日々の記録

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アトミック・ボックス池澤夏樹さんの「アトミック・ボックス」を読み終えました。

社会学者の宮本美汐は、癌で亡くなった父からある重要な物を託されました。漁師になる以前に、父は「あさぼらけ」と呼ばれる計画に関わり、プログラマとして働いていたのです。しかし、その計画は突然アメリカからの要請で中止に追い込まれました。それ以来、父は工学とは無縁の漁師として生きてきたのです。

国の重要機密に関わった父は、公安の捜査官から常に行動を監視されていました。それは父が、プロジェクトを離れる時に"命を守る保険"としてデータの一部を持ち出していたからでした。それは国が密かに進めていた、国内での原爆作成計画でした。父から託されたデータを持って、美汐は警察から逃げ回ることになりました。

そんな彼女の力になってくれたのは、かって離島の老人の生活状況を調査した時に知り合った人々や、友人たちでした。そして漁師としての父を取材に訪れていた、大和タイムスの記者・竹西も事件の重大さを知って美汐に協力するのでした。

最終的に美汐は、プロジェクトの発案者である大物と対面することになりました。

逃げる美汐と、それを追う公安や警察、美汐の父・耕三の若き日と、さまざまな視点から物語が描かれます。美汐は警察に追われていますが、緊迫感の中にどこかほのぼのとした空気も感じられたのがよかったです。そして詳しい理由も知らされないまま、何年も耕三の監視を命じられた公安警察の行田のいらだちにも共感できるものがありました。
美汐の父・耕三の姿には、工学部出身の著者本人のイメージと重なりました。

この物語はフィクションですが、実際にあってもおかしくない現実感がありました。そして広島・長崎の被爆、3.11後の福島原発のメルトダウン。原子力が人間に制御できない危険性を無視して、進められる原発再稼働などなど、読後にさまざまなことを考えさせられました。

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