日々の記録

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陋巷に在り (6) (新潮文庫)酒見賢一さんの「陋巷に在り」第6巻を読み終えました。

この巻では、ようやく顔回と孔子が動きました。子蓉(しよう)に操られた妤(よ)は、魯の都の雑人溜りから発生した暴動を楽しんでいます。妤の移動に合わせるかのように、騒乱の発生する場所も移動していきます。そこについに、顔回が現れました。顔回の前に立ちふさがったのは、守り人という使命すら忘れた五六でした。

そんな五六を、顔回はいきなり殴りつけました。普通の状態なら、体術に優れた五六が顔回の攻撃を受けることはあり得ません。しかし今の五六は、妤を通じて子蓉の媚術に落ちています。そんな状態だからこそ、顔回の打撃をかわすことができなかったのでした。

顔回に殴りつけられて、五六はようやく正気に戻りました。そして顔回は、ついに妤と対面しました。わずかの間に、妤の姿は変わり果てていました。子蓉の蠱術に落ちたことで、妤の生気は急激に使い尽くされていたのです。顔回はそんな妤を通して、再び子蓉と対決することになりました。

しかし妤を通しての戦いでは、子蓉に勝ち目はありませんでした。子蓉自身、そんな攻撃で顔回が倒せるとは思っていませんでした。しかし、妤が顔回の命を奪おうとした時、顔回はその攻撃を避けようとしませんでした。その一撃は、五六によって防がれましたが、顔回は妤によってなら命を落とすこともやむを得ないという覚悟がありました。それがさらに、子蓉を腹立たしくさせるのでした。

こうして顔回は、妤を救い出しました。しかし妤は消耗が激しく、このままでは死を免れません。そこで顔回は、妤を顔儒の里へと運ぶことにしました。ところが、その途中で顔回は異変を感じました。顔回は妤を五六に託して、自分は魯の都に残って何かをすべきだと感じたのでした。

その頃、費城の公山不狃(こうざんふちゅう)の元には、大きな革袋が送られてきました。戦いに先立ち、魯が何かを企んでいるようです。袋の中に人がいるのを察知した不狃は、外から袋を串刺しにさせました。その中にいたのは、魯の都で暮らしていたはずの不狃の年老いた両親だったのでした。

それを知った時、不狃は激しい怒りに取り憑かれました。それまで不狃は、費城から積極的に戦いに出ることなく、堅く守りを固めるつもりでした。しかし悪悦の仕掛けた悪辣な呪詛に、不狃は完全に陥ったのでした。そして不狃は、方針を変更して、徹底的に城から攻勢に出ました。その一方で、別働隊として叔孫輒(しゅくそんちょう)を裏道から魯の都へと向かわせます。

これに対する子路は、徹底した積極策で費の意表を突こうとします。当初の予定通り、不狃が守りをかためていれば、子路の無茶な作戦も効果を上げたかもしれません。しかし、不狃が城から出て戦ったことで、子路に率いられた魯軍は行動の自由を制限されて、不狃に攻め込まれることになったのでした。

不狃に率いられた部隊は、鬼神のような戦いぶりで魯軍を圧倒しました。そしてなんと、不狃の部隊は敵の部隊を強引にくぐり抜けて、魯の都へと迫ったのでした。子路に率いられた部隊の中では、子服の部隊のみが叔孫輒の別働隊に気づいていました。彼らは叔孫輒の部隊を追いますが、先行する部隊に追いつくことができません。

そして多くの兵を派遣して、警備が手薄になった魯の都が新たな戦場となりました。先に都に到着した叔孫輒の部隊は、貴族の屋敷が集まる一角を襲い、掠奪に走ります。それに遅れて、別方向から不狃の部隊も到着しました。不狃の部隊は疲労困憊しているはずなのに、鬼神に取り憑かれているためか疲れを知らない戦いぶりをみせました。

魯の都が攻め込まれることを察知した孔子は、定公や孟孫・叔孫・季孫と共に季孫の屋敷へと避難します。それを執拗に不狃が追い詰めます。そんな不狃に、孔子は自ら武器を手に立ち向かいました。そして孔子の放った矢によって、不狃にかけられていた呪術がとけました。それと共に、不狃とその兵を駆り立ててきた、異常な力は失われたのでした。

そこへ、ようやく軍を立て直した子路が到着しました。包囲殲滅されることを恐れた不狃は、叔孫輒と共に裏道を使って費に逃げ延びようとします。ところが、そのルートは子服の部隊が向かっています。費への道を絶たれた不狃と叔孫輒は、わずかな手勢だけを引き連れて、隣国の斉への落ち延びたのでした。

戦いの成り行きを見ていた悪悦は、再び顔回の姿を目にしました。しかし、顔回に気をそらされて、2人の間に戦いは起きませんでした。そして悪悦は、少正卯(しょうせいぼう)の屋敷へと帰ってきました。費兵の侵攻によって、少正卯の屋敷も襲われていました。もちろん悪悦は、それも承知の上でした。混乱の中で少正卯が命を落とせば、悪悦がその代わりを務めることができます。

しかし悪悦の目論見は、子蓉の想像を超えた力に阻まれました。なんと少正卯の屋敷を襲撃した者たちは、子蓉の手で惨殺されていたのです。子蓉の力は、今や悪悦をはるかにしのいでいるようです。しかし、悪悦はその事実を認められずにいます。

というわけで、この巻は前半の顔回と妤、五六の戦い。後半は鬼神のごとき不狃の戦いと、それに応じる孔子の戦いと読み応えがありました。とはいえ、顔回も孔子も自ら積極的に動いたのではなく、基本的に受け身だったのがじれったかったです。(^^;
陋巷に在り〈5〉妨の巻 (新潮文庫)酒見賢一さんの「陋巷に在り」第5巻を読み終えました。

前巻で子蓉(しよう)の蠱術に陥った妤(よ)でしたが、そんな妤を救おうとするうちに五六も子蓉の術に陥ります。妤と違い、五六は媚術に対する心得もあったのですが、妤への恋心と師匠である顔穆を失った隙を突かれて、いつの間にか媚術に取り込まれていました。

この術の怖さは、かかっている本人は自分の意思で行動していると思っていることですね。周囲から見たら異様な行動も、本人にとっては必然だと知らず知らず思わされてしまう。本当に恐ろしい術ですね。

一方、孔子が進める三桓家の3つの城を破壊する謀略にも支障が生じていました。公山不狃(こうざんふちゅう)の希望を受け入れて、費の前に郈城(こうじょう)が破壊されました。ところが、次は費城となったところで、公山不狃が孔子に不信感を持ったのです。

その原因は、悪悦にありました。孔子と公山不狃の連絡役を務める公伯寮は、悪悦の術にかかって役を果たしていませんでした。それどころか、悪悦の策略によって、孔子が公山不狃に無茶な要求をしたように装われていたのです。こうして孔子の知らないところで、孔子と公山不狃の関係はどんどん悪化していたのでした。

しかし、そんな悪悦の行動は、少正卯(しょうせいぼう)の意図するところではありませんでした。しかし、顔儒との戦いで重傷を負った少正卯には、悪悦を止める力はありません。子蓉に翻弄されながら、少正卯はただ歯がみするしかありませんでした。

その間にも、費城の破壊に向けて魯の都からは、費に向けて多数の兵士が派遣されようとしていました。費に大勢の兵士が赴くために、都の警備は手薄な状況になっていました。そんな中、孔子の部下である申句須(しんくしゅ)と楽頎(がくき)は、都の警備を任されていました。

都を見回っていた2人は、雑人溜りと呼ばれる旅芸人や巫祝のたまり場に、不穏な様子があることを知りました。それを裏で操っているのは、なんと妤でした。妤は子蓉の蠱術に完全に取り込まれて、いつの間にか雑人溜りの首領のような立場になっていたのです。そんな妤に協力するのは、妤を通して子蓉の術に絡め取られた五六です。

いよいよ費城に軍勢が向かう中、悪悦は公山不狃の元を訪れていました。悪悦は自らの策略に、公山不狃たちが踊るのを楽しんでいました。そして悪悦は、思い切った策略を公山不狃に話しました。このまま費城に籠城するのではなく、間道を通って魯の都に攻め込むべきだと訴えたのです。

ところが、悪悦の話術に不審を抱き始めた公山不狃は、悪悦の思い通りには踊りませんでした。陽虎の一件もあって、今では費城に立てこもることになった公山不狃でしたが、魯の国に対する忠誠心は失われていなかったのです。自らの術が破れたと知った悪悦は、これまでの態度を豹変させて冷酷な態度を取りました。子蓉と比べると、このあたりが悪悦が詰めが甘いというか、小者な感じですね。(^^;

というわけで、今回は顔回の出番はほぼなく、悪悦の陰謀と子蓉の媚術が状況を思わぬ方向に動かしていきました。
それに対して何も手を打てない孔子や、相変わらずぼ〜っとした生活を続けている顔回が歯がゆいですね。
陋巷に在り〈4〉徒の巻 (新潮文庫)酒見賢一さんの「陋巷に在り」第4巻を読み終えました。今回は顔回は脇に回り、妤(よ)と五六、少正卯(しょうせいぼう)が顔儒の本拠地へと乗り込むお話でした。

前巻で、あれだけの死闘を繰り広げながら、子蓉(しよう)は陋巷にある顔回の家を訪れていました。しかし、あいにく顔回は留守で、顔回の父・顔路が子蓉の相手をすることになりました。下品でとぼけた感じの顔路には、さすがの子蓉も気をそらされて媚術を活かすことができません。

そこへ妤が顔を出しました。妤と対面した子蓉は、顔回を守る力を与えたのはこの娘だと気づきました。妤は単に子蓉の美しさに圧倒されていただけでしたが、そんな妤に子蓉は小さな鏡を与えました。その鏡には、恐るべき蠱術が仕込まれていたのですが、妤はその恐ろしさに気づきません。

妤の異変に気づいたのは、顔穆を失い自らの道に迷う五六でした。五六が妤を見つけたのは、各地からの旅人が集まる陋巷よりもいかがわしい場所でした。そこで妤は、男を誘惑するようなことをしていたのです。五六に救われた妤は、ときどき意識がなくなって知らないうちに出歩くことがあると話しました。それを知った五六は、妤を守ることにしたのでした。

しかし、子蓉の蠱術に操られた妤は、何度も五六の目をかいくぐってみせました。鏡のことは誰にも言ってはいけないと釘を刺された妤は、それを五六にも教えなかったのです。そんな妤のガードに、五六は苦心することになるのでした。

その頃、孔子はかねてからの謀略である、三桓家の3つの城を破壊する計略を実行しようとしていました。事前に季桓氏を動かしていたにも関わらず、3つの城の破壊が議題にあがると議論は紛糾しました。子服景伯の頑強な抵抗に、季桓氏も最初の勢いを失ってしまいました。孔子の謀略が敗れたかと思った時、それを後押しする行動に出たのは、なんと少正卯でした。孔子はそれは危険な道だと知りつつ、自らの謀略をすすめるために少正卯の協力を利用したのでした。

こうして3つの城の破壊が決定しました。しかし、いまだに費城を占拠している公山不狃(こうざんふちゅう)は、簡単にはその決定に同意できません。公山不狃の元を訪れた公伯寮は、先に他の城を破壊した上でなければ受け入れられないと、不狃は断固として譲りません。そんな公山不狃を動かしたのは、公伯寮に同行してきた少正卯の手下・悪悦でした。悪悦は、間違いなく他の城が先に壊されると断言しました。事前にそんな話は聞かされていなかった公伯寮は慌てますが、それを聞いてようやく公山不狃も納得したのでした。

そして悪悦の言葉通り、叔孫武叔(しゅくそんぶしゅく)の城である郈城(こうじょう)の破壊が開始されました。その先頭に立つのは、城の持ち主である武叔です。武叔は少正卯の術に操られて、自らの手で城を壊さずにはいられない精神状態に追い込まれていたのです。その日は雨が降っていましたが、武叔は全くかまわず破壊を強行するのでした。

その頃、少正卯は大胆不敵にも、顔儒の里である尼丘山を訪れていました。そこで少正卯は、太長老から秘礼とされる封の礼を得ようとしていたのです。封の礼とは、天子のみが行うことのできる礼であり、周の時代に行われたのを最後に、誰にも行われていません。それを顔儒が受け継いでいると、少正卯はみていたのです。

もちろん、太長老はそれを本当に知っていても知らなくても、それを少正卯に教える気はありません。あっさりと太長老の前から引き下がった少正卯に、顔儒が放った戦闘犬が襲いかかります。犬が相手では、少正卯は得意の言葉による術を使うことが出来ません。少正卯と犬たちとの戦いは、凄惨なものとなりました。急所は守ったものの、少正卯はこの戦いで大きな傷を負いました。しかし、常人ならば絶対に不可能な戦闘犬との戦いから、なんとか少正卯は生き延びたのです。

というわけで、今回は妤と子蓉の顔合わせと、子蓉が妤に仕掛けた恐るべき蠱術。妤と五六の思わぬつながり。少正卯が孔子に手を貸したことで、ついに実行される城の破壊。そして顔儒の里を訪れた少正卯の死闘と、読み応えのある内容でした。
陋巷に在り (3) (新潮文庫)酒見賢一さんの「陋巷に在り」第3巻を読み終えました。今回は、ついに顔回と子蓉(しよう)が直接対決することになります!

孔子は、前巻での少正卯(しょうせいぼう)屋敷の家宅捜査失敗の責任を取って、自ら自宅に蟄居しています。そのおかげで、ようやく子貢(しこう)は孔子と顔を合わせることができました。しかし子蓉の媚術に取り込まれた子貢は、それでも彼女の元に通うのをやめることができません。

その頃、顔回は子貢と共に子蓉の元を訪れた冉伯牛の元を訪れていました。どのような巫術を仕掛けられたのか、伯牛は酷い病に冒されていました。そればかりか、その家全体にもその悪影響が及んでいたのでした。顔回は、伯牛家の竈神の力を借りて、それらを祓いました。しかし、伯牛はそれ以外にも、直接体の中に何か術を施されているらしく、顔回の力でもそれ以上の回復は望めそうにありません。

そして顔回は、ついに自らが直接少正卯の屋敷に乗り込むことを決意します。子蓉の魅力の虜になり、いっこうに帰ってこない子貢の奪還と、伯牛に施された術の解呪方法を聞き出そうというのです。屋敷に乗り込むにあたり、顔回は妤(よ)の髪の毛を持参しました。妤は巫子ではありませんが、普通の人には見ることができない使鬼を見ることができますし、巫女としての素質は十分に持っているようです。

顔回がやって来たことを知って、子蓉はうれしくてなりません。自らの魅力に惹かれて、顔回がやって来たのだと子蓉は思い込んでいたのでした。そんな子蓉を、兄の悪悦は止めようとしますが、子蓉の恐るべき力は悪悦をも越えていました。

こうして顔回は、子蓉と対面することになりました。何重にも張り巡らされた媚術の罠に、顔回は何度も落ちそうになりました。しかし、ギリギリのところで顔回は踏みとどまることができました。それは妤の髪の毛に、それだけの力があったからでした。どんなに秘術を尽くしても、顔回が落ちないことが子蓉には信じられません。そして、それは強力な力を持った髪の毛のせいだと子蓉は知りました。

屋敷から帰ろうとする顔回を、悪悦が呼び止めました。悪悦は顔回と戦うことを決意していました。しかし、それを少正卯が止めました。悪悦が顔回に執着している間に、少正卯の屋敷の周囲は顔氏の術者に囲まれていたのです。いつもの悪悦なら、それにすぐ気づかないはずがありません。そんな悪悦を、少正卯はたしなめたのでした。

こうして顔回は、無事に少正卯の屋敷から帰還することができました。悪悦や子蓉も恐ろしい存在ですが、それ以上に少正卯という存在が不気味です。彼は孔子が、三桓家の壊滅を目指していることを知っています。しかし、少正卯はそれを阻止しようとは思っていません。逆に孔子に手を貸すことすら、少正卯は考えています。彼はいったい何を目的に行動しているのでしょうか!?

少正卯は、孔子の勢力を利用するために、門下の公伯寮(こうはくりょう)を取り込みました。公伯寮は、同門の子路の方が孔子に信頼されていることを不満に思っていました。そのわずかな隙を、少正卯に狙われました。そして今では、公伯寮は完全に媚術の虜になっています。少正卯は、公伯寮に何かをさせるつもりのようですが、それは失敗してもかまわない程度の作戦らしいです。つくづく少正卯は、底の見えない恐ろしい人だと思いました。

顔回との戦いに敗れた後、子蓉は夜な夜な出歩いていました。なんと彼女は、顔氏が少正卯の情報を探るために派遣した、巫術者たちを次々と殺していたのです。そして、そんな子蓉と顔氏の太長老の守り人である顔穆とが対決することになってしまいました。老練な技を持つ顔穆でしたが、子蓉の恐るべき媚術はその顔穆の力すら越えていました。

子蓉との戦いで致命傷を負った顔穆は、孔子の屋敷の門前で息絶えました。顔穆は、孔子の母である徴在(ちょうざい)へのかなわなかった恋を抱えていたのです。彼が孔子に対して、どこか突き放した態度を取ってしまうのも、それが原因でした。そんな顔穆は、最後に自らの屍を孔子の前にさらすことで、孔子に何を伝えたかったのでしょうか。

というわけで、3巻は顔回と子蓉との緊迫感のある戦い、謎の多い少正卯の暗躍、顔回の守り人である五六の師でもある、顔穆の思いがけない死と、読み応えのある内容でした。
陋巷に在り〈2〉呪の巻 (新潮文庫)酒見賢一さんの「陋巷に在り」第2巻を読み終えました。

前半は、1巻に続いて陽虎との戦いが描かれました。陽虎がクーデターを起こした裏では、南方の巫術を用いた恐るべき仕掛けが用意されていました。それに立ち向かうのは、顔回です。陽虎は五父の衢(ごほのちまた)に、饕餮(とうてつ)と呼ばれる守護神を呼び出していたのです。

顔儒の一族は、饕餮に立ち向かいますが、饕餮の力は強大で相手になりません。そこに顔回が現れました。顔回は饕餮を、倒すのではなく、神の一人として敬ったのです。それによって、ようやく饕餮を鎮めることができたのでした。

巫儒の力を失ったことで、陽虎の目論見は完全に崩れました。しかし、陽虎もただ者ではありません。数々の危機に見舞われながらも、肝の据わった態度でそれを切り抜けました。おまけに難を切り抜ける中で、ちゃっかりと魯の国の宝物まで盗み出していました。

その後の陽虎は、斉に逃れるも捕らわれてしまいます。ところが、陽虎はそこからも逃げ出して、晋へと逃げ延びました。しかし陽虎はまだ、自らの野望を捨てたわけではないようです。恐るべき野望と行動力の持ち主ですね。
物語の中では、悪役として描かれている陽虎ですが、個人的には自らの意志を貫き、窮地にあっても諦めない姿には、どこか心ひかれるものがありました。

そして物語は、ようやく顔回が妤(よ)と知り合った後にもどってきます。例によって、妤にくっつかれていた顔回は、ちょっとした油断から、謎の巫術師の術中に落ちてしまいました。そこで顔回は、術者に操られた使鬼に襲われますが、自らの力でそれを切り抜けました。
後でそれを知った顔回の守り人・五六(ごろく)は、顔回から目を離して別の企てに力を貸していたことを悔やむのでした。

五六が関わっていたのが、最近魯の国で勢力を伸ばしてきた少正卯(しょうせいぼう)の主催する塾を探ることでした。
少正卯のことは、孔子も危険な存在だと考えていました。しかし、いつの間にか少正卯は、官位を得て魯の宮中に姿をみせるようになっていました。

少正卯は、意図的に孔子に近づきます。孔子はそれを無視しようとしますが、どうしても少正卯の術中から逃れることができません。少正卯の背後には、陽虎の時よりも大きな巫儒の力を持つ者が存在するようです。

その筆頭である悪悦(あくえつ)こそが、先に顔回に術を仕掛けてきたのです。悪悦は顔回の力を試すために、あのような術を仕掛けたのです。それは一歩間違えれば、顔回の命を奪いかねない術でしたが、それくらいやらなければ顔回の実力を知ることができないと悪悦は気づいていたのです。

悪悦には、妖しげな媚術を使う子蓉(しよう)という妹がいます。彼女もまた顔回に興味を持ちました。天性の巫儒の才能を持つ顔回ですが、子蓉の使う媚術に対抗する技は教わってきませんでした。そんな顔回でしたが、なんとか子蓉の気を削ぎ、彼女から害意を奪いました。しかし、そんな顔回に子蓉はますます興味を持ったようです。

その頃、魯の国の貴族が住む町では、異常な事態が起きていました。昼日中の町中に、怪しい巫儒者が数多く現れたのです。彼らは日に日に数を増やし、放置しておけない状況になりました。孔子は司寇(しこう)として、彼らに対応せねばならなくなりました。

そして孔子は、それらの巫儒者の集団が少正卯の屋敷に集まっていることを突き止めました。しかし、兵を引き連れて孔子が少正卯の屋敷に踏み込んだ時、そこには巫儒者の姿はありませんでした。孔子は少正卯にまんまとはめられたのです。
新参者とはいえ、宮仕えする身分である少正卯の屋敷に踏み込んでおきながら、何もなかったでは通りません。少正卯はそこで孔子に恩を売ろうとしますが、孔子はそれをはねのけました。孔子は、この始末をどうつけるつもりなのでしょうか。

顔回と饕餮の戦い、そして悪悦の仕掛けた術との戦い。不気味な存在である少正卯の暗躍と、さまざまな要素が盛りだくさんで前巻以上に面白かったです。
陋巷に在り〈1〉儒の巻 (新潮文庫)先日、「泣き虫 弱虫 諸葛孔明」の最終巻を読み終えましたが、著者には「陋巷に在り」という作品もあったことを思い出しました。

物語の舞台となるのは、紀元前の中国。主人公は「論語」で有名な孔子と、その弟子・顔回みたいです。物語が始まった時、孔子はすでに五十歳を迎えていました。ようやく魯の官吏になった孔子は、魯の中での勢力を拡大しようとしてます。

孔子には多くの弟子がいましたが、その1人・顔回はちょっと不思議な青年でした。陋巷と呼ばれるスラムのようなところに住みながらも、不思議と品の良さを感じさせるところがあります。そんな顔回に惚れてしまったのは、同じ陋巷に住んでいる妤(よ)という女の子です。

陋巷での顔回は、日々何をするでもなく暮らしていました。彼の父・顔路は、葬礼の儀式を取り仕切ることで、何とか生活を立てています。顔回、そして孔子も、顔一族という巫術を操る集団でした。今ではこういった儀式は、怪しげなもののようですが、はるか昔のこの時代その術は間違いなく人々のすぐ側にあったのでした。

そんな顔一族の鬼子と呼ばれたのが、孔子でした。孔子はそれまで巫術として存在したものを、1つに体系化して国を治める元としようとしていたのです。孔子自身も強力な巫術の使い手ですが、それ以上に生まれた時から才を認められていたのが顔回でした。

普段は陋巷でふらふらと暮らしている顔回ですが、時に孔子を助けるために彼の敵と戦うこともあります。とはいえ、顔回は武術で戦うのではなく、巫術を使って敵となる術者と戦います。孔子が斉に招かれて、君主と共に夾谷に赴いた時、斉は彦(げん)一族の呪術を使い、孔子を亡き者にしようとしていたのです。

その背後にいる黒幕は、斉の重鎮である晏嬰(あんえい)でした。晏嬰は高齢でしたが、孔子が勢力を伸ばしている背後には巫儒の力があるとみて、彼を危険な存在だと考えていたのです。しかし、そんな晏嬰の目論見は、孔子自身の力と、顔回の力で消えました。

孔子は、かねてより晏嬰のことを尊敬していました。それ故に、晏嬰が自分の狙うのは、何か誤解があったからだと考えます。そして孔子の代理として、顔回が晏嬰の元を訪れることになるのでした。顔回が晏嬰のところに着いた時、晏嬰は死を目前に控えていました。しかし晏嬰は顔回と話をして、儒を危険なものだと考えていることを聞かせてくれました。

物語は中盤から過去に遡り、魯の国で起きている権力争い、孔子と顔回の過去が語られます。魯は、三桓氏と呼ばれる一族が国を支配してきました。当然、孔子もその独占体制を崩そうとしているのですが、彼に先立って陽虎という男が行動を起こしました。陽虎は、南方の巫術者を使い、自分の地位を固めようとしています。

そこに送り込まれてきたのが、孔子の元に弟子入りするためにやって来た顔回でした。顔回が行った行動によって、陽虎は罠に落ちようとしています。その顛末が語られるのは、次巻以降になるようです。

巫術が超能力的なものとして描かれていて、なかなか面白かったです。本の表紙が諸星大二郎さんというのも、作品の妖しげな雰囲気と合っていて良かったです。(^^)
泣き虫弱虫諸葛孔明 第伍部酒見賢一さんの「泣き虫 弱虫 諸葛孔明」も、この5作目でついに完結です。

この巻では、孔明の南征と北伐が描かれます。南征では、有名な戦って捕らえた孟獲を7回打ち負かして7回逃がす作戦が描かれます。この戦いの主眼は、敵を討ち滅ぼすことではなく、孟獲を心から蜀に心服させることでした。そのために、孔明は配下の武将の反感を買いながらも、あえて何度も孟獲を逃がします。

南征は本史には記述が少ないらしく、三国志演義の方にならって語られています。そのせいか、このところはっちゃけぶりが減った孔明が、久々に変態ぶりを発揮します。(^^;

蜀と戦う南蛮勢力も、最初はワイルドなファッションの敵という感じでしたが、後の戦いになるほど人間離れしてきて、北斗の拳みたいな雰囲気が漂い始めます。それを孔明は、この日のために用意した妖しげな怪獣戦車(?)で迎え撃ちます。

そして孔明は南蛮を心服させて後方の憂いをなくし、北伐に専念できる体制を作り上げたのでした。そしてついに、孔明は有名な出師の表を書き、悲願の北伐に挑みます。

魏と蜀では、国力に大きな差があるため単独の成功は困難です。北伐を成功させるには、呉にも魏に侵攻してもらい、魏に二正面作戦をとらせる必要があります。しかし、呉は肝心なところで国内が安定していなかったり、孫権が戦下手だったりして、今ひとつ魏を攻めきれません。

また蜀にとって決定的に不足していたのが、人材と補給体制でした。特に人材面の差は大きなものがあり、孔明と話が合い有能だけれども実戦経験がない馬謖を街亭に派遣したことから、蜀は決定的なチャンスを潰して北伐から撤退せざるをえなくなってしまいました。

信賞必罰の厳格さを重視してきた孔明は、ただでさえ人材が足りないのに、馬謖を斬らせることになりました。その後も続く北伐の中、劉備をずっと支えてきた趙雲が亡くなり(涙)、まだ若い張苞と関興までもが亡くなりました。そしてついに、孔明自身の命数もつきようとしていました。

五丈原に侵攻した蜀に対して、魏は司馬懿が司令官となり、徹底して守りを固めることで蜀を追い込もうとします。その上、司馬懿は孔明の命数がつきかけていることを見切っていました。そして孔明が死んだとみるや、司馬懿は蜀の陣地へとなだれ込みます。ところが、そこに死んだはずの孔明の姿が・・・。

驚いた司馬懿は、必死でその場から逃げ出します。これまた有名な「死せる孔明、生ける仲達を走らす」ですね。
それ以外にも、孔明は自分が死んだら魏延が裏切ることも予見していました。最初に三国志を読んだ時は、裏切った魏延 の悪役ぶりばかりに目が行きましたが、孔明は魏延を作戦中に殺そうとしたり、魏延から恨まれるのも無理ないと思えるようなことをやってますね。(^^;

というわけで、ここに笑える三国志も完結しました。全体を振り返ってみると、やはり第一部と第二部の面白さが際立っていました。初めて読む三国志本としてはお勧めできませんが、小説でもマンガでもいいので三国志を読み通した後この作品を読むと、その面白さを堪能できると思います。
泣き虫弱虫諸葛孔明 第四部酒見賢一さんの「泣き虫弱虫諸葛孔明 第四部」を読み終えました。この巻では、劉備が蜀を得るまでから始まり、関羽の死、曹操の死、張飛の死、そして劉備の死が語られました。

第一部と第二部は、とにかく笑える三国志でしたが、第三部あたりからちょっとくだけた三国志となってしまいました。その流れが今回も続いています。孔明に並ぶ人材として、龐統を得た劉備でしたが、本編でも語られているように、この龐統はさしたる活躍もしないうちに、倒れてしまいました。ここから物語が、一気に下り坂に入るような気がします。

蜀を得たものの、劉備は呉から借りたという名目の荊州を返す様子がありません。そして蜀と呉の関係は緊張感を増してきます。その矢面に立ったのが、荊州を任されていた関羽でした。死後には神様になってしまった関羽ですが、その死は思わぬ形でやって来ました。気位の高さが災いして、部下の心が離れてしまったのです。

そして部下に裏切られた関羽は、斬首されて命を落としたのでした。それを知った劉備や張飛は激しく嘆きます。そして呉に対する復讐を誓うのでした。しかし、その間にも歴史は動きます。なんと関羽の後を追うように、これまで劉備が敵としてきた曹操が亡くなりました。そして魏は、曹操の子である曹丕が後を継ぐことになったのでした。

曹操の後を継いだ曹丕は、曹操すら行わなかった暴挙を行います。漢皇帝を廃して、自分が皇帝を名乗ったのです。それを知った孔明は、劉備こそが漢皇室の正当な後継者であるとして、同じく劉備にも皇帝を名乗らせたのでした。

このようなゴタゴタが続く間も、張飛は関羽の復讐を遂げる日が来るのを心待ちにしていました。しかし、なかなか劉備から声がかかりません。酔って部下を激しく痛めつけた張飛は、部下の反逆にあって命を落としてしまったのでした。それを知った劉備は、さらに深く嘆くことになるのでした。

そして劉備は、孔明が止めるのも聞かずに、ついに呉との戦争を始めてしまいました。蜀の大群を前に、呉は劣勢を強いられます。しかし、司令官である陸遜に巧みに守られて攻めきることができません。そしてついに、陸遜の前に大敗北を喫してしまうのでした。

逃げ延びた劉備は、その後病に倒れました。そして劉備を見舞った孔明に全てを託して、息を引き取ったのでした。三国志的にはだいぶお話が進みましたが、孔明のはっちゃけぶりが見られないのが残念でした。次巻あたりで完結になるのでしょうが、最後の最後くらい思いっきり孔明にははっちゃけてもらいたいです。(^^;
ピュタゴラスの旅 (集英社文庫)酒見賢一さんの「ピュタゴラスの旅」を読み終えました。

この本には、5つの短編が収録されていました。推理小説的な内容を、作者の視点から描いた「そしてすべて目に見えないもの」。ピュタゴラスとその弟子テュウモスを描いた「ピュタゴラスの旅」。犯罪が起きた時、その犯人をくじ引きで決める村を描いた「籤引き」。何者かに虐待された飼い猫の仇を討とうとする男の物語「虐待者たち」。奴隷ながらも独自の哲学的な境地に達したエピクテトスを描いた「エピクテトス」。

どの物語もそれぞれに趣があって面白かったですが、特に後半の「虐待者たち」と「エピクテトス」は強烈な印象を残す作品でした。どちらも内容的にはとても残酷なものになりそうなのに、作者はそれをさらっと描いていて、そのおかげで読み進めることができました。そして最後には、何か心の奥底にずしんと残るものがありました。

この作品で、酒見賢一さんは中島敦文学賞を受賞されたそうです。中島敦さんの作品も好きで、学生時代からよく読んでいたのですが、確かにここで描かれた物語は中島敦さんの作品に通じるものがあるような気がしました。
泣き虫弱虫諸葛孔明 第参部酒見賢一さんの「泣き虫弱虫諸葛孔明」の第3部がようやく発売されました。今回の物語のメインとなるのは、有名な赤壁の戦いです。

曹操に追われて、なんとか逃げ延びた劉備軍団。しかし、この先も生き延びようとするなら、なんとかして呉を戦いに引き込むことが必要です。そこで孔明は、呉に乗り込んで孫権を動かすのでした。そして、赤壁の戦いのヒーロー・周瑜の登場です!

出会った最初から孔明にうさんくさい物を感じていた周瑜は、何度も孔明を暗殺しようとします。しかし、その企みはことごとく孔明に見抜かれていたのでした。そして、ついに始まる赤壁の戦い。周瑜に孔明、そして鳳雛と呼ばれる鳳統も戦いに加わり、ついに連環の計が炸裂するのでした。

こうして曹操を撃退した劉備たちでしたが、曹操が引いてもまだ劉備軍は荊州から動こうとはしません。そんな劉備と孔明を討つために周瑜は策を講じますが、天命はそれを許しませんでした。ついに周瑜は孔明に勝つことなく、命を落とすことになったのでした。

ということで、今回は孔明よりも周瑜が主役といった感じでした。そのせいか、これまでのはっちゃけ具合が減って、ちょっと茶々が入った三国志といった感じになってしまったのが残念でした。
泣き虫弱虫 諸葛孔明 第弐部酒見賢一さんの笑える三国志・第弐部を読み終えました。(^^;

この第弐部では、孔明が劉備の軍師となって、博望坡での戦い(なかった;_;)から、多くの民衆を引き連れての曹軍からの逃避行、趙雲の阿斗を抱えての単騎での戦い、そして張飛の長坂橋での戦いまでが描かれました。

前作に劣らず、今回も孔明や劉備たちの狂ったような言動に大笑いさせてもらいました。三国志のはずなのに、なぜかお話の途中でエヴァンゲリオンや金田一少年が盛り込まれている破天荒さもいいです。
作者の突っ込みも相変わらず強烈で、正史と演義を冷静に解釈して、内容的におかしな点を次々に斬ってみせるのも楽しかったです。

今回は、張飛の最大の見せ場が描かれたわけですが、その戦いぶりを読んで作者は絶対に格闘技ファンだと確信させられました。(笑)

次は多分、赤壁の戦いあたりが描かれることになるのでしょうが、奇人変人な孔明がどんな活躍を見せてくれるのか楽しみです。(^^)
泣き虫弱虫諸葛孔明「後宮小説」や「墨攻」を学生時代に読んで以来、ご無沙汰していた酒見賢一さんの「泣き虫 弱虫 諸葛孔明」を読んでみました。

酒見さんが三国志関連の本を書かれたと知った時は、数多く出版されている三国志本がまた増えたかあくらいに思っていましたが、ちょっと読んでみたらこの本、とても面白くて何度も大爆笑させられました。
三国志を題材にした小説は数多くありますが、これだけ抱腹絶倒できる作品はちょっと珍しいと思います。強いて言うなら、三国志という物語にバックドロップをかましてしまった作品だと思います。(笑)

このお話では、劉備が荊州の劉表の元に身を寄せている時からお話が始まります。
物語の前半では、孔明が黄氏の醜女をお嫁さんにするまでが描かれています。物語の前半から孔明の奇人変人ぶりが爆発しているのに加え、三国志の正史や演義に対する作者の絶妙な突っ込みもあって一気に物語に引き込まれました。

物語の後半では、劉備が孔明に三顧の礼を行う有名な場面が描かれるのですが、その真相に迫った(?)登場人物の本音が各所に見られて、感動的な場面だったはずが、大笑いしながら読める場面に大変身してしまいました。

物語は、孔明が出盧したところでひとまず終わっていますが、この続きも描かれているようですので続きを読むのが楽しみです。