという依頼を受けました。ところが、調査のために彼女が息子のピーターのところに出向くと、彼は何者かに射殺されていたのでした。
これをきっかけに、ヴィクは大がかりな保険金詐欺事件に巻き込まれることになったのでした。

ヴィクは以前は弁護士として生計を立てていました。結婚の経験もあります。しかし、自立心の強い彼女には、家で夫の帰りをただ待つような主婦の暮らしは耐えられないものだったのでした。結局離婚して、それからは探偵事務所を開業して生活しています。

美人でおしゃれにも気を遣うヴィクですが、空手の腕前は達人レベルです。しかし、今回の事件では暗黒街の大物に目をつけられて痛めつけられたりもしています。それでもヴィクは事件から手を引くことはありません。打撲の痛みにうめきながらも、着実に事件を捜査して、真相へとたどり着くのでした。

物語としては、しがない探偵が事件に巻き込まれるという、よくあるタイプの物語です。しかし主人公のヴィクをはじめとして、その周辺にいる登場人物たちが魅力的なのと、テンポよく物語が進むので、するするっと物語に入り込むことができました。
修道士の頭巾―修道士カドフェルシリーズ〈3〉修道士カドフェル・シリーズ第3作、「修道士の頭巾」を読み終えました。

前作での戦いも終わり、シュルーズベリには平穏な日々が帰ってきました。そんな時、院長のヘリバートは公会議へと呼び出されました。院長の職を解かれるかもしれないのです。副院長のロバートは、次の院長は自分だとばかりの態度を取り始めます。

そんな修道院は、1つの問題を抱えていました。ある荘園主が自分の荘園を修道院へと寄進したいと言うのです。ところがこの男が、何者かに毒殺されてしまったのです。毒殺に使われた毒は、カドフェルが作っていた薬に使われていたトリカブトでした。それを知ったカドフェルは、事件の調査へと乗り出したのでした。

しかし思わぬ出会いが彼を待っていました。なんと荘園主の妻は、若き日のカドフェルが将来を誓い合った女性・リチルディスだったのです。おまけに犯人と疑われたのは、かって愛したリチルディスの息子でした。
息子の無実を信じるリチルディスは、カドフェルに救いを求めるのでした。その願いに応えて、カドフェルは息子のエドウィンの無罪を明らかにするために動き始めるのでした。

今回は、カドフェルの昔の愛人が登場したことで、ちょっと甘酸っぱいお話でした。カドフェルの推理はちょっと雑な気もしましたが、役人に追われて逃げ回るエドウィンたち少年の活躍が楽しかったです。

そして事件は無事に解決して、修道院の院長問題にも片がつきました。今回は副院長のロバートが、いつも以上に嫌な役回りだったので、最後のどんでん返しには胸がすっとしました。