日々の記録

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あなたを選んでくれるもの (新潮クレスト・ブックス)ミランダ・ジュライさんの「あなたを選んでくれるもの」を読み終えました。

この本は、映画の脚本作りに行き詰まった著者が、フリー・ペーパーに売買広告を出している人の元を訪れて、インタビューさせてもらった内容をまとめたノンフィクションです。ページをめくって驚いたのは、文章だけでなく、多数の写真も掲載されていたことでした。新潮クレスト/シリーズの中では異色の本でしたが、その内容にはとても引きつけられるものがありました。

著者が訪れるのは、「ペニー・セイバー」という小冊子に販売広告を出している人々です。冊子の名前からもうかがえるように、それはちょっとした小銭を節約しようという人向けに、ロサンジェルスで無料で配布されているものです。
そこには、さまざまな品物が紹介されています。脚本を仕上げるという現実から逃避した著者は、そこに書かれた広告の隅から隅まで目を通します。そしてある日、広告を出している人達にインタビューしてみようと思い立つのでした。

もちろん、全ての人がインタビューに応じてくれたわけではありません。しかし、インタビューに応じてくれて、この本に紹介されている誰もが、読者の心に強烈なインパクトを残す何かを持っていました。
それは、性転換しようとしている60代の男性だったり、インドの衣装を販売している夫人、スーツケースを売ろうとしている老婦人、おたまじゃくしを販売している高校生、レパード・キャットを販売している女性、ガレージセールで買った赤の他人のアルバムをたくさん集めているギリシア女性、元犯罪者で今は足にGPS発信器の装着を義務づけられている男性、キューバから移民してきた夫婦、体のあちこちにタトゥーやピアスをしている女性。
そして、著者の映画の中で重要な役割を演じることになる老人との出会いが待っていました。

最初は、単なるバラバラのちょっと個性的な人々に見えた彼らですが、共通点を持っていることに著者は気づきます。
それは、どの人もコンピュータと無縁な生活をしている人達だったのです。現在、これだけコンピュータやネットが発達していると、それと無縁に存在する人々がいることを私たちは忘れがちです。
著者もコンピュータとスマホに依存した生活をしています。しかし、それを通してでは決してつながることのできなかった人々と、今回のこの試みのおかげでつながることができたのでした。

特に印象的なのは、著者の映画に出演することになった老人との出会いです。彼は真面目なペンキ職人として働いてきましたが、金銭的には恵まれておらず、今では生活保護費に頼って暮らしています。生活は楽ではないけれど、彼はやるべきことを淡々と行いながら暮らしています。それは亡くなった犬や猫をきちんと埋葬してあげることだったり、体が不自由な人達の代わりに買い物に行ってあげたり、その時には打たれて死んだ警官から譲り受けた上着を必ず来て出かけたり・・・。

そんな老人との出会いが、停滞していた著者の映画作りを動かしました。そして、その老人を起用した映画は、ついに完成したのでした。しかし、著者が映画の編集を終えた時、老人はすでに亡くなっていました。
著者は残された老人の妻と会い、彼の最期の様子を聞きました。夫を亡くしたばかりの奥さんは、病を抱えながらも意外なくらい元気でした。それは「だって不幸な人間でいることは良くないことだもの」という奥さんの信条があったからでした。

この本を読み終えた今、私の中でいろいろな感情が渦巻いています。それは人生の哀しさだったり、誰も自分だけの人生を生きていることだったり、どん底と思えるようなところにも希望や夢があったり、神様のイタズラなのか思いがけないドラマが待っていることがあったり。
この混沌とした気持ちをもっと整理したいような、あえて散らばったままの今の気持ちを持ち続けることが大切なのかもと思ったり。

でも1つだけ確信しているのは、この本と出会えて本当によかったという気持ちです。それさえも、地球上の多くの人生のほんのわずかな部分でしかないけれど、それに触れることができて、本当によかったと思いました。(^^)












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