日々の記録

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激闘東太平洋海戦〈4〉―覇者の戦塵1943 (C・NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第12作、「覇者の戦塵 激闘 東太平洋海戦(4)」を読み終えました。

ミッドウェイから発進した、5機の機種のバラバラな偵察機は、それぞれの索敵線に沿ってアメリカ軍の機動部隊を探しています。その中の二式陸上偵察機が、ついにヨークタウン型の空母を発見しました。しかし後方には、さらに別の空母機動部隊が存在する可能性があります。

その間も、ミッドウェイでの日米の激闘は続いていました。これ以上の部隊の上陸を阻止したい日本軍でしたが、制空権を奪われ、砲撃陣地を次々に破壊されて、有効な対抗手段がありません。それに対して、米軍はシャーマン中戦車をさらに揚陸して戦力を増強しています。

さらに敵機動部隊の所在がつかめず、ミッドウェイ方面に向かった第三艦隊司令部は方針を決めかねていました。状況を打破するために、索敵機を発進させようとしたところに、さらなる情報が届きます。司令部の予測してない地点に、空母2隻をともなう米艦隊が存在するというのです。

ミッドウェイの日本軍は、増援されたシャーマン中戦車に苦戦しています。そんな中、索敵に向かった偵察機がミッドウェイへと帰還してきました。しかし、着陸する滑走路が戦場となっている上、上空には米軍機の姿もあり、着陸は困難を極めます。帰還機に犠牲が出る中、日本軍は高角砲を対戦車砲に転用して、迫り来るシャーマン中戦車に応戦します。これが予想外の戦果を上げて、米軍は一時的に撤退していきます。

その夜、蓮見大佐は思いきった夜襲作戦を実行しました。ミッドウェイに残された攻撃機を使って、輸送船団を攻撃しようというのです。例によって無茶な^^;蓮見大佐の作戦ですが、ミッドウェイ近海に潜んでいた蛟龍も戦いに加わり、空母と駆逐艦を撃沈する戦果を上げたのでした。

その頃、第三艦隊の索敵機は、米軍の機動部隊を補足していました。続いて到着した攻撃部隊が、次々と空母を狙って攻撃を仕掛けます。しかし敵の対空防御は強力で、攻撃部隊は攻撃ポイントに入る前に数を半減させてしまいました。それでも続く第2波による攻撃で、何発かの打撃を空母に与えました。しかし米空母の防御力は高く、この程度の打撃では早急に修理を行い、すぐに戦線に復帰してきそうです。

さらなる決定的な打撃を与えるために、第三艦隊は第三波の攻撃を実行することになりました。しかし、日没が近づくこの時間帯の攻撃は、攻撃機の帰還が困難になるという不安要素もあります。それでも第三波の攻撃によって、日本軍はついに空母を撃沈しました。

しかし、日本軍の受けた打撃も小さなものではありませんでした。攻撃を受けた空母から発艦した攻撃部隊の襲撃を受けて、旗艦空母の加賀が失われたのです。結果的に今回の戦いで、日本軍は空母1隻、アメリカ軍は3隻の空母を失うことになりました。戦果だけ見れば、日本軍の圧勝ですが、工業力の差を考えれば、貴重な空母を失った日本軍の影響も小さなものではありません。

そしてこの戦いの後、ついに日本軍はミッドウェイから撤退することになりました。日本軍の撤退ぶりは、徹底的なもので、破壊された米軍機や海底に設置された通信用ケーブルにまで及びました。そして最後に魚住上飛曹が言った一言が、この戦いのすべてを語っていると思いました。「撤収するくらいなら、最初から上陸などしなければよかったのに」。

というわけで、4巻に渡って続いた激闘もついに終了です。この戦いでは、電探がますます重要な役割を果たすようになりました。米軍では、電探と連動した射撃管制システムも当たり前のものになりつつあります。さらに米軍は、電探の妨害装置の開発にも成功しています。日米の開発力・工業力の差が、これからの戦いに大きく影響してきそうですね。
覇者の戦塵1943 激闘 東太平洋海戦3 (C★NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第12作、「覇者の戦塵 激闘 東太平洋海戦(3)」を読み終えました。

この巻では、ついにミッドウェイに上陸したアメリカ軍と、それを阻止しようとする日本軍が激突します。
日本軍の予想に反して、アメリカ軍はミッドウェイ環礁の南ではなく、北から侵攻を開始しました。アメリカ軍は、水陸両用車両まで投入してきました。それを迎え撃つ日本軍の思わぬ力となったのは、前巻でミッドウェイにたどり着いた、傷だらけの駆逐艦・天霧でした。

先の戦いで少なくないダメージを受けていた天霧でしたが、その砲塔はまだ一部が使えました。その砲撃が、アメリカ軍の上陸部隊を足止めする役に立ちました。しかし、そんな天霧は散発的に訪れる米軍の爆撃機の攻撃を受けて、さらにダメージを受けてしまいました。それでも天霧の橘川艦長は、最後まで戦い抜く姿勢です。

天霧の砲撃を誘導するために、陸上部隊として天霧から樟葉大尉らがミッドウェイ司令部に派遣されました。しかし司令部は混乱状態で、樟葉大尉らは足手まとい扱いでした。そんな大尉たちを活かしたのは、海兵隊でした。そして気がつけば、海兵隊の蓮見大佐を中心に、海兵隊・海軍・陸軍を混成した集団が出来上がっていました。蓮見大佐のやり方を知らない部隊は、その指揮ぶりに驚きますが、現実にそれが成果を上げるのを見て納得するのでした。

そして日本軍は、一時的にアメリカ軍の攻勢を押し返して、索敵のためにキ74特号機を発進させることに成功しました。さらに今回は活躍の機会がありませんでしたが、かって真珠湾で活躍した潜水艇・蛟龍に乗った酒巻中尉と稲垣軍曹のコンビ+3人の下士官も海中に潜んでいます。

さらにミッドウェイを狙う米機動部隊を目標に、第三艦隊が動いています。圧倒的な物量を投入して日本軍を駆逐しようとするアメリカ軍に、日本軍はどれだけ対抗することができるのでしょうか。

というわけで、今回はミッドウェイの日本軍の苦闘が描かれました。制空権と制海権をアメリカに握られて、ミッドウェイを守備する日本軍は絶望的な状況です。この戦いがどんな形で決着するのか、次巻が楽しみです!
激闘 東太平洋海戦〈2〉―覇者の戦塵1943 (C・NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第12作、「覇者の戦塵 激闘 東太平洋海戦(2)」を読み終えました。

ついにアメリカ軍による、ミッドウェイ奪還作戦が始まりました。ミッドウェイに進出していた部隊は、大編隊で押し寄せる部隊の物量に物を言わせた攻撃にさらされることになりました。そして日に日に、迎撃できる機体は失われ、連日の爆撃で滑走路は補修と破壊を繰り返しています。

その頃、本土で姫川大佐を通じて、秋津中佐は岡田元首相の側近・迫水久常と顔を合わせていました。ミッドウェイの部隊を、秋津中佐は自らの及ぶ範囲で助力していました。上層部は既に、ミッドウェイからの撤退を視野に入れていましたが、秋津中佐は前線で戦う兵士たちを見殺しにすることはできないと考えていたのです。

迫水は、現政権ではこの戦争を終わらせる力はないと見ていました。それ故、早期に現政権から新たな、戦争を終結させられる政権を樹立することが必要だと考えていました。秋津中佐の行動は、それが本人が意図したことではないにせよ、現政権の維持につながると迫水は見たのです。その事実に直面して、秋津中佐は自分が軍事軍略だけでなく、政治の世界に足を踏み入れているのだと悟ったのでした。

ミッドウェイでは、海兵隊や陸軍航空隊の部隊が、残された戦力を使って奮戦していました。しかし、アメリカ軍との戦力差が大きすぎて、出撃するたびに消耗を強いられる苦しい戦いが続いています。そんな中、敵中へと進出した魚住上飛曹は、アメリカ軍の大規模な艦隊群を発見しました。そこに空母の姿はありませんでしたが、戦艦や重巡などの大規模部隊がありました。

その部隊は、ミッドウェイを砲撃するために移動しているようです。単機の攻撃では、その部隊に大きな打撃を与えることはできませんが、魚住上飛曹はサウスダコタ級戦艦への攻撃を敢行しました。その攻撃は戦艦に少なからぬダメージを与えたようですが、その戦果を確認することまではできませんでした。

その頃、ミッドウェイ近海には、日本軍の特務駆逐艦が進出していました。その艦隊は、わずか4隻の部隊でしたが、雷撃戦に特化した戦闘力を持っていました。夜の闇の中、その部隊はミッドウェイを砲撃しようとするアメリカ艦隊を発見しました。その攻撃が、アメリカ軍に予想外の動揺を与えることになりました。

アメリカ軍は、この海域には日本軍の艦隊はいないと読んでいました。しかし、駆逐艦からの思わぬ攻撃を受けて、確認されていない艦隊がいるのではないかと思い込んだのです。それが、予定されていたミッドウェイへの砲撃、未知の艦隊探索のための艦載機の分散を生みました。そのおかげで、ミッドウェイの日本軍はようやく一息つくことができたのでした。

そんなミッドウェイに、一機の水偵が到着しました。それはアメリカ軍の陽動によって、ギルバート諸島方面に向かったと思われた第三艦隊からの連絡機でした。そこには、通信参謀の野上少佐の姿がありました。野上少佐は、これから行われる第三艦隊のアメリカ軍機動部隊との戦いに備えて、航空部隊の待避先としてミッドウェイの滑走路を確保する必要性を知らせに来たのです。

司令部の参謀は、それを安易に受け入れますが、野上少佐はその安請け合いに不安を感じます。しかし、予備士官の沖津予備中尉と話をしたことで、大きな収穫を得ることができました。沖津予備中尉は、司令部よりも的確にアメリカ軍の動きを見抜いていたのです。

アメリカ艦隊に思わぬ打撃を与えた駆逐艦隊は、無傷ではいられませんでした。傷ついた艦艇をなんとかミッドウェイまで運ぼうと奮戦していました。途中、何度か敵の航空部隊に発見されましたが、運と海兵隊航空部隊に守られて、なんとかミッドウェイまでたどり着きました。

そこで蓮見大佐は、思い切った作戦を実行しました。傷ついた艦艇をミッドウェイの狭水道に沈めて、アメリカ軍の上陸部隊を足止めするための砲台として利用したのです。使えるものは何でも使う。蓮見マジックの炸裂ですね!(^^;
激闘 東太平洋海戦〈1〉―覇者の戦塵1943 (C・NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第12作、「覇者の戦塵 激闘 東太平洋海戦(1)」を読み終えました。

今作の舞台は、再び東太平洋です。哨戒中の伊一六八潜水艦が、アメリカ軍の機動部隊らしき動きをつかんだところから物語は始まります。開戦初期の日本軍の攻撃で、アメリカの太平洋艦隊は大きな打撃を受けましたが、ついに反撃に出ようとしています。

伊一六八潜はその後も敵の動きを探りますが、米機動部隊の動きがなかなか読めません。苦闘の末に、ようやく空母らしき船影を捕らえた伊一六八潜は、その船に魚雷攻撃を仕掛けるのでした。

その頃、陸軍の試作偵察爆撃機・キ74特号機と共に、宮下大尉、坂田中尉、江住技師がミッドウェイに向かっていました。彼らは陸海軍+海兵隊の合同作戦に協力するために、はるばる満州からミッドウェイまで進出してきたのでした。キ74特号は、1万メートルを超える高高度での行動が可能な機体でした。とはいえ、今の段階ではまだ試作機であり、今回はその問題点を発見することも目的の1つです。

ミッドウェイには、同じ陸軍から三八戦隊の屠龍も進出してきていました。しかし屠龍を操る加納中尉と武嶋軍曹は、混乱する指揮系統に振り回されることになりました。海軍と海兵隊の確執が、戦闘指揮を混乱させていたのです。業を煮やした加納中尉は、海兵隊司令官の蓮見大佐と出会いました。それで加納中尉は、ようやく事情を察したのでした。

その頃、トラック環礁にある日本軍の第三艦隊は、決断を迫られていました。米軍の機動部隊が動き出したことを知った第三艦隊は、ミッドウェイ方面とギルバート諸島方面の2つの侵攻ルートを想定しました。しかし、どちらに向かうべきかを決める決定的な情報が入手できないのです。

第三艦隊の司令長官である南雲中将は、通信参謀である野上少佐を密かに呼び出しました。南雲中将は、日本軍の暗号が米軍に解読されている可能性を問いました。以前はその可能性はないと断言した野上少佐でしたが、今回はその可能性はあると答えます。それを聞いた南雲中将は、第三艦隊の無線を封止して艦隊をミッドウェイに向けたのでした。

ミッドウェイは連日、米軍機の爆撃を受けながらも迎撃作戦を継続していました。戦いの中、撃墜した米軍機から回収された装置を、江住技師は調べることになりました。それは電波源を探知して、爆撃を誘導するための装置でした。どうやら米軍は、本格的な戦いの前に日本軍の電探施設を徹底的に破壊しようとしているようです。

一方、日本軍もこの激戦に合わせて、新たな新兵器を投入していました。多知川少佐を中心に開発が進められていた、射撃管制用の電探が戦場に導入されていたのです。持ち込まれた試作品は限られていましたが、それでもその試作品を使った攻撃は、これまでの戦いではあり得ないほどの戦果を上げていました。

そして、いよいよ東太平洋を舞台に、日米の激しい戦いが再び始まろうとしています。その戦いで大きな意味を持ってきそうなのは、電探です。戦いの勝敗を決するのは、人間の技量以上に、電子兵器の性能という時代に突入していたのです。
国力・技術開発力で劣る日本は、どれだけアメリカに対抗できるのでしょうか。

というわけで、再びミッドウェイを舞台に激闘が始まろうとしています。蓮見大佐も登場しましたが、今までよりもおとなしく^^;、本格的な戦い前の前哨戦を描きつつ、技術的な視点も多かったので満足できる内容でした。
覇者の戦塵1942 激突 シベリア戦線 下 (C★NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第11作、「覇者の戦塵 激突 シベリア戦線(下)」を読み終えました。

前巻の終わりに、満州へと派遣された秋津中佐は、日ソ間に速やかに停戦条約を締結させるために動き始めました。
それを実現するために、秋津中佐はシベリア鉄道を分断する電撃戦を目論みました。山下中将から作戦実施の許可を得た秋津中佐は、その準備に取りかかります。

ソ連との戦いで、まず問題になるのは重装甲を持つソ連軍戦車への対抗策でした。それを秋津中佐は、ドイツから持ち帰られたロケット砲を使うことで解決しようとします。既にその試作が何度も繰り返されていましたが、技術に無理解な上層部から無理な性能要求を突きつけられて、開発は難航していました。

しかし秋津中佐は、開発中の試作品の投入を決めました。その試作品は、長距離での命中精度に問題がありましたが、100mという短距離なら十分に目的を達していたのです。試作品の数は限られていましたが、秋津中佐はそれを少数の部隊に装備させたのでした。

そしてついに、日本軍のソ連領への侵攻が開始されました。ソ連側も日本軍の動きを警戒しており、それを出し抜いて作戦を実行する必要がありました。しかし、そういった事態も秋津中佐は想定済みで、日本軍の侵攻はほぼ予定通りに達成されたのでした。

いきなり試作品を持たされて、現場の最前線に立った多喜田軍曹は、その性能を全く信頼していませんでした。ところが、開戦初期に試作品が想像以上に効果をあげたのを見て、考えを改めました。秋津中佐の読み通り、その試作品はソ連の戦車を1発で撃破できる力を持っていたのです。

戦いは日本軍優位に推移しますが、その最中に思わぬ横槍が入りました。日本軍の優勢を知った上層部が、さらに大規模なソ連との全面戦争を計画していたのです。そんな無茶を言い出すのは、秋津中佐とも少なからぬ縁のある各務大佐でした。
各務大佐の計画は、ドイツに派遣されている辻中佐を支援するためでもありました。

そんな計画が実施されることになれば、秋津中佐の目論見は完全に崩壊してしまいます。今回の戦いがうまくいっているのは、秋津中佐が機動部隊を集中的に運用して短期決戦を目指したからです。もし戦線が拡大することになれば、ソ連との間に優位な立場から停戦条約を結ぶ機会も逃すことになってしまいます。

そのためには、一刻も早く戦いの要となっているイマンを陥落させる必要がありました。ところが、予想以上に防備を固めていたソ連軍に、日本軍は足止めされかけていました。そこで重要な役割を果たしたのは、牡丹江に派遣されていた航空部隊の存在でした。

その航空部隊が保持する戦力は多くありませんでしたが、戦線が満州から近いこともあり、1日に何度もの攻撃を仕掛けることが可能でした。そんな航空部隊の支援もあって、地上部隊は当初の予定通り、あっという間にイマンを陥落させたのでした。

そして、日本とソ連の間には停戦条約が結ばれました。その条件として、日本は第三国によるソ連の施設の利用を封じました。これによって、ソ連を経由して行われていたアメリカ軍の作戦は阻止されることになりました。さらにスターリングラードを攻略していたドイツ軍は、ソ連軍に敗れていました。それに伴い、ドイツに派遣されていた辻中佐が帰国する目処も立っていません。

危ない橋を渡る局面もありましたが、秋津中佐の目論見はこうして成功しました。ソ連の動きを抑えたことで、日本軍はアメリカとの戦いに集中することができそうです。現実とは違う、この世界の戦いがどう動いていくのか、この続きも気になります。
覇者の戦塵1942 激突 シベリア戦線 上 (C★NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第11作、「覇者の戦塵 激突 シベリア戦線(上)」を読み終えました。

前巻では技術的な視点が少ないのが不満でしたが、今回は陸軍の電探と本土防空体制を中心に、技術者の出番が多くなりました。

アメリカと開戦した日本ですが、ノモンハンで戦った後、日本とソ連はいまだに中途半端なにらみ合いを続けていました。
公式的には宣戦布告していないので、日ソ間は戦争状態にはないという不思議な状況が続いています。そんな中、ソ連方面から予期せぬ攻撃を日本は受けることになりました。アメリカ軍の爆撃部隊がソ連を経由して、日本本土に爆撃攻撃を仕掛けてきたのです。

これを受けて、本土の防空体制を強化すべきなのですが、海軍はミッドウェイ方面にかかりきりで、本土防空のための戦力を派遣しません。やむなく海上での飛行に不慣れな、陸軍の航空部隊が敵編隊の防空を担当することになりました。しかし、海軍とは違い陸軍では航空機に搭載されている武装が劣るものでした。さらに各所に敵の来襲を検知するための電探が配備されてはいましたが、その扱いに熟達した者がいませんでした。

結果的に、それなりの防備は整えていたのに、それをうまく連携して活用できないために、米軍の東京爆撃を阻止することに失敗したのでした。陸軍の技術士官である多知川少佐は、その現状を調査しますが、その報告は上層部に届くことはありませんでした。この当時、技術者は用兵に口を出すことは許されず、要求された装備の開発に専念していればいいという風潮があったのです。

多知川少佐の上司である漆原少将は、彼の指摘をきちんと理解していました。しかし同時に、その危険性も認識していたのです。そして多知川少佐は、漆原少将のすすめで海軍の技術研究所を訪れることになりました。そこで多知川少佐は、深町少佐と出会ったのでした。陸軍とは別に、海軍の技術開発も様々な問題を抱えていました。民間に委託する形で技術開発を進める陸軍とは対照的に、海軍では独自の研究機関で技術開発を進めていました。

日米の戦いが長期化する兆しをみせる中、陸海どちらの方式にも問題点があることを深町少佐は指摘しました。そして深町少佐は、それを改善するために民間の技術力の向上が必要なことを多知川少佐に訴えたのでした。

そして多知川少佐は、民間の技術指導を行うと共に、本土防空の要となる迎撃部隊の装備の改善に取り組みます。それがやがて、海軍機には既に導入されている電探を搭載した機体の投入へとつながっていくことになります。

深町少佐らとは別に、陸軍参謀本部に所属する秋津中佐も、技術に理解がなく無謀な作戦を連発する参謀本部で孤立していました。しかし、参謀本部の中にも秋津中佐に功績に注目している人物がいました。姫川大佐はノモンハンでの秋津中佐の行動を知って、関東軍の中に不穏な動きがあることを教えます。

ノモンハンであれだけ苦労したにも関わらず、積極的にソ連領に侵攻してシベリア鉄道を寸断する作戦が計画されていたのでした。その背後にいるのは、辻中佐でした。辻中佐はノモンハンで大失態を演じながら、積極さのみが評価される陸軍の風潮から、厳しく責任を問われることはありませんでした。そればかりか、形ばかり参加したマレー作戦が成功したことから、再び参謀本部に返り咲いていたのでした。

辻中佐の勢力は、秋津中佐を参謀本部から追いやろうとしていました。秋津中佐は、あえてその作戦に乗りました。それは辻中佐が密かにドイツに行くことになったからです。辻中佐がドイツにいる間に、秋津中佐はソ連との関係を修復して、辻中佐の行動を無意味なものにすると共に、辻中佐に対抗できる派閥を築き上げようと考えたのです。

そんな秋津中佐の作戦は、うまく成功するのでしょうか。そして、陸海ともに内部体制にかなりの問題を抱えた日本軍は、これからの戦いをどう戦っていくのでしょうか。
覇者の戦塵1942 反攻 ミッドウェイ上陸戦 下 (C★NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第10作、「覇者の戦塵 反攻 ミッドウェイ上陸戦(下)」を読み終えました。

海兵隊の決死の攻撃で、日本軍はミッドウェイのイースタン島をほぼ占拠しました。しかし、日米の戦いはまだ続いています。最初の戦いで、赤城と蒼龍を失った日本海軍でしたが、残された飛龍の航空部隊を投入して、米空母への大規模な攻撃を実行します。

それと同様に、アメリカ海軍もまた前線で戦う空母レキシントンを支援すべく、エンタープライズ、ヨークタウンの2空母を戦線へと投入してきました。日本軍はエンタープライズの動きまではつかんでいたものの、ヨークタウンの存在を知らず、お互いに一歩も譲りません。

日本海軍は、第一航空艦隊と呼応するように、真珠湾から急行している第二航空艦隊がレキシントンを挟撃する体制を取ります。この作戦は大きな戦果を上げますが、今度はエンタープライズとヨークタウンから発進した米航空部隊のために、日本海軍が危機にされされます。

戦いの中、第一航空艦隊に残された空母・飛龍も被弾しますが、幸いにも大きな被害を出さず、飛行甲板の前部を破壊されるも、応急処置で対応して艦載機を発艦させることができました。しかし、第二航空艦隊は2隻の空母のうち、翔鶴が敵部隊の攻撃を受けて、発着艦が不可能な上に航行に支障を来すほどの大きなダメージを受けていたのでした。

最終的に、日本海軍は米空母エンタープライズにダメージを与えたものの撃沈にまでは至らず、日本海軍の空母・翔鶴も大きなダメージを受けたものの、なんとか戦場から待避できる程度には損害を回復させることができました。

海兵隊は、ミッドウェイをほぼ掌握しましたが、こんなに苦労して手に入れた拠点から、蓮見大佐はすでに引き上げることを考えていました。もちろん、単に撤退するのではなく、今後しばらくはミッドウェイが米軍の航空拠点として利用されることがないよう、徹底的に破壊した上で引き上げるつもりのようですが・・・。

今回も航空戦を中心に、日米の戦いが描かれました。今回もメインとなる視点は、魚住一飛曹でした。前巻では信じられない活躍をみせた蓮見大佐ですが、今回は珍しくおとなしかったですね。(^^;
物語の中心が戦いなので、技術的な動きがほとんど語られず、電探の活用や無線通信による各部隊の緊密な連携の必要性が示されるにとどまっていたのが、ちょっと寂しかったです。
覇者の戦塵1942 反攻 ミッドウェイ上陸戦 上 (C★NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第10作、「覇者の戦塵 反攻 ミッドウェイ上陸戦(上)」を読み終えました。

アメリカとの開戦と同時に、真珠湾とミッドウェイを同時奇襲攻撃をかけた日本軍。真珠湾での作戦は、それなりに戦果を上げましたが、ミッドウェイでの戦いでは日本軍は大きな被害を出していました。米空母とミッドウェイから航空部隊の攻撃により、赤城と蒼龍の2隻の空母を失っていたのです。

今回は、蒼龍の航空部隊の一員であった魚住一飛曹の視点から物語が始まります。蒼龍から出撃した魚住一飛曹は、想定外の数の敵を相手にすることになりました。そのままミッドウェイへと進んだ魚住一飛曹でしたが、そこには目標としていた敵航空部隊の姿はありませんでした。

作戦を終えて母艦に帰還した魚住一飛曹は、蒼龍が敵の猛攻を受けているのを目にすることになりました。母艦への帰還を果たせなかった魚住は、不時着水して駆逐艦・舞風に救助されたのでした。

大きな戦力を失った日本の機動部隊でしたが、残された空母・飛龍を中心にして戦力の再編成を行いました。それと共に、真珠湾に進出していた部隊との連携を目指します。そんな中、舞風から飛龍へと移った魚住でしたが、愛機を失った彼にそこでの出番はありません。そして魚住は、上官である塩崎中尉と共に、海兵隊の母艦となっている光陽丸へと移ることになりました。

それは魚住にとっては、屈辱的なことでした。海兵隊は海軍から抽出された兵士で構成される部隊ですが、そこに集められたのは技量が未熟であったり、行いに問題がある半端者の集団だと思われていたからです。そんな風に海兵隊を馬鹿にして転籍した魚住でしたが、装備の充実より技量の向上を重視する海軍と、少ない人手や未熟な兵士を支援するために装備の充実を重視する海兵隊の違いに驚くことになりました。

そして、海兵隊によるミッドウェイへの上陸作戦が実施されました。上陸部隊を指揮するのは、棟方兵曹長です。敵前への上陸という危険な任務を、海兵隊はなんとか達成します。しかし、上陸はしたものの敵部隊の反撃を受けて、それ以上の侵攻することを阻止されていました。ミッドウェイ周辺には、米潜水艇部隊も展開しており、後方からの補給も滞る上陸部隊は、危機にさらされます。おまけに、本来なら海兵隊を支援するはずの航空部隊が、飛龍を中心とした海軍部隊の索敵のために駆り出されていて、上陸部隊は航空部隊の支援を受けることもできない状況です。

ここに颯爽と登場したのが、海兵隊司令・蓮見大佐です。今回の蓮見大佐は、いつもの艦戦ではなく、陸軍から借り受けた旧式の連絡機でした。敵前に強行着陸した蓮見大佐は、前線の部隊に指示を与えて、イースタン島の占拠を目指します。
蓮見大佐は、例によって無茶としか思えない作戦の強行を棟方兵曹長に命じます。そんな作戦がうまく行くのかと、棟方が不安に思う中、どこからともなく海兵隊の航空部隊が現れて、彼らの作戦を支援します。

それが、蓮見マジックの始まりでした。なんと蓮見大佐は、海軍の支援に向かった航空部隊が母艦に帰還するついでに(!)、ミッドウェイ上陸部隊の支援を行わせたのです。海兵隊には未熟な搭乗員が多いことを逆手にとって、母艦への進路を誤ってミッドウェイに進出してしまったことにしたのです。(^^;

さらに蓮見マジックは続き、航空支援を受けた上陸部隊は、敵の滑走路を占拠することに成功しました。そこに現れたのは、空母から発艦はできるけれど、着艦はできない若年兵の航空部隊です。棟方たち上陸部隊が、滑走路の占拠に成功していなければ、彼らは母艦に着艦することもできず、不時着するしかありません。1つ何かが狂えば、完全に破綻する無茶な作戦のはずなのに、結果をみれば収まるべき場所にきちんとピースが収まってしまう不思議。これはもう、蓮見マジックとしか言いようがありません。

というわけで、ミッドウェイに侵攻した海兵隊は、その占拠にほぼ成功しました。しかし、同時に上陸作戦を決行した陸軍部隊は苦戦しているようですし、敵空母の殲滅を目的として発艦した海軍航空隊の作戦は完全な空振りに終わりました。
最終的な戦いの行方は、まだどう転ぶかわからない状況ですね。
覇者の戦塵1942 急進 真珠湾の蹉跌 (C★NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第9作、「急進 真珠湾の蹉跌」を読み終えました。

この巻では、ついに日米が開戦します。史実とは異なる状況の変化があるので、この世界での最初の日米の戦いも異なるものになりました。その一番大きな違いは、アメリカが日本の侵攻を事前に予期して、戦いへの備えを進めていたことです。

物語は、南シナ海で行動する日本軍の駆逐艦が、アメリカ国旗を掲げた哨戒艇を発見するところから始まります。すでに日本軍は、この方面に向けての作戦をスタートさせていたため、駆逐艦は米軍への通報を警戒して哨戒艇を撃沈しました。

そして舞台は、奇襲攻撃が行われた真珠湾へと移ります。真珠湾に侵攻した日本の機動部隊は、湾内に停泊中の艦隊に攻撃を仕掛けます。ところが、湾内にいたのは旧式の艦艇ばかりで、新型の戦艦や空母の姿は発見できません。2回に渡る攻撃で、日本軍はそれなりの戦果を上げましたが、その直後に今度は米軍の逆襲を受けることになったのでした。

すでに日本軍の艦艇や航空機には、電探が装備されていました。しかし、直接相手を攻撃するものではない電探を、上層部は軽く見ていたのです。また、新たに搭載された装備ということもあり、その操作に熟達した兵が決定的に不足していました。

ところが、戦いが進むにつれて、司令部は電探の有効性を認めざるを得なくなってきました。そして、電探を搭載した偵察機を早期に警戒に上がらせていたため、空母・加賀を中心とする艦隊は敵の反撃に備えることができたのでした。しかし、航空部隊の熟練度は低いものの、米軍は多くの潜水艦部隊を展開していました。結果的に、空母・加賀は飛行甲板に爆撃を受けて、戦線から離脱することになったのでした。

この世界では、真珠湾攻撃と平行して、日本軍はミッドウェイにも機動部隊を派遣していました。ところが、ミッドウェイに進出した日本の機動部隊は、アメリカ空母に搭載された艦載機の攻撃を受けて、日本軍の空母は壊滅的な打撃を受けていたのでした。

今回はそんな戦いの様子が、真珠湾攻撃部隊を指揮する瑞垣少佐、空母・加賀に乗り込んだ航空参謀の出島少佐、真珠湾内に突入して敵艦を攻撃する特別格納筒部隊の酒巻少尉、と複数の視点から描かれていました。異なる視点からさまざまな戦いが描かれるのは興味深かったですが、真珠湾を攻撃した瑞垣少佐が加賀に帰還したあたりは、瑞垣少佐の視点と出島少佐の視点が入り組んでいて、読んでいて混乱するところがありました。
覇者の戦塵1942 撃滅 北太平洋航空戦 下 (C★NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第8作、「撃滅 北太平洋航空戦(下)」を読み終えました。

上巻では、ソ連の強襲に日本軍が電探を活かして、何とか反抗する展開でした。占拠された武蔵基地への爆撃も成功して、ここから巻き返しかと思いきや、意外なことに戦いは膠着状態に陥っていました。前線の兵士は闘志にあふれているのですが、後方からの支援が滞っているのです。海軍の主要部隊は、いずれ実行される作戦のために力を注いでいて、北千島に振り向ける余裕がなさそうです。

そんな中、アリューシャン方面に進出していた伊五三潜水艦は、アメリカからソ連へ物資を移送している艦隊を発見しました。そこに投入されていたのは、なんとアメリカ軍の正規空母でした。輸送している戦力が北千島に投入されたら、再び日本は苦しい状況に追い込まれます。伊五三潜は、敵の移送ルートを想定しつつ行動を開始します。

そして、前巻で起きたアメリカの測量船誤爆事件の真相も明らかになりました。測量船といいながらも、その船は妨害電波を発信し、ソ連軍を支援していたのでした。その船を爆撃したのは、黒崎二飛曹でした。彼は自分の行為の正当性を主張しますが、司令部はそんな彼の言葉を聞き入れませんでした。そんな状況の中、蓮見大佐が司令部に出向いていたのでした。

帰還した蓮見大佐は、不足している航空機の補充してきました。そればかりか、黒崎二飛曹の行った爆撃を、蓮見大佐が行ったことにして、部下をかばっていました。蓮見大佐は、やることはとんでもないですが、こういう男気をみせるのが格好いいですよね。

そして世界情勢は、日本とアメリカの開戦は避けられない方向に動いていました。そして、さらに驚くべき事実が明らかになりました。黒崎二飛曹が爆撃した測量船に、最終的にとどめを刺したのは、ソ連軍の爆撃機だったのです。表向き、その事実は伏せられているようですが、それをきっかけに米ソの親密な関係は崩れようとしています。

そんな中、政界から引退した宇垣大将は、アメリカとの開戦はやむなしと考えていました。しかし、現在の政権では、この危機を乗り越えることができないとも予想していました。そして戦いを止めることはできなくても、戦いをやめる算段ならできると、宇垣は考えていたのでした。

その頃、幌筵島では次の作戦に向けて蓮見大佐が動き出していました。陸上基地で空母への着艦訓練を行った後、前巻にも搭乗した特設運送艦・光陽丸へと移動して、アメリカからソ連への物資輸送を阻止する作戦を計画していたのでした。
そして伊五三潜は、空母を守ろうとする敵駆逐艦との駆け引きを続けつつ、空母の動きを捕らえようとしています。そんな中、敵艦を撃沈した伊五三潜は、その生き残りを捕虜として得ました。

その間に、ソ連の駆逐艦がアメリカ空母との合同を目指して動いていることが明らかになりました。なぜソ連の駆逐艦が、そんなことをするのか。蓮見大佐はその目的が、輸送される航空機のパイロットを送り届けることにあると見抜きました。
米ソの合同を阻止することが、物資の輸送を阻止することにつながるのです。

海兵隊の航空部隊は、それを阻止する作戦を決行しようとします。しかし、ソ連軍も大量の爆撃機を投入して、日本軍の行動を封じ込めようとします。そして北太平洋上で、日本軍とソ連軍の激しい戦いが繰り広げられることになりました。戦いの中、海兵隊の航空部隊を移送する光陽丸も、飛行甲板に爆弾の直撃を受ける被害を出しました。それによって、航空部隊の光陽丸への帰還は一時的に不可能になりました。

戦況が混乱する中、鹵獲したシュルツモビクを利用して、蓮見大佐がとんでもない作戦を考え出しました。黒崎二飛曹をシュルツモビクに搭乗させて、ソ連軍への航空機輸送を阻止しようというのです。しかも、本来陸上への着陸しか考慮されてないシュルツモビクを、修復させた光陽丸の飛行甲板に着艦させて、翌日の攻撃に参加させようというのです。

こんな無茶な作戦を、蓮見大佐と黒崎二飛曹は実現してしまいました。黒崎二飛曹の操るシュルツモビクは、空母の飛行甲板に並んだ艦載機に壊滅的なダメージを与えることに成功したのでした。

この作戦の後、日本軍は北千島に侵攻したソ連軍を完全に押さえ込みました。そんな中、新たな戦いが始まろうとしていました。日本軍が、英米との本格的な戦いに突入したのです。しかも、その初戦で日本軍は大きな被害を出したようです。
その戦いの詳細は、次巻で語られることになりそうです。
覇者の戦塵1942 撃滅 北太平洋航空戦 上 (C★NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第8作、「撃滅 北太平洋航空戦(上)」を読み終えました。

占守島に配備された尾辻兵曹は、導入されたばかりの試作十四号電探の異変を知りました。異変の原因は、機器の不良によるものと考えた兵曹でしたが、それはソ連による大規模な北方への侵攻作戦の始まりだったのでした。

攻撃の規模を把握できなかった日本軍は、一気に占守島への上陸部隊と空挺部隊による攻撃にさらされ、島の各所に配置されていた電探施設は次々と破壊されていきました。そればかりか、ソ連の侵攻部隊は占守島の先にある幌筵島にも及んでいました。

その頃、海軍と陸軍の合同による輸送演習が千島海峡で実施されていました。大規模な敵の来襲を知って、海軍と陸軍それぞれの参謀の意見が対立していました。輸送船の安全を第一に考える陸軍は、早期の戦線からの撤退を考えていました。一方、海兵隊の戦闘機を多数搭載する海軍参謀は、ただちに偵察機を派遣して状況を把握しようとしていたのでした。

そして艦攻での電探の調整のために派遣されていた深町少佐は、電探の操作に精通していたことから、艦攻に搭乗してソ連の動きを偵察する任務を与えられることになりました。技術士官でしかない深町少佐にとって、これは思いもかけないことでした。しかし、突如現れた海兵隊の蓮見大佐に押し切られて、深町少佐も偵察に協力することになったのでした。

この海兵隊司令の蓮見大佐は、常人とかけ離れたとんでもない人物でした。(^^;
戦闘機に搭乗するのに、なぜか軍刀持参だったり、後ろでどんと構えていてもよさそうなのに、自ら進んで危地に飛び込んでゆく大胆不敵さ。こんな大佐に指揮される部隊は、当然そんな上官に振り回されることになるのですが、大佐はその驚異的な能力で、あっさりと危険をくぐり抜けてしまいます。

そんな暴れん坊の活躍もあって、日本軍はじょじょに体勢を立て直していきます。もちろん、その裏では大佐にこき使われる深町少佐の苦労があったり、占守島で陸軍に協力して電探を活用した尾辻兵曹の地道な努力もあったりしますが。

そんな物語の合間に、今では首相の座から引退した宇垣大将のところへ、日下部記者が訪れました。海外の新聞にも寄稿し、海外経験も豊富な日下部が出入りすることを、宇垣は黙認していました。そんな2人の会話を通して、この世界の日本が置かれている政治状況が明らかになっていきます。

宇垣の後任として首相になったのは、近衛文麿でした。しかし近衛は陸軍を押さえることができず、政治体制は弱体化していました。そして欧州では、ドイツ軍がソ連へと侵攻して、独ソ戦が始まっていました。こんな時期になぜ、ソ連は北千島に侵攻してきたのか。その意図が、じょじょに見えてきます。

日下部は、今回の背景にはアメリカの思惑が絡んでいると言います。ドイツに西の輸送経路を押さえられたソ連と、北満州油田の開発による日本の急速な工業化を危険視するアメリカ。さらには、陸軍が政府に無断で進めたドイツとの密約。
前作で阻止された三国同盟は、宇垣の知らないところで再び動いていたのです。

アメリカ政府の上層部は、既に日本との戦いを想定していますが、アメリカ国内の世論は、今のところ開戦に消極的です。
しかし日下部は、いずれアメリカは大義名分を用意して、この戦いに参加してくると読んでいました。そんな時、今の内閣では日本を支えきれません。だから日下部は、宇垣が再び政権に返り咲くべきだと考えていたのでした。

2人の会談の間にも、戦いは続いています。蓮見大佐に率いられた艦爆戦隊は、ソ連軍に奪われた幌筵島の武蔵基地への夜間爆撃を敢行します。それと連携して、海兵隊が幌筵島へと上陸する作戦です。占守島にいた尾辻兵曹は、上官と共に幌筵島へ向かい、上陸した海兵隊と合流するはずでした。

ところが、島に上陸はしたものの、そこに海兵隊の姿はありませんでした。海兵隊の作戦遂行中に、同様にソ連軍は松輪島にある海兵隊基地を爆撃していたのでした。さらに敵情の偵察を続ける深町少佐は、アメリカのアリューシャン列島から大規模な編隊が飛んできたことを知りました。ソ連軍が次々と攻撃部隊を送り込んでくる裏には、やはりアメリカの支援があったのでした。

さらに、海上を航行する特設輸送船団にも危機が迫っていました。敵は日本軍が電探を使っていることを察知して、錫箔をまいて妨害工作を行います。しかし、それが逆に深町少佐に敵の存在と位置を知らせることになりました。しかし、少佐の予想外のところから、B-25の編隊が進撃してきていました。

その編隊に、有効な武器を持たない蓮見大佐の艦攻が接近します。捨て身で船団を守ろうとしたのかと思いきや、大佐は敵に肉薄することで敵編隊の行動を乱して、彼らを自滅させたのでした。こんな無茶をしながらも、蓮見大佐は当然のように生き残っているのが凄いですね。(^^;

戦いはいまだ続く中、宇垣の元にある知らせが届きました。北千島に接近していたアメリカの情報収集船を、海兵隊の航空部隊が誤爆していたのです。・・・がしかし、それはアメリカ国内の世論を動かすために仕組まれた謀略に、まんまと日本がはまってしまった結果のようです。

アメリカの参戦も遠くない状況の中、この世界の戦いはどんな方向に向かうのでしょうか。

今回は、蓮見大佐のキャラがとにかく強烈でした!(^^;
覇者の戦塵1939 殲滅 ノモンハン機動戦 下 (C★NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第7作、「殲滅ノモンハン機動戦(下)」を読み終えました。

一時的に休止していますが、日満軍とソ蒙軍の戦いは続いています。圧倒的に不利な状況の日満軍でしたが、前巻の終わりに決死の渡河作戦を決行したことで、なんとか戦局を互角の形成にまで持ち込みました。しかし、ソ蒙軍の前線部隊の増強は続いており、これを放置すれば日満軍は決定的な敗北を喫しそうな状況です。

そんな中、秋津少佐は奉天製作所の佳木斯(チャムス)分工場で、驚くべき戦車が試作されているのを目撃しました。それは海軍の艦艇で旧式になった砲や、旧世代の飛行機のエンジンを転用して製作された戦車でした。その戦車は水密性にも優れており、なんと陸上だけでなく浅い川であれば水中でも進行できる水陸両用戦車だったのでした。それを知った秋津少佐は、海軍陸戦隊をこの戦いに投入すれば戦局を打破できると考えたのでした。

しかし陸軍、とくに関東軍の内部には、陸での戦いに海軍を投入することに対する反発が根強くありました。秋津少佐を満州に派遣した石原少将からも、海兵隊が今回の戦いに投入されることがないように念押しされていました。それでも秋津少佐は、ノモンハンでの戦いの決め手となるのは、この部隊を戦線に投入できるかにかかっていると確信するのでした。

その頃、ノモンハンでの前線では、ソ蒙軍による本格的な総攻撃が開始されていました。日満軍は連日、大量の砲撃にさらされて圧倒されていました。しかし、室生中尉らを中心に前線の防護陣を堅牢に構築していたおかげで、なんとかその猛攻に日満軍は耐えていたのでした。

戦いが進展する中、乏しい戦力をやり繰りして、室生中尉の率いる砲戦車を中心とする部隊は、反撃に出ました。その作戦は一応の成果を上げましたが、戦いの後で驚くべき情報を室生中尉は入手しました。ソ蒙軍の日満軍に対する北と南からの包囲網は、1つだけでなく、内側の戦線のさらに外側により大きな包囲網が展開していたのでした。

この包囲網が完成すれば、日満州軍は壊滅的な損害を受けることになります。室生中尉は、その情報を司令部へと伝えようとします。ところが、あきれたことに後方で戦いを指揮する関東軍司令部は日曜日だからと羽をのばしており、そのために前線への指示が停滞するという事態に陥っていたのでした。

そんな中、室生中尉の前に秋津少佐が現れました。秋津少佐は、関東軍司令官である永田司令官を動かして、ついに前線への海兵隊投入が決行されることになりました。秋津少佐や海兵隊の小早川少佐が事前に先行して準備を整えておいたこともあり、海兵隊の前線への投入は迅速に行われました。

そして海兵隊の主導による、渡河作戦+南北の部隊を指揮する敵司令部への奇襲攻撃が開始されました。限られた時間の中、夜明け直前に作戦は決行されました。その戦いで、海兵隊の十二試重戦車はその力を発揮しました。重装甲と水陸両用という特徴を活かして、敵司令部を潰走させたのです。とはいえ、さすがの海兵隊も戦車戦の経験は不足しており、室生中尉らの部隊の支援がなければ、部隊が壊滅するところでした。

司令部を失ったソ蒙軍は、大混乱に陥りました。そして戦いは、再び膠着状態に陥りました。ソ蒙軍を率いた将軍は更迭され、戦いの間に密かに進行していた独ソ不可侵条約が結ばれていました。さらに、史実では日本・ドイツ・イタリアの三国で結ばれた三国同盟も、この世界では日本は参加しないという形で決着しました。
この戦いのもう一方では、欧州での戦いが拡大していました。ドイツのポーランド侵攻に応じて、ソ連も東欧や北欧への侵攻をもくろんでいます。

というわけで、今回はさらに史実から離れた展開+架空戦記のお約束^^;新型兵器の投入もあって、物語はさらに史実とは違う方向に動き始めました。この世界がこの先どんな方向に向かうことになるのか、この続きも楽しみです。
覇者の戦塵1939 殲滅 ノモンハン機動戦 上 (C★NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第7作、「殲滅ノモンハン機動戦(上)」を読み終えました。

これまで読んできた覇者の戦塵シリーズは、角川から発売されたものの合本版でした。この本から、中央公論社のC-NOVEVLSシリーズとして書き続けられています。

今回は、モンゴル人民共和国と満州国との国境紛争という形で、モンゴルを後押しするソ連と、満州国の関東軍との戦いが繰り広げられることになりました。その背後には、北満州油田の権益を狙うソ連の思惑があります。一方の関東軍は、戦車戦に対する理解のないまま、無謀ともいえる作戦を連発します。

今回メインの語り手となったのは、第4連隊の試製1号砲戦車を指揮する室尾中尉です。欧州での戦いを経験しているソ連は、戦車を用いた作戦に精通しつつありました。そんなソ連軍に、日本軍は大苦戦することになるのでした。

ソ連の戦車の完成度は、独自に戦車戦を研究していた室尾中尉さえも驚くものでした。日本軍の九七式中戦車では、ソ連のBT戦車の装甲を破ることはできませんでした。それだけでなく、戦車の進行方向にピアノ線を利用したワイヤーを張り巡らせ、それに絡まった戦車が行動不能に陥ったところを攻撃する作戦も、日本の戦車部隊に大きな被害を与えていたのでした。

そんな中、唯一の救いは戦車部隊の後方に、段列と呼ばれる支援部隊が同行していることでした。段列による、傷ついた戦車の修理や防護陣地の急造などの支援があるおかげで、なんとか戦車部隊は崩壊を免れていたのでした。ところが、戦車の価値を認めようとしない関東軍の参謀は、時折前線に現れては無茶な命令を強要します。

その参謀・各務中佐だけでなく関東軍の司令部には、いまだに歩兵こそが重要だとする考えが染みついていました。そして戦車や段列などに無駄な機動力を使うなら、火炎瓶を持って戦車に突撃しろとさえ言い出す有様でした。

しかし戦場の実情を知る室尾中尉や、段列を率いる上川大尉には、それは受け入れられる考えではありませんでした。こうして関東軍は、下士官や兵士の能力は高いのに、司令部がそれを活かすすべを知らないために、苦境に陥ることになるのでした。

苦しい状況の中、室尾中尉と上川大尉は戦場に残された敵のBT戦車の鹵獲を目論みます。その作戦も多くの兵士の犠牲を生みましたが、BT戦車を確保したことで室尾中尉たちは今後の作戦方針を立てることができました。
日本軍よりもはるかに強力な砲塔を装備したBT戦車ですが、戦い方を工夫すればそれに対抗できると室尾中尉は気づきました。また試製1号砲戦車の砲撃なら、BT戦車を撃破できる力があることもわかりました。

補給も滞りがちで、部隊のやり繰りにも苦労する中、司令部は歩兵を主体にした反撃作戦を実行します。しかし、その準備の間にソ連側も部隊が補強されており、戦線は膠着状態に陥りました。

そんな状況を変えたのが、国内から戦いの実情調査に赴いていた秋津少佐と、戦力補強のために派遣された段列部隊を指揮する寺岡大佐と陣内大尉でした。彼らの力で、傷ついた戦車の修理と鹵獲した敵戦車の戦力としての利用。さらに歩兵部隊を支援する砲戦部隊を支援するために行われた渡河作戦では、重機を活用してわずかの時間で渡河ポイントを築き上げました。

そのおかげで、日本軍はソ連軍をハルハ河西岸まで後退させることに成功しました。しかし、ソ連はさらなる戦力の増強を続けていて、これで戦いが終わったわけではありません。にもかかわらず、日本側は相変わらず部隊の増強が進んでいません。こんな状況で、日本軍はソ連軍の侵攻を食い止めることができるのでしょうか。

とりあえず上巻だけ読み終えましたが、上巻だけでも独立したお話として楽しめるようになっているのがよかったです。
これまでの戦いも激しかったですが、この巻からはより激しい戦いが繰り広げられています。それなのに、相変わらず独断専行を続ける関東軍と、各務中佐に代表される無能な司令部。敵の戦力は脅威ですが、それ以上に味方の無知と傲慢が、戦いをより苦しいものにしているように思えます。
覇者の戦塵1937 黒竜江陸戦隊 (C★NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第6作、「黒竜江陸戦隊」を読み終えました。

C-NOVELSの合本版で読んだので、先に「黒竜江陸戦隊」の状況を生むことになった短編「断章 蹶起」から読みました。
この世界では、史実で起きた二・二六事件が未遂に終わり、起きなかったことが判明します。それが後の歴史に、史実とは違う影響を与えていくことになります。

学生時代に、日本の近代史に興味が持てなかった・・・というか授業でまともに取り上げられなかった^^;こともあり、二・二六事件周辺で起きた事件について知らないことばかりでした。これでは小説との違いを楽しめないと思い、Wikiの情報でざっと概要を調べました。すると小説では相沢中佐に斬りつけられながらも、一命を取り留めた永田軍務局長は、本来の歴史ではこの時に命を落としていたことも知りました。

話が本の内容からそれましたが、続いては「黒竜江陸戦隊」についてです。
前作は謀略がメインで、技術的な話が少なかったですが、今回はこれまでとは異なる設計思想で作られた、新造艦隊にまつわるお話が描かれていました。

柳井大尉は、黒竜江で測量を行う砲艦に同行して、新造艦の航行に伴う問題点を調査していました。ところが、その船は陸軍の移動に利用されることになり、測量隊は船を奪われ足止めされることになりました。それで柳井大尉は、上陸した周辺の整備が進んでいることに驚かされました。それは満州に設立された建設重機会社・奉天製作所の作り上げた数々の重機のおかげでした。そして大尉は、技師の岡崎と知り合うのでした。

そんな柳井大尉に、至急内地に戻るようにという連絡がありました。断章で描かれた歴史の変化によって、日本国内の政治体制に大きな変動があったのです。その結果、これまで意見が入れられることのなかった佐久田中佐の構想が、実現することになったのです。

佐久田中佐が柳井大尉を呼び戻したのは、海防艦の急速造艦演習が行われることになったからです。徹底した構造の簡略化とブロック構造による共通化。それによって中佐は、なんとわずか3ヶ月で1隻の艦艇を建造する目処を立てていました。
また効率化を図る一方で、先の海戦で得られた戦訓を活かし、簡単には沈まない船を建造しようとしていたのでした。

その頃、黒竜江では海軍陸戦隊の指揮官・小早川少佐と特務機関の陣内大尉と合流していました。彼らは、ソ連の後押しで馬軍は密かに戦闘の拠点を構築していたのでした。さらに陸軍の石原大佐とも会合した小早川少佐は、黒竜江の馬軍根拠地を叩くために海軍陸戦隊を投入して欲しいと要請されました。

何かと反目する海軍と陸軍が、連携して作戦を遂行することは難しいと小早川少佐は考えますが、日本国内の政治体制の変化によって、それが一気に実現することになりました。対中国政策を転換しようとする宇垣大将が、首相に任命されることになったからです。それによって中国との関係を改善すると共に、対ソ連に向けての体制を整えたいと石原大佐は考えていたのでした。

その頃、陣内大尉と趙を中心とした部隊は、馬軍の根拠地を探し出そうとしていました。かって捕虜にしたアメリカ人、シャオ・フーの姿もその中にありました。シャオ・フーはかって仲間であった劉氷烈に見捨てられて、口封じのために殺されかけたところを運良く生き延びて、それ以後は陣内たちの協力者になっていたのでした。

途中、劉に部隊の動きを知られて危機に陥りましたが、それを何とか切り抜けて陣内たちは根拠地の情報を得ました。
さらに陣内は、北安の町で満州軍小校の嘉門寺から、馬軍の情報を得ようとしました。しかし、嘉門寺は簡単には自分の手の内をみせません。その間に、再び南満州で日中両軍が激突していました。

戦線が拡大する中、石原大佐の元に武藤大佐が現れました。黒竜江の馬軍が動いたという知らせが届いたのです。武藤大佐は、増援部隊の派遣を求めますが、石原大佐はそれをそのまま受け入れるつもりはありませんでした。部隊は派遣するが、それは陸軍の部隊ではなく、海軍を派遣するように申し入れろと言うのです。

こうして小早川少佐の率いる、海軍陸戦隊が陣内大尉の部隊と協力して作戦を遂行することになりました。戦いに投入された新造艦・禄剛の支援もあり、彼らは根拠地の破壊に成功しました。ところが、小河子島で作戦行動中の陸軍部隊から、支援要請が入りました。馬軍の攻撃を受けて、出撃した部隊が孤立してしまったというのです。

陸軍との関係を考慮すると、小早川少佐らにこの要請を断るという選択肢はありませんでした。こうして1つの戦いを終えたばかりの小早川少佐たちは、続けて新たな作戦を実行することになりました。戦いはかなり苦しい状況になりそうでしたが、馬軍とそれを支援するソ連との無線連絡をシャオ・フーが傍受したことから、敵部隊の兵員輸送に利用されている汽船を利用して、敵の懐に飛び込みました。こうして小早川少佐らは、孤立した陸軍部隊の救出に成功したのでした。

こうして1つの戦いは終わりましたが、すべての戦いが終わったわけではありません。物語の終了間際、廬溝橋で戦闘が発生したようです。それが次の戦いに、どう影響してくるのでしょうか。
覇者の戦塵1933 謀略熱河戦線 (C★NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第5作、「謀略熱河戦線」を読み終えました。

この巻では、先に読んだ「オホーツク海戦」に登場した陣内大尉(この巻では中尉)の視点から、時代を昭和7年へと遡って物語が展開しました。

その当時、陣内中尉は北満での警備任務に就いていました。アメリカで暮らしたこともある陣内中尉は、一般的な日本人とは異なる国際感覚を持っていて、現在の満州政策にも疑問を持っていました。そんな独自の感覚を持つ陣内中尉は、連隊長と対立することも多く、持てあまされたあげく、別の連隊へと転属させられることを繰り返していました。

そんな中、とある村で補給を行おうとしていた武装勢力を補足した中尉は、村からの武装勢力への物資の提供を阻止すると共に、数人の捕虜を得ました。その中にいたのが、「オホーツク海戦」でも顔を見せた趙でした。捕虜となった趙から、中尉はその当時は死んだと考えられていた馬占山将軍が生きているという情報を得ました。

馬将軍は、以前は満州に帰順していたのですが、実権はすべて日本が握っていたため、それに失望して再び抗日勢力としての戦いを再開させていたのでした。中尉は、その情報を上官へと伝えます。そして、この趙を仲立ちにして再び馬将軍と接触して、もう一度馬将軍を帰順させようと考えたのでした。

しかし、上官はその案に関心を示さないばかりか、馬将軍が実は生きているという情報は、隊内で煙たがられている中尉以外は既に知っていることでした。そして部隊の関心は、北満州ではなく、いずれ行われる熱河省への進撃にあったのでした。

そんな中、とある事情で鹵獲した大量の兵器を、部隊が持てあましていることを知りました。中尉はその処理を請け負うという名目で、司令部の知り合いに自分の立てた作戦を進言しよう考えたのでした。こうした部隊を離れた中尉は、新京へと向かいました。そこで中尉は、旧知の仲である綴喜大尉と再会しました。自分の考えを大尉に伝えた中尉は、さらに奉天にまで足を伸ばします。

その目的は、そこに造られたトラクター工場の視察でした。そこで陣内中尉は、「激突上海市街戦」に登場した桑原という男と出会いました。桑原は今は、満鉄の職員として働いていました。この工場には、出向という形で参加していたのです。

そこで中尉は、製造したトラクターで北満州を開拓する計画の実現性について桑原に問いました。しかし、その結果は中尉の期待したものではありませんでした。この時代の満州の製造技術では、まだ中尉の要望を満たすトラクターを量産することは不可能でした。

再び新京に戻った中尉は、いきなり下士官に呼び止められました。彼と極秘に会いたいという者がいるのです。密かに連れ込まれた場所で、中尉は関東軍参謀の宮地中佐と会うことになりました。中尉のプランを知った宮地中佐は、その実行を中尉に任せるというのです。

監視役としての久喜曹長を伴い、密かに中尉は北満州へと帰ります。そこで趙と合流した中尉は、3人で馬将軍との会見を目指して行動を開始しました。ところが、中尉に与えられたこの任務は、宮地中佐の仕組んだ罠でした。中尉が馬将軍との会見を果たした時、久喜曹長は将軍を暗殺するために送り込まれたのです。

さらに中尉たちの後方からは、曹長を支援するための部隊も送り込まれていたのでした。真相に気づいた中尉でしたが、それを曹長に悟られて危機に陥ります。しかし、中尉に惚れ込んだ趙の協力もあり、なんとか中尉は危機を乗り越えたのでした。

そして中尉は、司令部からの呼び出しで、再び新京へと向かうことになりました。新京で再び綴喜大尉と再会した中尉は、そこで石原大佐と上村尽瞑と出会うことになりました。石原大佐は、ジュネーブで行われる国際連盟の討議に参加する途中で、ここに立ち寄ったのでした。さらに、その場にフリー・ジャーナリストの日下部も顔を出しました。このあたりの展開は、旧知の登場人物が次々と不思議な縁でつながっていく感じで面白かったです。

そして陣内中尉は、熱河戦線へと参戦することになりました。とはいえ、中尉が指揮するのは攻撃部隊ではなく、それを補助する段列と呼ばれる支援部隊でした。しかし、悪路ばかりの行軍が続く中、先行する戦車部隊は故障が続発して、中尉の率いる部隊の支援がなければ、かなりの数の部隊が戦線から離脱してしまうところでした。

前進を続ける部隊は、やがて敵の激しい抵抗に遭遇しました。そこには地雷や対戦車銃までが用意され、戦車隊の行く手を遮っていました。そして中尉たちは、これまで内部分裂していた中国国内勢力が協力していることを知るのでした。

その頃、ジュネーブに到着した石原大佐は、そこで密かに外務省欧米局長・東郷と会見していました。そこでは中国の背後でソ連が将来的な利権の獲得を目指して、動いていることが確認されました。その上で東郷は、早急に熱河作戦を終了させる必要があること、関東軍の独断専行を阻止することを石原大佐に求めたのでした。

そのための手段として、石原大佐は日下部を利用することにしました。宮地中佐が中心となって進めている、清朝皇帝溥儀を満州の皇帝にまつりあげるという謀略を教えたのです。この情報をリークすることで、石原大佐は関東軍を弱体化させようと考えていたのでした。

一方、停滞する熱河戦線では陣内中尉らが、防御の手薄な場所から渡河作戦を実行して戦局を動かそうとしていました。
ところがそこに、宮地中佐が現れました。そして中尉らに、関内へ侵攻しろという無茶な作戦を実行するように強制しようとします。石原大佐のリーク情報によって、謀略を主導してきた宮地中佐の立場が微妙になり、中佐は焦っていたのでした。

しかし、陣内中尉らはあくまでも当初の作戦を実行しました。その戦いの中、中尉は再び久喜曹長と出会いました。曹長は中尉たちの作戦を妨害するために、戦場に潜り込んでいたのです。それを撃退した陣内中尉は、自らの手で曹長を銃殺したのでした。

というわけで、今回は熱河戦線の戦いと、その背後にある謀略が描かれました。「オホーツク海戦」では、陣内中尉が唐突に登場した感じでしたが、石原大佐との関わり、信頼できる仲間である趙との出会いなども描かれていて、抜けていたピースがうまく埋められた感じでした。
覇者の戦塵1936 第二次オホーツク海戦 (C★NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第4作、「第二次オホーツク海戦」を読み終えました。

前作において、敵の目的を阻止して、戦略的な勝利を手にした日本軍。しかし、それで戦いは終わりではありません。ソ連の次なる作戦が、日本軍の意表を突いた形で進行していたのでした。

巡洋艦・鳥海から発進した水偵に乗り込んだ塚田大尉は、何度目かになるペトロパブロフスクへの偵察を遂行していました。その途中で大尉は、流氷面に残された謎の痕跡を目にしました。そればかりか、氷に閉ざされて動けない艦隊を偵察する途中で、謎の航空機の攻撃を受けたのでした。

なんとか敵機を振り切り、母艦へと帰還した塚田大尉は、撮影した写真に思わぬものが写っていたことを知らされました。
日本軍の哨戒網をかいくぐって、ソ連は砕氷船をペトロパブロフスクへと派遣していたのです。そして港に釘付けにしたはずの艦隊が、本来の目的地であるニコライエフスクを目指して移動を開始しようとしていることを察知したのでした。

時を同じくして、幌筵海峡に進出していた日本海軍は、密かに潜行した特殊部隊と潜水艦隊の攻撃を受けて、大きなダメージを受けていました。輸送船団の移動を支援するために、多面的な戦略が展開されていたのでした。残り少ない艦艇を集めて、日本海軍の必死の輸送阻止作戦が始まります。

その頃、海軍陸戦隊の配備を進めていた小早川大尉は、陸戦隊の訓練を行っていました。ところが上記の影響を受けて、行おうとしていた訓練を中止して、大尉らが乗った船は急遽大湊へと寄港することになりました。そこで装備を調えた上で、再び出港することになるのです。

準備が整うまでの間、思わぬ時間を得た小早川大尉は、そこで陸軍の寺岡大佐と出会いました。寺岡大佐は有能な指揮官でしたが、小河子島での敗戦の責任を負わされ、予備役へと回されていたのでした。その原因となったのは、関東軍から派遣されてきた参謀のごり押しで、無茶な作戦を遂行させられたからでした。その参謀というのが、第1作にも登場した困ったちゃん^^;各務大尉でした。

陸軍の指揮官を、海軍の指揮官として迎え入れることは異例のことでしたが、小早川大尉は寺岡大佐の手腕を高く評価していました。そして、せっかくの人材を陸軍が活用しないならと、寺岡大佐を陸戦隊の顧問として迎え入れたのでした。

後半の2章では、オホーツク海での戦いが描かれました。その中でも、駆逐艦・沼風の戦いぶりが詳細に描かれます。
今回の戦いでは、ソ連の極東艦隊との戦いも重要ですが、それ以上に凍結や流氷との戦いでもありました。激しい戦いの中、戦線から離脱したソ連艦艇は流氷に閉じ込められたことが原因で行動不能に陥りました。

そして味方の転進によって孤立した沼風もまた、流氷に自由を奪われて危機に陥ります。しかも、その側には戦闘力は失っているとはいえ、ソ連の輸送船と駆逐艦がいます。さらに追い打ちをかけるように、2隻の駆逐艦が沼風に迫ります。
そこでやむなく、艦長は沼風に残された最後の魚雷を使って、輸送船の撃破を命じました。輸送船が撃沈されたことで、救援に向かっていた駆逐艦は引き返したのでした。

ということで、第二次オホーツク海戦に日本海軍は勝利しました。しかし、多数の被害を出したものの、輸送船の半分を撃沈しただけにとどまりました。今回の戦訓を活かして、さらなる装備の強化と戦略の見直し、まだ試作段階でしかないレーダーの実用化など、克服すべき問題は山のようにありそうです。
オホーツク海戦―覇者の戦塵 (C・NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第3作、「オホーツク海戦」を読み終えました。

これまでの物語では、満州を中心に話が動きましたが、「オホーツク海戦」では米ソの動きも活発化してきます。その発端となったのは、駆逐艦・島風が遭遇した不審な船でした。座礁したその船は、島風の接近をしると強引に逃走を図ろうとします。そして、それが不可能だと知った時、その船は自沈したのでした。

表向きはノルウェー船籍のその船は、実はソ連の船でした。その積み荷は、アメリカから輸送される大量の武器弾薬だったのです。米ソは表面的には満州の動向を見守りつつ、背後では黒竜江省軍を援助していたのです。そして物語が進むにつれて、アメリカの援助は物資だけでなく、遊撃戦を指導する人材にも及んでいました。

海軍陸戦隊の小早川大尉は、黒竜江での戦いで敵対する馬占山軍の背後にソ連がいることを知りました。ソ連は民間人の捕虜を、精鋭部隊で奪還しようとします。しかし、それは小早川大尉らの活躍で阻止されました。その捕虜こそが、アメリカが送り込んだ工作員だったのでした。

戦いの後、小早川大尉は日本国内へと帰還しました。これまでの戦いで強襲揚陸艦の必要性を痛感した小早川大尉は、舞鶴へと立ち寄り、そこで改装されている艦艇を視察させてもらうことにしました。そこで小早川は、新たな艦艇の設計者である佐久田少佐と出会うのでした。

佐久田少佐は、これまでの日本海軍の方針とは違う、全く別の考えを持っていました。それは1つ1つの艦艇を研ぎ澄ませるのではなく、極力部品の共通化や工作の用意さに主眼を置いた設計でした。どんな艦艇も、いざ戦いに出れば損傷を免れません。また戦況が長引けば、未熟な工員が作業に加わることになります。だからこそ、補修・改修が容易で、熟練者でなくても作ることができる船が必要だと、佐久田少佐は考えたのでした。

とはいえ、佐久田少佐も元々今のような考えをしていたのではなく、作中にありながら本来の歴史を知っているのではないかと思われる、上村尽瞑との出会いから今の基本構想を持つようになったのでした。今はまだ小さな動きでしかありませんが、小早川や佐久田のような人間の登場が、これからの未来に大きく影響してきそうですね。

小早川と同じく、満州にいた石原大佐も国内へと帰ってきていました。そこで石原大佐は、陸軍の永田軍務局長の力を借りて海軍を動かして、満州に干渉しようとする米ソの動きを牽制しようとしていました。なんと石原大佐は、陣内機関と呼ばれる独自の諜報網を作り上げていました。

陣内大尉を中心としたその部隊は、独自に満州で工作活動を行っているグループを追跡していました。長い追跡の末、陣内らは工作員の1人を確保しますが、敵は工作員の口をふさごうと動きます。敵に情報を与えぬために、自らの命が危機にさらされていることを知った工作員は、陣内たちへの協力を約束するのでした。

物語の終盤は、オホーツク海での戦いでした。アメリカから武器を輸送してくる船団を護衛するために、ソ連の極東艦隊が動きました。それに応じて、日本海軍もオホーツク海に戦力を投入します。ところが、運悪く襲った台風のために、艦隊は大きな被害を受けてしまいます。そして戦いは、ソ連の巡洋艦と日本の駆逐艦との戦いへと突入します。双方に少なくない被害を出した戦いでしたが、日本海軍は物資の輸送船をペトロパブロフスに追い込み、戦略的な勝利を手にしたのでした。

とはいえ、これは前哨戦にすぎません。これからの戦いは、どのように推移することになるのでしょうか。

また同時収録の短編「昭和十年十一月 東京」では、これからの戦いの土壌を作り上げる密会が進行していました。井上大佐と共に、外交官の東郷局長と会った佐久田は、期限切れが間近に迫った軍縮条約を延長させると共に、大艦巨砲主義の海軍上層部を押さえて、将来の航空戦を念頭に置いた防空巡洋艦を構想を推進しようとしています。

こういった動きが、どんな方向に歴史を動かしていくことになるのか気になります。
覇者の戦塵1932 激突上海市街戦 (C★NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第2作、「激突上海市街戦」を読み終えました。今回読んだのは、前作の「北満州油田」と合本になったものでしたので、本編に加えて追加の短編「断章 廟行鎮の敵の陣」もあわせて読みました。

前作では、実際に歴史にはない、北満州油田の発見が描かれました。それを受けて、前作にも登場した満鉄の技術員・南部は、石原中佐の計画を聞いて満州に日本独自のトラクター生産施設の建造に向けて考えをまとめていました。ところが、石原中佐と再会した南部は、当面満州で建造するトラクターは国産品ではなく、アメリカの代理店を通して工場を誘致する方向で進めるように指示されます。

独自に日本国内へともどり、日本の現在のトラクターの開発上を自らの目で見てきた南部は、今はエンジンに問題があるが開発に当たっている工員には活気があり、将来的には有望だとの感触を得ていたのです。それだけに、突然の石原の方針転換に南部は戸惑います。しかし石原に押し切られた南部は、アメリカからの購入の話を進めるために、代理店のある上海へと向かうことになるのでした。

上海には、前作にも登場した新聞記者の日下部がいました。前作では新聞社の社員であった日下部でしたが、今では会社を辞めて、独自の調査で得た情報を日本だけにとどまらない、海外の新聞社などにも提供しているのでした。上海で日下部は、謎の僧侶・上村尽瞑の後を追っていました。その頃の上海では、日貨排斥という形での抗日運動が激しくなっていました。尽瞑に関わったことで、日下部は実際の歴史では起きていた事件が、"起きなかったことを目撃"することになるのでした。

日中の緊張が高まる中、ついに日本と中国の戦いが始まろうとしていました。国内が混乱している中国を、日本軍の上層部は軽く見ていました。しかし、彼らの読みは完全に外れました。幾多の戦いをくぐり抜けてきた十九路軍が日本軍の前に立ちはだかったのです。

中国軍は装備や補給で日本軍に劣るものの、近代的な陸戦の経験と士気は高いものがありました。そして戦端が開かれたものの、日本軍は巧みに地形を活かして縦に深く守る十九路軍に苦戦することになるのでした。それが結果的に、国際連盟が今回の日本軍の満州から始まった行動を承認しない動きへとつながります。

というわけで、「北満州油田」の時とは異なり、今回は物語の前半は南部が、中盤以降は日下部が物語の目撃者として設定されていました。日下部の登場が増えたことで、前作よりも謀略ものの色合いが濃くなっていました。上海での日下部の行動は、スパイ小説を読んでいるような気がしました。

「断章 廟行鎮の敵の陣」では、中国に投入された日本陸軍の苦戦ぶりが、工兵の視点から描かれました。敵を侮り、日々進化する戦い方の研究を怠ったことが、現場の兵士たちの苦闘につながっていることがわかる重いエピソードでした。
覇者の戦塵1931 北満州油田占領 (C★NOVELS)一時期は、書店の新書棚を埋めるほどの作品が発売されていた、架空戦記とかif戦記と呼ばれるジャンルの作品。個人的にも、荒巻義雄さんや川又千秋さんの作品を読みあさっていた時期もありましたが、いつの間にかブームが去って本屋で見かける作品数も減っていきました。

ところが最近、「航空宇宙軍史」の谷甲州さんが書かれた「覇者の戦塵」というシリーズが、今も続いていることを知りました。シリーズ最初の作品が発売されたのが1991年(!)で、その後も間隔を開けながらもシリーズは継続して、36巻に渡って作品が継続されていたのでした!

ブームに乗って刊行された作品の中には、未完に終わった作品も少なくないと思いますが、まさか今も現役で続いているシリーズがあることに、そしてそれを書いているのが谷甲州さんだったことに、2つの意味で驚きました。

谷甲州さんの作品は、早川文庫で発売された「航空宇宙軍史・完全版」を買いそろえて、じっくり楽しんでいる途中なのですが、この「覇者の戦塵」シリーズもなんだかとっても気になります。とはいえ、シリーズがスタートしたのが90年代なので、過去の作品はすでに絶版になっています。電子書籍としては発売されているようですが、やっぱり紙の本で読みたいな〜と思ったので、今回は図書館のお世話になりました。

借りた本では、過去に別々の本として発売された作品が、1つにまとめられて短編を追加したものでした。元々は独立した作品だったということで、今回は「北満州油田」を読み終えたところで感想を書きます。

物語の舞台となるのは、昭和6年の満州です。このあたりの歴史には疎いのですが、満州事変が起きた年らしいです。
そこで物語の語り手となる技術者・南部は、関東軍の参謀・石原莞爾から、ある仕事を依頼されていました。それは北満州に存在するらしい大油田の調査でした。後年、この油田は発見されることになるのですが、それは実際の歴史では30年も先の話になります。

それがもし、第二次世界大戦前に日本によって発見されていたら・・・というのが、このシリーズで展開されてゆく架空の歴史です。

油田探索がメインということもあり、架空の新兵器が登場するわけではありませんが、世界恐慌後の各国のそれぞれの事情と思惑、作中でその後の実際の歴史を知っているかのように語る、上村尽瞑という不思議な存在。数々の戦いをくぐり抜けてきた秋津中尉と、陸軍大学出身のエリートで頑迷な各務大尉の意見の対立。などなど、さまざまな要素が組み合わされて、いっけん地味そうな内容を面白く読むことができました。

物語は、北満州の油田の開発が始まったところで終わりますが、この発見によってこれからの歴史がどう変わってゆくのか気になります。
航空宇宙軍史・完全版一  カリスト-開戦前夜-/タナトス戦闘団 (ハヤカワ文庫JA)今年最初に読み終えたのは、谷甲州さんの「航空宇宙軍史・完全版(1)」の後半に収録されている、「タナトス戦闘団」でした。

「カリスト - 開戦前夜 -」では、カリスト側からの視点だけから物語が描かれているので、相手の動きが読めずに緊張感がありました。「タナトス戦闘団」では、多少は航空宇宙軍側の動きも描かれていました。しかし、ダンテ隊長を中心とする現場の物語になっていて、上層部の動きや考えは想像するしかないところが面白かったです。

物語は、「カリスト - 開戦前夜 -」の最後で描かれたダンテ隊長の月への"出張"から始まります。地球との開戦に先立ち、外惑星連合は地球の後方攪乱のために、月にある工場の襲撃を計画していたのです。その事前調査のために、ダンテ隊長は月にやって来たのでした。ところが、現地で協力してくれるはずの駐在武官・柏崎中佐はなぜかダンテ隊長に非協力的な態度です。

実戦部隊を指揮することではエキスパートのダンテ隊長ですが、諜報に関しては完全にアマチュアです。あっという間にダンテ隊長は、航空宇宙軍の警務隊に拘留されてしまったのでした。自白剤を用いた過酷な尋問が行われましたが、ダンテ隊長はそもそも重要な情報は握っていません。現地での協力者の存在を突き止めたところで、ダンテ隊長は解放されたのでした。

副隊長のランスに救出されたダンテ隊長でしたが、今回の計画があまりに不可解なことに疑問を持ちました。さらに尋問中に、自分たちが本来の目的を隠すための囮として利用されたらしいこともつかんでいました。密かにカリストに帰還したダンテ隊長は、新たな幕僚会議議長に就任したミッチナー将軍が、山下准将の指揮下にある陸戦隊を解散させるために今回の計画を実行したのではないかと気づくのでした。

しかし、やられっぱなしで引き下がるようなダンテ隊長ではありません。わずかな手がかりから、ダンテ隊長の協力者となったシャンティという謎の人物を探し出そうとします。その合間に、柏崎中佐のもとで航空宇宙軍との二重スパイとなった緒方優という女性もお話にからんできて、物語により奥行きが出てきます。

そしてついに、外惑星連合は地球に対して宣戦布告します。それと同時に、外惑星連合の艦隊、そしてダンテ隊長率いるタナトス戦闘団の活動が開始されるのでした。

巻末の解説にもありましたが、この「タナトス戦闘団」は冒険小説的なのりで楽しめる作品でした。政略が中心だった「カリスト - 開戦前夜 -」と比べると、アクションシーンが多いですが、細部の緻密な描写や設定が物語に説得力を与えていると思いました。
続く第2巻では、また別の視点から物語が描かれるようなので、どんな内容なのか楽しみです。(^^)
航空宇宙軍史・完全版一  カリスト-開戦前夜-/タナトス戦闘団 (ハヤカワ文庫JA)昔読みたいと思いつつ、今まで読まずに来てしまった谷甲州さんの「航空宇宙軍史」が、大幅な加筆修正されて発売されたと知り、ようやく読むことができました。

今回の刊行では、従来2冊の本として発売されたものが1冊になって発売されました。そのため1冊の単価が1,000円を越ているのが、ちょっとお財布に辛いものがありました。(^^; でも、1冊の中に2冊分の内容が収録されているので、2冊の本を買ったと思えばいいかと割り切りました。(笑)

本来なら、1冊読み通したところで感想を書くのですが、2冊分の内容が収録されていることもあり、1冊読み終えるごとに感想を書こうかと思います。

物語の舞台は、2100年間近の太陽系です。その時代、人類は資源を得るために太陽系の外惑星まで進出していました。
開発が進んだ結果、外惑星はそれぞれに自治権を主張して、外惑星を支配下に置きたい地球・月連合との溝が深まっています。そんな中、外惑星は同盟を結び、経済的・軍事的にはまだ大きな差がある地球・月連合に対抗しています。

特に戦力の点では、外惑星は地球からのさまざまな規制により、大規模な宇宙船を建造することを許されていませんでした。航空宇宙軍が本気で外惑星を攻略してくれば、外惑星には勝ち目はありません。しかし、地球や航空宇宙軍からの締め付けが厳しくなる中、外惑星は密かに航空宇宙軍に対抗するための準備を進めていたのでした。

「カリスト -開戦前夜-」では、外惑星連合と地球・月連合との戦いが始まる直前の様子が描かれました。カリスト警備隊のダンテ隊長は、怪しげな取引をした男を宇宙港で追い詰めました。自殺を図ろうとした男の所持品から、外惑星連合の戦力に関する機密情報が発見されました。そこには、上層部の者しか知り得ない情報が含まれていました。

外惑星連合としてまとまっていても、それぞれの地球や航空宇宙軍に対する対応には温度差がありました。経済的に大きな力を持ちつつあるカリストやガニメデでは開戦派が主流となっていましたが、まだ開発途上で力の弱い土星のタイタンやレアは消極的な態度を取っています。

そんな中、航空宇宙軍のフリゲート艦がカリストを査察すると称してやって来ました。強大な武力を背景に、航空宇宙軍は外惑星連合の力を削ごうと目論んでいるようです。しかし、独立した自治権を持つ外惑星に航空宇宙軍がこのような査察を行うことは主権を侵されることになります。フリゲート艦が近づく中、外惑星連合はこれにどう対応するか、決断を迫られることになるのでした。

上層部を代表する登場人物として、エリクセン准将を中心に物語が描かれます。戦略情報部の代表であるエリクセン准将は、カリストでは数少ない開戦反対派でした。今の状況で外惑星連合が航空宇宙軍と戦っても、勝算はないとエリクセン准将は考えていました。しかし主流派の状況は、開戦に向かって動いていきます。それを回避するために、エリクセン准将は政府上層部に対するクーデターを計画していたのでした。

最初のクーデターは、航空宇宙軍の予想外の方針転換によって中止されました。エリクセン准将が提案した、地球・月連合への重水素の供給制限が予想外に地球経済に大きな動揺を与えたからです。地球側は、外惑星連合がこれまでに要求した9項目の要求のうち2項目を受け入れ、さらに他の項目についても話し合う余地があると通知してきたのです。

これによって、状況は大きく変わるかと思いきや、地球・月連合が提示した話し合いは、いつまでたっても開始されるめどが立ちません。会議のための日程さえ決まらないのです。今回このような提案をしたのは、地球・月連合が自分たちの経済を立て直すための時間稼ぎにすぎなかったのです。

それを察知した外惑星連合は、再び開戦に向けて動き始めます。そんな中、それでもエリクセン准将は、あくまでも戦うことを回避しようとします。そしてついに、クーデターを決行してしまうのでした。准将の率いる部隊は小規模ながら、ポイントを押さえた作戦で、政権の奪取に成功したかに見えました。しかし、状況は准将の思い描いたようには動きませんでした。

クーデターの実行で、幕僚会議議長であるダグラス将軍が殺害されたことで、見方に引き込んだはずの政治家の支持を、思った以上に得ることができなかったのです。自らの敗北を悟ったエリクセン准将は、カリスト防衛軍の今後を友人の山下准将に託して、自ら命を絶ったのでした。

クーデターの失敗により、前政権が復活すると共に、ダグラス将軍よりも好戦的なミッチナー将軍が幕僚会議議長の座に就くことになりました。その結果、外惑星連合は開戦へと向かって動き始めることになります。

というわけで、最初の1作を読み終えました。その感想は、もっと早く読んでおけばよかった!・・・でした。(^^;
近未来が舞台ということもあってか、作中のディティールが細やかで説得力が感じられました。個人的にツボだったのは、輸送船を仮装巡洋艦へと改装する計画の詳細が描かれていたこと、重水素禁輸という作戦を実行する前にそれが相手にどの程度の経済的な影響を与えるかをシミュレーションしていることなどです。

作戦の実施面をダンテ隊長の視点から描き、上層部の動きをエリクセン准将から描いていくという構成も、物語のスケールの大きさが感じられました。今回の完全版では、これまでに発表された作品ができる限り作中の年代に沿った形で刊行されるということですので、この先も楽しみです!(^^)