日々の記録

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八月の光 (新潮文庫)このところフォークナーの作品を賞賛している文章をいくつか読みました。それに刺激されて、フォークナーの「八月の光」を読みました。

フォークナーの作品は、以前「アブサロム、アブサロム!」に挑戦したことがありましたが、その時は途中で挫折してしまいました。今回読んだ「八月の光」は、「アブサロム・・・」よりも読みやすいと聞いたこと、翻訳が「タオ」の加島祥造さんだったことで、読んでみようという気になりました。

物語は田舎娘の妊婦・リーナが、彼女を置き去りにした男を探して旅をしているところから始まります。状況的に見て、リーナは男に妊娠させられたあげく捨てられたのですが、リーナは男がお金を稼いで戻ってくると言い残した言葉を信じて彼を待っていたのでした。しかし、もうすぐ出産というのに男が帰ってこないので、リーナは自ら男を探す旅に出かけたのでした。

それらしい男が、南部のジェファスンという街にいるらしいと聞いたリーナは、ジェファスンへとやって来ました。そこに本当に男はいたのですが、リーナは別の男を彼女の捜し求める男だと勘違いしていたのでした。リーナの話を聞いた男・バイロンは、自分と一緒に働いていたブラウンこそがその男だと気づきました。しかしバイロンは、リーナに恋してしまった上に、街ではとある女性が殺害される事件が起きていたのでした。

その殺人事件の犯人が、物語のもう1人の主人公であるジョー・クリスマスです。彼は見た目は白人ですが、黒人の血が流れていると言われていました。そして物語は、ここから一気にクリスマスの悲劇的な運命が語られます。孤児として育ったクリスマスは、狂信的な宗教観を持つ男に引き取られて育てられました。そこで非人間的な生き方をたたき込まれたクリスマスは、やがて養父を殴り倒して家を飛び出したのでした。

各地をさまよったクリスマスは、流れ流れてジェファスンへとやって来ました。そこで彼は北部からやって来たため、街の中で孤立していたバーデンという老婦人と深い仲になりました。そしてクリスマスは、彼の魂までも縛り付けようとする婦人を殺害することになります。

物語は複数の視点から描かれていて、そのうえ時間も過去に飛んだりするので、はじめは全体としての流れをつかむのに苦労しました。でも、複数の糸が寄り集まって、一本の大きな物語が生まれてくるのは凄いと思いました。リーナやクリスマスの他にも、リーナを捨てたブラウン、リーナを手助けするバイロン、元牧師のハイタワー、クリスマスの祖父母など複数の人間が描かれていますが、その1人1人の生きてきた歴史や存在感がありました。

南北戦争後も南部に根強く残っている黒人差別や街の閉鎖性の恐ろしさを描きつつ、呪われた運命に翻弄されたクリスマスの悲劇が重く心に残ります。唯一の救いは、男に捨てられながらも彼を追い、彼の子供を産んだリーナの存在です。
リーナの描かれ方は神聖すぎるような気もしますが、この重く暗い物語の中では、彼女の存在は光のように感じられました。

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